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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第79話 乱入者

 ルナたちの活躍により、拠点は取り返された。

 ギースや、ガレットたち砂漠のサソリも善戦する。

 彼らも手練れの戦士だ。

 たかが帝国兵ごときに後れを取るはずがない。


「おいリーダー、どうやら俺たちが帝国に対して優勢なようだぜ! あのファインって奴の考えた作戦が上手く行っているようだぜ!」

「ああ、そうだな。よーし、野郎ども! このまま畳みかけるぞ!!」

「「「おう!」」」


 ガレット率いる、砂漠のサソリも帝国に対して優勢だった。

 一方、ギース率いるジャズナ王国騎士団も南東の拠点付近で戦っていた。


「ギース団長、我が方が優勢なようです。このまま行けば我々の勝利です!」

「油断するな。何が起きるかわからない。各員、最後まで気を引き締めろ!」

「「「ハッ!」」」


 ギースは部下たちに発破をかける。

 また、ルナの合図と同時に、マシャク各地でも冒険者たちによる一斉蜂起があった。

 帝国軍は次々と追い詰められていく。

 ジャズナ王国を占領した帝国軍が瓦解するのも、もはや時間の問題だろう。

 そんな中、帝国軍はある秘密兵器を始動させようとしていた。


 グランヴァル帝国の帝都オストにて。

 天のジェノスが、協力者に話しかけた。


「おい、協力者とやら」

「何でしょうか、ジェノス将軍」

転移門(ゲート)とやらを使って、俺をジャズナまで送れ」

「おや、あなたは皇帝陛下から帝都防衛の任を授かっているはずですが?」

「いいから送れ。あのディーンにだけ楽しい思いをさせるわけにはいかんからな」

「後でどうなっても知りませんよ?」


 そう言うと協力者は転移門(ゲート)を開き、ジェノスをマシャクまで送った。

 協力者はジェノスを送ると、踵を返して帝都に戻ろうとした。

 その直前に、再度ジェノスのほうを振り返る。


「ジェノス将軍、遊ぶのも程々に」

「フン! 言われなくともわかっている」


 協力者は、転移門(ゲート)で帝都に戻っていった。


「さあ、始めようか。楽しい戦いを!」


 そう言って、ジェノスは不敵な笑みを浮かべていた。


■■■■■


 僕は剣を構え、ディオーランと戦おうとしているところだ。


「行くぞ、ディオーラン」

「くっ……!」


 戦いを始めようとしていたところだった。

 すると、建物が揺れているのを感じた。

 僕は直感的にその場にとどまるのは危険だと感じたため、すぐに動いた。

 すると、爆炎によって玉座の間の分厚い壁が破られた。

 そこに現れたのは、ドラゴンに乗った騎士だった。

 騎士は長い金色の髪で、鋭い目付きをした男だ。

 右手にはトライデントと呼ばれる、三叉の槍を持っている。


「新手か」

「貴様がファイン・セヴェンスとやらか? 会えて嬉しいぞ。早速だが六大帝将の一人、この【天のジェノス】が直々に貴様の相手を務めてやろう!」


 竜騎士は天のジェノスと名乗った。

 ジェノス・ファーブニルは六大帝将の一人で、狡猾で残忍な性格をしていると聞く。

 そのため、敵国の民を平気で殺し、略奪をする残酷非道な男だ。

 戦いの為なら、手段を選ばない戦闘狂だ。

 そして、こいつの強さは並みではない。

 そう思った僕は、剣を構えて臨戦態勢と取った。


「行くぞ!」


 そう言うと、ジェノスは先制攻撃を仕掛けてきた。

 ジェノスは竜を巧みに操り、僕に接近する。

 そして、上から槍による刺突攻撃を行う。

 僕は回り込んで回避した。


「俺の攻撃を避けるとは、なかなかやるな!」


 そう言ってジェノスは再び攻撃してきた。

 僕はジャンプして後ろに回避する。

 そして、ジェノスから距離を取った。


「それで、俺の攻撃から逃れたつもりか?」


 ジェノスの竜が火炎弾を吐いて攻撃してきた。

 なるほど、竜だから当然そういうこともできる訳か。

 しかし、それは僕とて予想できなかった訳ではない。

 僕は結界(バリアー)を張って防御する。


「ほう、結界(バリアー)か。しかも貴様、無詠唱で魔法を使えるとはな。少しは俺を楽しませてくれるようだな!」


 そう言うと、ジェノスはまた接近して槍で攻撃してきた。

 僕は、ジェノスの攻撃を左右交互に回避する。


「どうした? 避けてばかりでは俺には勝てんぞ!」


 ジェノスはそう言って挑発する。

 なるほど、こいつの戦闘スタイルは『超攻撃型』と言ったところか。

 隙のない攻撃だ。

 しかも竜に乗っている分、ジェノスは剣が届きづらい高さにいる。

 だが、超攻撃型ということは、防御面が脆いはずだ。

 そこで僕は、ジェノスの攻撃の隙を突いて反撃することにする。


 ジェノスは槍で攻撃してくる。

 僕はジャンプで回避し、ジェノスの頭上から剣で斬りかかった。

 しかし、僕の剣戟はジェノスの槍によって防がれてしまった。


「なにっ!?」

「甘いな」


 そして、そのまま離れたところまで弾き飛ばされてしまった。

 距離が空いたことによって、再び竜が火炎弾で攻撃してきた。

 僕は当然のように回避するが、火炎弾は次々と飛ばされてくる。

 そのため、僕は横に走りながら火炎弾を避ける。

 時計回りでグルグルと回りつつ、少しずつジェノスへと距離を詰める。

 そして、僕は再びジェノスの頭上から剣で斬りかかった。


 しかし、竜の火炎によるカウンター攻撃が入った。

 僕は咄嗟に、左腕に防盾(シールド)を展開して防御する。

 【防盾(シールド)】は、結界(バリアー)に比べて防御面積が小さいが、消費魔力が少なくて済むという利点がある。

 近づけば槍で攻撃されるし、離れても竜の火炎弾で攻撃される。

 全く隙がない。ジェノスと竜はまさに、一心同体であった。

 とりあえず、僕はジェノスから一旦距離を取った。

 すでに、玉座の間はボロボロになっていた。


「驚いたぞ、貴様がこれほどまでにやるとは正直思っていなかったぞ。兵たちの情報に違いはなかったようだな」

「驚くのはまだ早いぞ」


 僕はそう言うと、右手を出して氷の槍(アイス・ジャベリン)を三発ほど放った。

 僕は魔法戦士だ。故に剣だけで戦うのはもったいないので、魔法も併用して戦う。


「ほう、氷の槍(アイス・ジャベリン)か。しかも無詠唱で三発同時に放てるとはな。だが!」


 ジェノスの竜も火炎弾を三発放って応戦する。

 氷の槍(アイス・ジャベリン)は火炎弾によって消滅させられた。


「火炎を放つ俺の竜に、氷の槍(アイス・ジャベリン)を放つのは愚策なのだよ!」


 そう言って、ジェノスは僕を侮蔑する。

 僕は続けて稲妻矢(サンダーアロー)で攻撃する。

 しかし、ジェノスは頭上の雷雲に気づいたのか、稲妻を回避した。

 この攻撃を避けるとは、勘のいい奴だ。


「万策尽きたようだな。今度はこちらから行くぞ!」


 ジェノスはそう言うと、竜を駆って接近してきた。

 僕は剣を構えた。

 ジェノスが僕に肉薄した、その時だった。


「なっ!? う、動けん!?」

「かかったな」


 そう、僕は自分の足元に麻痺罠(トラップ)を仕掛けておいたのだ。


「これは、麻痺罠(トラップ)か!? しかし、そんなものは仕掛けている余裕などなかったはず……。まさか、氷の槍(アイス・ジャベリン)を放った直後か!? 俺の竜が火炎弾を放ち、ジャベリンを消し去る瞬間にトラップを仕掛けていたというのか!」

「そうだ。しかし、気づいたところでもう遅い」


 僕は剣を鞘に納め、右手を出した。


「出よ、炎の精霊サラマンダー」


 せっかく契約したので、僕はサラマンダーの力を使ってみることにした。

 炎のようなオーラと共に、サラマンダーは現れた。


「な、な、なんだそれは!?」


 サラマンダーを目の当たりにしたジェノスは狼狽する。

 それにしても、ジェノスには精霊が見えるのか。

 だが、見えていることが逆に恐怖だろう。

 そんなジェノスに構わず、僕は頭に浮かんだ魔法を発動することにした。


「灼熱の業火よ、この世の万物を焼き尽くせ、【アトミックフレア】!」


 すると、強大な爆炎がジェノスを襲う。


「ぎゃああああああああああッ!!!!」


 ジェノスはたまらず、断末魔の叫びを上げた。

 やがて、ジェノスは爆炎に飲み込まれた。

 しばらくして爆炎が消えると、ジェノスと竜は丸焦げになって倒れていた。

 こいつはもう助からないだろう。

 だが、その方が平和に暮らす人々にとっては良いはずだ。

 そして、精霊の力というものは、いつも不思議に思う。

 玉座の間は竜の火炎でボロボロにはなったのだが、アトミックフレアで傷ついた形跡はない。


「ハッ!? ヴィオラ様とメアリー陛下がいない!」


 戦いに夢中で気がつかなかったが、ジャズナ親子がいなくなっていた。

 しかも、ディオーランまでもがいなくなっている。


「まさか、ディオーランが……!?」


 僕は嫌な予感がしたので、玉座の間を後にした。

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