表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
83/159

第82話 合成生物

 突然転移門(ゲート)が現れ、中からフードを被った男が現れた。

 そして、ディオーランを転移門(ゲート)の向こうへと消し飛ばした。

 丁度その頃、帝国兵たちを倒したルナたちが合流した。


「何者だ?」


 僕はフードの男に問う。

 すると、男はこう答えた。


「名乗る義務などありません。ですが、今回はあなた達に見せたいものがあります。一緒に来ていただきましょう」


 フードの男は転移門(ゲート)を開き、問答無用で僕たちを吸い込んだ。

 連れて来られた場所は、玉座の間だった。


「ここは……玉座の間?」

「そうです。戦いの場としては相応しいでしょう? ですが、あなた達の相手は私ではありません」


 そう言うとフードの男は再び転移門(ゲート)を開き、あるものを召喚した。


「こいつは……【合成生物(キマイラ)】か!?」

「その通りです。なかなかカッコイイでしょう?」


 キマイラは、ライオンの頭にヤギの頭と胴体、そして尾は蛇の頭になっている。

 また、背中には悪魔の翼を生やしている。つまり、飛行可能ということだ。

 まさに『合成生物』の名に相応しい姿をしている。


「あなた達の相手はこの子が務めます。せいぜい、遊んであげてください。では、私は用事があるので、これにて失礼いたします。それでは皆さん、さようなら」

「待てッ!」


 フードの男はキマイラを召喚すると、転移門(ゲート)の向こうへと消えていった。


「ガオオオオオッ!!」


 キマイラは、けたたましく咆哮する。

 本来、キマイラはこの世に存在しないはずの伝説の魔物だ。

 それを召喚できると言うことは、あの男はひょっとすると『魔王の下僕』か?

 蛇大臣も、魔王アガレスが復活したと言っていた。その可能性は非常に高いだろう。


 しかし、今はそんな事を考えている暇はない。

 とにかく、今はキマイラを倒すのが先決だ。


「行くぞ、みんな! アイツを倒して、ジャズナ王国を救うんだ!」

「ええ!」

「おうっ!」

「はい!」


 僕が指示を出すと、仲間たちは臨戦態勢に入った。


■■■■■


「まずはオレが行くぜ!」


 ヒューイはそう言うと、斧を構えて走っていった。

 すると、キマイラはライオンの頭で噛みついて反撃する。


「おっと!」


 しかし、ヒューイもそれを予想していたのか、回避した。

 次に僕が稲妻矢(サンダーアロー)を放つ。

 稲妻はキマイラに命中したが、ダメージは浅い。


氷結剣(アイスブランド)!」


 今度はルナが剣技を放った。

 氷の刃が勢いよくキマイラに迫る。


「ガオオオオ!」


 しかし、キマイラは咆哮すると、飛んで回避した。

 そして、キマイラはそのまま落下して伸し掛かった。

 全員、散り散りになって回避した。


 キマイラは今度、セレーネに目をつけた。

 そして、ライオン頭からセレーネに向かってファイアブレスを吐いた。

 セレーネは結界(バリアー)を張って防御した。


「どこ見てやがんだ!! おらぁッ!!」


 ヒューイは背後から、キマイラに攻撃しようとした。

 しかし、尻尾の蛇頭がヒューイの腕に噛みついた。


「ぐうッ……!」


 ヒューイの様子がおかしい。顔色が悪く、青ざめている。


「セレーネ、ヒューイが毒に侵されたようだ。このままだとヒューイが死んでしまう。すぐに治療を!」

「はい!」


 セレーネはすぐに、ヒューイの毒を解消(リフレッシュ)した。

 すると、ヒューイの顔色が良くなった。


「ふう、気分が良くなったぜ。サンキュー」


 キマイラは再び飛行して、また落下してきた。

 全員、散開してかわした。

 落下後、キマイラのヤギ頭がアイスブレスを吐いた。

 霧状の冷気が襲ってくる。

 セレーネはすぐに結界を張って防御してくれた。

 しかし、キマイラ周囲の床が凍ってしまった。

 これでは滑って近づくことができない。


「ここは私に任せて! 風斬刃(ウィンドブレイド)!」


 ルナは風斬刃(ウィンドブレイド)をキマイラに向けて飛ばした。

 風斬刃(ウィンドブレイド)は、キマイラの左翼を切断した。

 なるほど、厄介な飛行能力を奪い、空中へ逃げられないようにしたのか。

 僕はすかさず、火炎弾(フレイムバレット)を連射した。

 キマイラにダメージを与えつつ、凍らされた床をも溶かす。

 その後、ヒューイがキマイラに向かって走っていった。


「おりゃあッ!!」


 そして、キマイラのヤギ頭を斧で切断した。

 いやこの場合、斬首したと言ったほうが良いか。


「ギャアアアアアアアアッ!!」


 切断されたのはヤギの首なのに、苦悶の声を上げたのはライオン頭のほうだった。

 どうやら、痛覚は共有しているらしい。

 よく考えたら、あれで一体の魔物なのだから、当然と言えば当然か。


 そして、切断された首からは血が出てきた。

 こうして見ると召喚されたとはいえ、あくまでも生物だというのが改めて分かる。


「今だ!! 一気に畳み掛けて……!」


 僕がそう言いかけた時だった。

 何やら、キマイラの様子がおかしい。


「グオオオオ……ッ!」

「何かまずい! ヒューイ、すぐに離れろ!!」

「えっ!?」


 嫌な予感がした僕は叫んだ。

 キマイラの周囲に、複数の魔法陣が展開された。

 すると、巨大な火の玉や、氷の槍、そして雷雲が魔法陣から召喚された。


「そんな!? あれって上級魔法!? しかも複数同時に発動するなんて!!」


 ルナが叫ぶ。

 上級魔法は一斉に僕たちに向かって飛んできた。

 セレーネはすぐに結界を展開し、間一髪で防御は間に合った。

 至近距離にいたヒューイは飲み込まれてしまった……かに見えた。

 しかし、僕が瞬間移動で引き寄せたため、こちらも間一髪だった。


「大丈夫か?」

「あ、ああ。危なかったぜ……」


 火炎爆弾(フレイムボム)の爆発で起きた煙が、徐々に晴れてきた。

 もともと、ジェノスの攻撃で玉座の間は壊れていたが、今の攻撃で壁は完全に崩壊してしまった。

 辛うじて、柱は崩れずに残っていた。

 これ以上今のような攻撃が続くと、城がもたない。

 そして、キマイラの失われた翼とヤギの首が、みるみるうちに再生していった。


「そんなっ!? ウソでしょ!? 再生能力まであるの!?」

「そんな……」

「おいおい、マジかよ!?」


 その光景に驚愕する仲間たち。


「ガオオオオオッ!!」


 失われた身体が復活したキマイラだが、憎々しげに咆哮する。

 僕たちは今、絶望的な気分を味わっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ