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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第83話 神の雷

 僕たちの巧みな連携攻撃により、キマイラを追い詰めることができた。

 しかし、キマイラには再生能力があった。

 失われた頭部や翼は、たちまち元の状態へと再生していった。


「ガオオオオオッ!!」


 キマイラは咆哮すると、ファイアブレスを放った。

 セレーネが結界を張る。


「くっ、もう魔力が……!」


 セレーネが苦しそうに胸をおさえる。


「セレーネ、エーテルだ!」

「はい、ありがとうございます」


 僕は魔法鞄からエーテルを取り出し、セレーネに渡した。

 彼女の魔力は多いので、最近は魔力切れを起こすことはほとんどなかった。

 しかし、セレーネは先程からずっと結界を張って頑張ってくれていた。

 そのため、いつ魔力切れを起こしてもおかしくはなかった。


「すまない、セレーネ。僕がもっと早くエーテルを渡すべきだった」

「いいえ、ファイン様。おかげで助かりました」


 キマイラは再び空中へ飛んだ。

 そして、落下して伸し掛かる。

 しかし、キマイラが着地した瞬間、僕が事前に仕掛けておいた麻痺罠(トラップ)にかかった。


「今だッ、風斬刃(ウィンドブレイド)!」


 僕は動けなくなっているキマイラに向けて、風斬刃(ウィンドブレイド)を放った。

 風の刃が、キマイラの右翼を切断した。

 しかし、翼はすぐに再生した。


「やはり、再生が早い!」


 そして、麻痺状態も解除されたためか、キマイラはすぐに動き出した。

 やはり、大型のモンスターゆえか抜け出すのが早い。


「ガオオオオオッ!」


 キマイラは動けるようになると、すぐに飛びかかって爪で攻撃してきた。

 すると、ヒューイが前に立ちはだかり、斧でキマイラの爪を受け止めた。


「セレーネばかりに、無理はさせねーぜッ!!」


 両者の力はほぼ拮抗している。

 さすがはヒューイ。獣人の血を引いているだけはある。


「ガオオオオオッ!!」


 しかし、キマイラがファイアブレスを吐いてきた。

 ヒューイはもろに火炎を食らってしまった。


「あちちちち!!」

「ヒューイ!!」


 ヒューイは大ダメージを受けてしまった。

 とは言え、あれだけの攻撃を受けながら、生きているのはさすがの頑丈さだ。


上治癒(ハイヒール)!」


 セレーネはすぐさま中級回復魔法でヒューイを治療した。

 ヒューイの傷は、何事もなかったかのように全快した。


「サンキュー、助かったぜ!」

「ガオオオオオッ!!」


 キマイラは咆哮すると、また複数の魔法陣を展開した。

 

「まずい、来るわ!」

「また上級魔法を放つつもりか!? だが、これ以上の攻撃に建物が耐えられない! ルナ、セレーネ! 3人でキマイラを囲む球状結界を展開するぞ!」

「「ええ!」」


 3人で球状結界を展開した。

 その直後、キマイラが3種類の上級魔法を放った。

 鋭い氷の槍(アイスジャベリン)と、凄まじい稲妻擊(サンダーボルト)が結界に直撃した。

 その衝撃は、結界を介して伝わってきた。

 最後に火炎爆弾(フレイムボム)が結界に着弾し、凄まじい爆発が起きた。

 魔力を多く消費したものの、何とか無傷で済んだ。

 結界内では、依然キマイラは健在だった。


 しかし、その直後のことだった。

 氷が床を伝って、キマイラの足を凍りつかせた。


「こ、これは!?」


 横を振り向くと、ルナが床に剣を突き立てていた。

 よく見ると、剣から氷が床を伝っていた。


氷結剣(アイスブランド)の応用よ。今回はちょっとだけ頭脳プレイしてみたの。これでアイツは、空中には逃げられないわ!」


 ルナが自慢げに話す。

 しかし、キマイラは翼を羽ばたかせ、何とか空中に逃げようとする。


「させるか! 風斬刃(ウィンドブレイド)!」


 僕はすぐさま剣を抜き、そのまま風斬刃(ウィンドブレイド)を二発放った。

 キマイラの両翼を切断した。


「ギャアアアアアアアア!!」


 キマイラは絶叫する。

 だが、アイツには再生能力がある以上、ゆっくりすることはできない。


「出よ、天の精霊シルフよ!」


 僕は剣を納めると、天の精霊シルフを召喚した。

 嵐のような突風と共に、シルフは現れた。


「天の雷よ、我らに仇成す邪なる者を貫け、【神の雷(ゴッドサンダー)】!!」


 僕は頭に浮かんだ魔法名を叫んだ。

 海上でクラーケンに遭遇した時に、セレーネが発動した魔法だ。

 すると、キマイラの頭上に大きな暗雲が現れた。

 その雲は稲妻を発生させると共に、どんどん大きくなっていった。

 そして、青白い稲妻がキマイラに向けて何度も放たれた。


「ギャアアアアアアアア!!!!」


 稲妻に打たれたキマイラは、たまらず絶叫した。

 改めて見ると、ゴッドサンダーは僕の稲妻斬擊(サンダースラッシュ)と良く似ていた。

 キマイラは床に倒れ、その肉体はそのまま消滅した。


「やった……!」

「やったわ! ついにキマイラを倒したわ! それに剣技まで覚えているなんて、ファインはやっぱり天才ね!」

「ええ、そうですね。ファイン様は天才です」

「そうだな! やっぱファインは天才だぜ!」


 仲間たちは、僕を天才と褒め称えていた。

 僕は何だが照れくさい気分だった。

 しかし、不思議と悪い気はしなかった。


「そんな、僕は別に天才ではないよ。みんながいなければ、ここまで辿り着くことはできなかった」

「何言ってるの。ここまで辿り着けたのは、紛れもなくファインの“努力”の証よ。ヴィオラやメアリー陛下、それにジャズナの人たちも、きっとあなたに感謝してくれるわ」

「そうか。ありがとう」


 こうして、僕たちは何とかジャズナ王国を救うことができたのだった。

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