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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第84話 風の英雄たち

 キマイラを倒し、ついにジャズナ王国を救うことに成功した。

 長く厳しい戦いは、ようやく幕を閉じたのだ。

 しかし、城はもちろんのこと、マシャクの街中が戦闘でボロボロになっていた。

 そんなボロボロの王都とは裏腹に、人々からは喜びの声が上がっていた。

 戦いの前とは街の様子も、人々の様子もうってかわってだ。


「やったー! ついに帝国を追い返したぞー!!」

「彼らが我々を勝利へと導いてくれたんだ! 彼らは英雄様だ!」


 外ではジャズナ王国の民たちが、歓喜の声を上げていた。

 戦いが終わった後、人々を歓喜するように東の空から日が昇り、夜が明けた。


 玉座の間にて。

 玉座にはメアリー陛下が座っている。

 その横には、王女であるヴィオラ様と、ギース氏率いる王国騎士団が立っていた。

 そして、僕たちの傍にはガレット率いる砂漠のサソリも来ていた。


「今回はジャズナ王国を救っていただき、本当にありがとうございました」

「私からもお礼を言わせて! お母様を助けてくれてありがとう!」


 メアリー陛下とヴィオラ様は、感謝の言葉を述べた。


「お気になさらないでください。僕たちは当然のことをしたまでですから」

「今回の戦いで王都中の建物は崩壊し、復興にはお金が必要です。お礼に何かしてあげたいのですが……」

「お礼なんていりません。お金は王国の復興に使ってください」

「なるほど。たった少人数で大勢の帝国軍を追い返し、一国を救ってくれたと言うのに、見返りを求めない。あなた方こそ“真の英雄”に相応しいでしょう」

「僕たちは“英雄”などではありません。僕たちは、ただの流れの冒険者【星の英雄たち(スター・ヒーローズ)】です」

「ふふっ、あなた方のような礼儀正しい“流れの冒険者”には初めて出会いました。では星の英雄たち(スター・ヒーローズ)の皆さん、私、メアリー・ヴァン・ジャズナはジャズナ王国を代表して、ローランド王国に協力することを約束いたします」


 メアリー陛下は、ローランド王国に協力してくれると言う。

 それは即ち、同盟を組むということだろう。

 ありがたい。こうして、またローランドには味方が増えるという訳だ。

 これは、国王ゼフィールにもいい知らせができそうだ。


「ありがとうございます。ですが、その前にまずはジャズナ王国の復興が先です」

「ふふっ、そうですね。では皆さん、改めてお礼を言わせてください。この度は本当にありがとうございました」

「私からも礼を言わせてくれ。女王陛下を救ってくれてありがとう」

「ありがとな! お前らのお陰で自由を取り戻せたぜ!」


 メアリー陛下が改めてお礼を言うと、騎士団長のギース氏とガレットも感謝してくれた。

 だが、僕たちがここへ来た理由は、ジャズナ王国を助けるためだけではない。

 僕はメアリー陛下に、最も重要な情報を話すことにした。


「女王陛下、お気をつけください。フォースター王国で戦った魔物から得た話なのですが、魔王アガレスが復活したとの話を聞きました」

「なんと……」


 僕の話に、その場は一瞬戦慄する。


「この話が事実なら、いずれ世界は大変なことになります。今はまだ力を蓄えているようですので、幸いまだ時間はあると思われます」

「そうですか。魔王アガレスは人魔大戦の際に、暴虐の限りを尽くしたと聞きます。信じがたい話ですが、今はファインさんの話を信じて、家臣たちとも話し合って対策を進めます」


 魔王が復活したという情報を話すと、メアリー陛下は信じられないと言わんばかりの表情をした。


「僕たちは明日以降、このまま北のアンシャント聖教国に行き、魔王復活の警鐘を鳴らしたいと思います」

「わかりました。ところで皆さん、今日は城に泊まりませんか? 今日は未明からの長い戦いでお疲れでしょう? 私たちも、あなた方への責めてものもてなしをしたいのです。玉座の間は崩壊しましたが、幸いにも下の階にある寝室は無事です。いかがでしょうか?」

「わかりました。折角の機会なので、お言葉に甘えさせていただきます」


 メアリー陛下は城に泊めてくれると言う。

 断る理由もないので、ご厚意に甘えることにした。


「さあ皆さん、お腹も空いている頃でしょうから、朝ごはんにしましょう!」

「はい!」


 その後、この場にいる全員で朝食を食べた。


■■■■■


 それから、数時間後。


「皆さんに見せたい物があります。是非とも一緒に来ていただけませんか」

「わかりました」


 メアリー陛下がそう言うので、僕たちはついて行くことにした。

 連れてこられたのは、城の地下遺跡だった。


「これが皆さんに見せたい物です」


 そこで目にした物は、巨大な『鳥型の物体』だった。

 5メートルくらいはあろうかと思われる全長。

 折り畳まれた二対の翼。

 また、鳥型ながら四つの足を持っており、そのせいか歪な外観をしている。

 そして、頭部には人が乗れそうなスペースがあった。

 見た感じ、人が乗って動かす飛行物体のようだ。


「わぁ、大きいね」

「尾に名前が書かれていますね。【ホウオウ】と」

「ええ。私が幼い頃からここにあります。それどころか、私の親や、祖父母の代からずっとここにあったようです。どうやら、古代の人が作ったみたいなのですが、私もこの子も含めて誰一人として動かすことはできませんでした」

「もしかしたら、相当高度な“魔導具”なのかもしれません。そうだとしたら、通常の人が持つ魔力では動かせないでしょう」


 よく見ると、人が乗るであろうスペースに梯子がかかっていた。

 僕はその梯子を昇り、ホウオウに乗ってみた。

 中には前後2人ずつ、計4人分の座席があった。丁度、僕たち星の英雄たち(スター・ヒーローズ)と同じ人数分だ。

 とりあえず、僕は右前の席に座った。

 前二つの席には、それぞれ二つずつレバーが設置されている。

 そして、前方には円盤のようなものが配置されていた。


「すごい機械ね。どれがどれだか、わかる?」


 ルナが乗って来た。


「何だか不思議な力を感じる。やはり魔力を用いて動かす物みたいだ」

「確かにあなたの言う通り、不思議な力を感じるわね。これかな……?」


 ルナが中央の大きなボタンを押すと、円盤が光り出した。

 そして、大きな音と共にホウオウが起動したようだ。


「あっ、動いたみたい」

「おおーっ、コイツはスゲーや!」

「信じられない。私たちが何度やっても動かなかったのに、ファインさんやルナさんが触れただけで動き出すなんて……やはりあなた方は、何か“特別な力”をお持ちのようですね」


 メアリー陛下も驚いていた。

 円盤には、エノウ大陸が表示されており、ジャズナ王国がある部分に赤い点が表示されている。

 地図機能が搭載されており、現在地まで知らせてくれる代物のようだ。

 そして、これらの機能から察するに、やはりこのホウオウは空を飛べるようだ。


 ところで、ホウオウが起動した時から、魔力の流れを感じている。

 やはり、搭乗した人が『魔力回路』の一端を担うようだ。

 とは言え、特に苦しいと言った気分は感じない。


「どうやらこのホウオウは、やはり飛行可能な魔導具のようです。これなら問題なく飛べそうです」

「素晴らしい。王国を救っていただいたお礼と言っては何ですが、これはあなた方に差し上げます」

「えっ? いいんですか?」

「ええ、構いません。どうせ私たちでは動かせませんし、あなた方が持っていた方が余程価値があると思います」

「わかりました。ではありがたくいただきます」

「ふふっ、お礼なんていりません」


 僕たちは、メアリー陛下から飛行型魔導具【ホウオウ】をもらうことにした。

 明日にでも、このジャズナ王国を発つつもりだ。

 あまりのんびりしてはいられない。

 こうしている間にもグランヴァル帝国や、魔王アガレスは次の悪巧みをしているかもしれない。

 とは言え、空を飛べるのなら移動時間をグッと短縮できそうだ。


■■■■■


 俺は帝都に戻った後、皇帝ゴスバールに報告していた。


「……そうか。そのファイン・セヴェンスとやらの策略によって、ジャズナを奪還されたか」

「はっ、誠に申し訳ありません」

「報告、ご苦労であった」

「陛下、何なりと懲罰をお与えくださいませ」

「そうか、よかろう。地のディーン、貴公には約2週間の謹慎処分を言い渡す」

「はっ。失礼いたします」


 俺はジャズナ王国を奪還されたこと、ならびにファインに敗北したことを反省するために、敢えて懲罰を受けることにした。

 報告の後、玉座の間を後にした。

 外では、協力者が俺を待ち構えるように立っていた。


「無様なものですね。あなたともあろう者が、たった一人の男の策略に敗北するとは」

「言葉を慎んでもらおうか。貴様も召喚したキマイラが、ファイン達に倒されたそうではないか? 無様なのは貴様とて同じではないか?」

「いえいえ、彼らの戦闘データは収集できました。有意義なものでしたよ。お陰で彼らをどう攻略するかが見えてきました。あなたも精々、精進すると良いでしょう、ディーン将軍。いいえ、ディオーラン・ブラスター」


 協力者は突如として、ディオーランの名を出してきた。


「……誰に聞いた?」

「ファイン・セヴェンスが言っていたではありませんか。あなたのお名前を」

「盗み聞きとは感心しないな。だが、ファインは【ブラスター】は言っていなかったぞ」


 協力者は、あの時本当に盗み聞きしていたのか?

 訝しく思った俺は、協力者に質問することにした。


「貴様、何者だ?」

「ただの【協力者】ですよ。それ以上でも、それ以下でもありません。私は皇帝陛下に忠誠を誓った身です。皇帝陛下の『世界を支配する』という野望を叶えるために、力を貸しているのです」


 協力者は、答えをはぐらかした。


「フン、まあいい。俺は俺で、皇帝陛下の為に動くことにしよう。だが、邪魔するなら……容赦なく殺すぞ」

「おお、怖い怖い」


 そう言って不敵な笑みを浮かべる協力者を無視し、俺は与えられている屋敷に戻った。


「ファイン・セヴェンス……今度会った時は、お前を殺す……!」


 俺は、右手を強く握りしめた。

ジャズナ王国編は終了です。

ありがとうございました。

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