表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
89/158

第88話 幽霊屋敷

 ローゼン伯爵家に泊めてもらった翌日、僕たちは教皇に謁見するために宮殿に行くことにした。

 衛兵に城へと通してもらい、玉座の間へと入った。

 玉座には、教皇が座していた。

 僕たちは教皇に跪いた。


「お初にお目にかかります、教皇陛下。僕の名はファイン・セヴェンスと申します。星の英雄たち(スター・ヒーローズ)のリーダーを務めております」

「面を上げてくれ。……よく来たな。私が教皇のジャック・フォン・アンシャントだ。貴殿らが噂の勇者たちか」

「?」

「風の噂で聞いているよ。カグラ公国を帝国から救い、フォースター王国では蛇になった大臣を倒したとか」


 教皇ジャックは、僕たちの活躍を風の噂で聞いたと言う。

 一体、どこでその話を耳にしたのか。最近は猛吹雪のせいで、アンシャントを行き来する人々も減ったと言うのに。

 ちなみに、ジャズナ王国を救ったのは昨日なので、さすがにその話はまだ届いていないようだ。

 そんな事よりも、僕たちは教皇に伝えなければいけないことがある。

 そのため、さっさと本題を出すことにした。


「教皇陛下、蛇大臣から魔王アガレスが復活したと言う話を聞きました」

「なんと……」

「それが事実なら、いずれこのアンシャント聖教国も戦禍に呑まれる可能性が高いです」

「そうか。人魔大戦の終結から300年余の時が経ち、それからすっかり平和になったと言うのに、世界はまた混沌に包まれようとしているのか」


 教皇ジャックは嘆く。

 僕はあることを思いだしたので、その話を切り出すことにした。


「そう言えば陛下、5年前からアンシャントでは吹雪の日が多くなったと聞きましたが、それには魔王が関連している可能性があります。勝手ながら、その調査を僕たちにお任せいただけないでしょうか」

「おお、それは頼もしい! 是非とも貴殿らに頼もうと思う」


 教皇は、僕たちが調査することを喜んで受け容れた。


「ところで陛下、何か心当たりはありますか?」

「うむ。心当たりはないが、強いて言えば街の外れにある北西の山の麓に、今は誰も住んでいない屋敷がある。何かあるとすればそこかもしれぬが、今はこの吹雪ゆえに誰もそこへは行かぬ」

「わかりました。ではその屋敷に行ってみます」


 僕たちは、街外れの屋敷に調査しに行くことにした。


■■■■■


 首都コルディアを出て、例の屋敷があるという北西の方向へ向かう。

 今日も吹雪のため、視界が悪い。

 何より非常に寒いので、防寒対策をしっかりとしてきている。

 森の中に道が切り拓かれている。そして、少しずつ上り坂にもなっている。

 この道が山の麓にある屋敷に続いているようだ。

 僕たちは、このまま森の中を突き進んだ。


 吹雪で視界が悪いため、迷ったら最後。コルディアに帰ることができなくなるだろう。

 もし迷ったら、転移(ワープ)でコルディアに戻ることにする。

 そのため、仲間とはぐれないようにしなければいけない。


「みんな、はぐれないように僕の傍を離れるなよ」

「ええ」

「おう」

「わかりました」


 コルディアから歩くこと約30分、教皇の言っていた屋敷に辿り着いた。

 雪でも目立つようにする為か、外観は黒色である。

 屋敷にしてはかなり大きな建物で、屋敷と言うよりは城である。

 外観では、5階が最上階のようだ。随分大きい。

 一体、どんな大富豪が住んでいたのだろうか。

 そして、屋敷の背後には山が立っていた。


「ここが教皇が言っていた例の屋敷か。えらく不気味なもんだぜ」

「ええ、そうですね」


 人が住んでいる気配はしない。

 しかし、妙な気配がする。


「では、中に入るか。くれぐれも僕から離れないように」

「ええ」


 僕たちは、建物の中に入ることにした。

 扉は鍵が掛かっておらず、あっさりと開いた。


「やはり、薄暗いな。【灯火(トーチ)】」


 中は通路が一直線に伸びていた。

 そして、誰も住んでいない割には、妙に綺麗である。

 誰かが、こっそり掃除でもしていたのだろうか。

 ルナは俯いており、どうも様子がおかしい。


「ルナ、どうした?」

「……」

「……もしかして、怖いのか?」

「そ、そ、そんな訳ないじゃない!?」


 ルナはわかりやすく動揺していた。

 そんなルナとは対照的に、セレーネは冷静沈着である。


「なんだルナ、怖いのか? 心配すんなって! どんな敵が来ても、オレ様がぶっ飛ばしてやるぜ!」


 僕たちは、屋敷の中を進むことにした。

 しかし、進み出した直後、後ろからバタンという大きな音がした。


「!?」


 振り返ると、入口のドアが突然閉まった。

 扉を開けようとするが、なぜかビクともしなかった。


「開かない……」

「やだ、嘘でしょ?」

「おいファイン、オレ達を脅かそうとしてんのか? オレ様がこじ開けてやるぜ!」


 力自慢のヒューイが笑いながら、力ずくで扉を開けようとした。

 しかし、結果は同じ。扉はビクともしない。


「んぎぎぎぎっ!? どうなってやがるんだ!? 全然開かねぇぞ!!」


 ヒューイはついに、扉にタックルをかけた。

 しかし、扉はやはり開かなかった。

 そもそも、内側からは引いて開けるタイプの扉のため、いくらタックルしても開かないとは思うが。


「ぜぇ……ぜぇ……ダメだ……やっぱり開かねぇ」

「そんな!? 私たち、閉じ込められたってこと!?」

「みたいだな。どうやら、この屋敷の“主”を倒さない限り、ここから出られないらしい」

「そんな……」

「とにかく先へ進もうか」


 こうなるだろう事は、想像に難くはなかった。

 まさしく、飛んで火に入る夏の虫である。

 もっとも、アンシャントはどちらかと言うと、夏ではなく冬だが。

 とは言え、これでこの屋敷には、アンシャントを吹雪と極寒に閉ざした張本人がいる可能性は高くなった。

 そのため、僕たちは屋敷の最上階を目指すべく、このまま屋敷の廊下を進むことにした。


 しばらく進むと、最初の関門にぶつかった。


「扉だ。あれ? 開かないぞ。カギ穴は付いていないな」

「きっとどこかに、スイッチがあるのではないでしょうか?」

「それもそうだな」


 セレーネの考えに同意した後、周囲を見回してみた。

 すると、右前方の壁にレバーのような物がついていた。


「これかな?」


 僕はそのレバーを引いてみた。

 すると、ガチャっと言う物音が聞こえた。

 ひょっとすると……。

 そう思ってもう一度ドアノブを回してみた。


「おっ、開いたぞ」

「さっすがセレーネだぜ!」

「このくらい、わかって当然ですわ」


 セレーネがここぞとばかりに、自分の賢さを自慢してくる。

 僕たちは扉を開け、先へと進んだ。


 そう言えば、屋敷に入ってから、ルナはずっと僕の後ろをくっついてきている。

 それで、僕の騎士が本当に務まるのかと思った。

 やはり、こういう場所は苦手なのではないのか?


 ちなみに、僕は子供の頃に一人で夜の森を探検したことがあるため、こういう場所はわりと平気だったりする。

 それで孤児院の先生によく怒られたっけ。


 しかし、今はそんなことはどうでもいい。

 このまま、屋敷の最上階を目指して進むしかない。

 そして、階段を上り、二階にやって来た。


「前方から何か来る。戦闘準備を!」


 しばらくして現れたのは、3体の幽霊(ゴースト)だった。

 ゴーストは実体を持っていない為、物理攻撃は効かない。

 そのため、魔法などによる攻撃で倒すしかない。


「ひぃぃ、オバケ……!?」


 ルナが僕の後ろで怯えている。

 そんなルナを尻目に、僕は稲妻矢(サンダーアロー)をゴーストたちに放った。

 ゴーストたちは、雷に打たれて消滅した。


「こんなヤツら、大したことはない」


 ゴーストたちを倒した後、さらに先へ進んだ。


 二階の長い廊下を進んでいると、また扉があった。

 ドアノブを手で回してみると、今度は普通に開いた。

 僕たちは先に進んだ。

 壁際には、剣と盾を持った騎士の像が合計4つ置いてあった。

 しかし、ある程度進むと、扉が突然閉まった。

 すると、騎士の像たちが突然動き出した。

 やはり、この屋敷には“何か”がいると考えて間違いないようだ。


「や、やるしかないわね……!」


 先程まで僕の後ろにいたルナが、ついに剣を抜いて前へ出た。

 そして、ルナは風斬刃(ウィンドブレイド)を放ち、一気に騎士の像4体を真っ二つにした。

 相変わらず凄まじい攻撃力だ。いざと言う時は頼りになる。


 3階へ上がり、廊下をしばらく進んだ。

 すると、フローズンスライムに遭遇した。数は5体。

 通常のスライムは水色だが、フローズンスライムは青色である。

 そして、アンシャントのような寒い地域に棲息している為、氷属性である。


 フローズンスライムの一体が、アイスブレスを吐いて攻撃する。

 セレーネが結界を張って防御した。

 ルナが剣を抜いて、スライムに接近する。


赤熱剣(ヒートソード)!」


 スライムは真っ二つに切断された。火属性の攻撃は効果絶大だ。

 続いて、ヒューイが斧でスライムを両断した。

 最後に僕が火球(ファイアボール)を放ち、残る3体のフローズンスライムを焼き尽くした。


 しばらく進むと、またまた廊下に扉があった。

 しかし、その扉は開かなかった。

 近くにスイッチらしき物もなかった。


「どうやら、スイッチは別室に設置されているようだ」

「なるほど、そのスイッチとやらを探しに行かなきゃいけないって訳だな」

「ああ。この屋敷にはいくつもの部屋が用意されているみたいだ。そのうちのどこかに、扉を開けるスイッチがあるはずだ」

「それじゃあ、早速探しに行きましょう」


 僕たちは、扉を開けるスイッチを探す為に、一旦戻ることにした。

 三階にある部屋をくまなく探したが、スイッチらしき物は見つからなかった。

 しかし、廊下の行き止まりに、何やら怪しげな部屋を見つけた。

 扉を開けて部屋に入ると、奥の床にスイッチらしき“出っ張り”があった。

 スイッチに近づくと、前方にフローズンスライムが3体、後方にゴーストが3体現れた。

 そう簡単に、スイッチを踏ませてはくれないらしい。


「フローズンスライムは頼んだ。ゴーストは僕が何とかする!」

「オッケー」


 まず、ヒューイがスライムを1体両断した。

 続いて、ルナが赤熱剣(ヒートソード)で残り2体のスライムを連続して切断した。

 最後に僕が風斬刃(ウィンドブレイド)で、ゴースト3体を切り刻んだ。


 モンスターたちを殲滅した後、部屋にあるスイッチを踏んだ。

 すると、どこかでガチャと言う音が聞こえた。

 もしかしてと思い、先程の扉の所まで戻ることにした。

 扉はすでに開いていた。

 扉の先へ進み、四階への階段を上った。


 四階に辿り着くと、すぐに大きな扉が現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ