表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/154

第8話 冒険者登録試験

 僕はディオーランと共に本来の目的である冒険者登録を行うために、カウンターへと向かった。


「おいファイン、あそこにしようぜ。あの受付嬢、可愛いしデカくていいよな!」


 ディオーランが指をさす方向に、黒髪ポニーテールの若く小柄な受付嬢がいた。

 名札には【アイリーン・エイル】と書いてあった。

 ディオーランは、アイリーンという受付嬢に現を抜かしていた。


「こんにちは! 初めての方々ですか?」

「はい。冒険者登録をしたいのですが……」

「冒険者登録の試験を受けに来られた方々ですね! まずはこちらの書類にご記入ください」


 僕とディオーランは、アイリーンさんの用意した書類に氏名や住所などの個人情報を記入した。


「ファインさんと、ディオーランさん。アドヴァンスド学園在学中の学生さん方ですね。ご記入ありがとうございます。これから、冒険者登録の試験について説明を行います。試験の内容は、試験官と模擬戦をやっていただきます」


 試験の内容は、学園の入学試験に近いものなのか。

 説明が終わった直後、奥から先程の壮年男性が現れた。


「私がギルドマスターのジョージだ。今回は君たちの試験監督も務めさせてもらう。よろしく」

「よろしくお願いします」

「早速だが二人とも、ついて来たまえ」


 何と、その男性はギルドマスターだった。

 僕とディオーランは、ギルドマスターに試験室らしき場所へ連れて行かれた。


「これから二人には、この木剣を使って私と『模擬戦』を行ってもらう。勝てとまでは言わんが、剣の扱い方や戦い方によって合否を決めさせてもらう。何か質問はあるかね?」


 すると、ディオーランが質問した。


「この試験には、どう言った意図があるのですか?」

「ちゃんと戦えるかどうかを見極める為の試験だ。冒険者になってダンジョン等に行ったら、常に死と隣り合わせと言っても過言ではない。事実、毎年多くの冒険者が命を落としている。だから、こういった試験を行うのさ」


 ディオーランの質問に、ギルドマスターは的確に答えてくれた。


「早速だが、まずはディオーラン君からだ!」


 ディオーランは名前を呼ばれると、木剣を持ってギルドマスターの前に立った。


「準備ができたら、いつでも来たまえ」

「はい。では行きます!」


 ディオーランはギルドマスターに立ち向かった。

 右から、左から、あらゆる方向から攻撃を入れるも、その全てが見切られてしまった。

 

「そこまで。戦い方はまだまだだが、剣筋はなかなかだな。」

「くっ……。何か気を付けるべき点はありますか?」

「あまり力を入れ過ぎないように気を付けたまえ。それと相手の動きを観察しながら戦うといい」

「ありがとうございました」


 ディオーランは一礼して下がった。

 次は僕の番だ。僕は木剣を持って前に出た。


「いつでも、いいぞ」

「では行きます」


 僕は剣を構えて、ギルドマスターに肉薄した。


「は、速い!」


 僕はそのまま、左下から斬撃を繰り出した。

 しかし、ギルドマスターに剣戟を受け止められた。

 やはり、一筋縄では行かないか。

 ならば、【身体強化(ブースト)】!


「何だ、このパワーは!?」


 僕はギルドマスターの剣を徐々に押し始めた。そして……。

 

 カァーン!


 僕はとうとうギルドマスターの剣を弾き飛ばした。


「し、信じられん。まだ10代半ばの若者が私の剣を弾き飛ばすなど……」


 ギルドマスターは驚いていた。

 そりゃそうだ。15歳の少年が、筋肉質の成人男性が持つ剣を弾き飛ばしたのだから。


「ゴホン。では気を取り直して、結果発表をする。冒険者登録試験の結果だが……、おめでとう。二人とも『合格』だ! 特にファイン君、君は文句なしに合格だ!!」

「ありがとうございます」

「やった! やったぞ、ファイン! これで俺たちも晴れて冒険者デビューだ!」


 僕とディオーランは見事、合格した。ディオーランは大喜びしていた。


「それにしても、今年に入り私に打ち勝つ者が二人も現れるとはな。数日前に冒険者試験を受けた女の子が、ファイン君と同様に私の剣を弾き飛ばしたのだ。ギルドマスターをやって20年弱だが、冒険者試験で私を打ち負かした者は過去5人とおらん」


 ん? ちょっと待てよ。ギルドマスターを打ち負かした女の子って、まさか……。

 僕は少し胸騒ぎがした。

 ギルドマスターは話を続けた。


「二人とも、これから冒険者カードを渡す。しばらく表で待っていてくれ」


 それから10分後くらいに、冒険者カードを渡された。


「これが冒険者カードだ。ギルドでの依頼を受ける際に必要になる。ちなみに、これは身分証明書も兼ねているから、くれぐれも無くすなよ」


 冒険者は、最初はFランクからのスタートで、E→D→C→B→Aの順にランクが上がっていく。

 最も高いランクはSだが、そこまで辿り着ける冒険者は滅多にいないらしい。

 ディオーランは順序通り、Fランクからのスタートである。

 しかし、僕はというと……。


「あれ? 僕はEランクからのスタートですか?」

「うむ。本来ならば、ファイン君は実力的にDランクからのスタートでも良いのだが、最初からランクを高くし過ぎると色々と問題があるのでな。そういうことも考慮してのEランクだ」

「おめでとう、ファイン。少し悔しいが、お前の実力なら当然のことだ。これからお互い頑張ろうぜ!」

「あ、ああ」

「しかし、君たちはまだあくまでも新米冒険者だ。くれぐれも無茶だけはするなよ!」

「「はい!」」

 

 僕とディオーランは無事、冒険者デビューを果たすことができた。

 しかし、時間は既に夕方だったので、今日は寮に帰ることにした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ