第７４話 作戦会議
ギース氏率いる王国騎士団の小隊と、冒険者パーティー【砂漠のサソリ】。
そして、僕たち星の英雄たちが集まった。
これから、改めて女王救出と王都奪還のための作戦会議を行う。
「作戦会議を始める前に、改めて自己紹介させてもらうぜ。俺は【砂漠のサソリ】のリーダーを務めるガレット・ランスだ。気軽にガレットと呼んでくれていいぜ」
「私は星の英雄たちのルナ・セラフィーです」
「同じく、私はセレーネ・ホープと申します」
「ヒューイ・サウスリーだぜ」
ガレットが自己紹介をすると、仲間たちも名前を名乗った。
自己紹介が終わると、年長者のギース氏の主導で作戦会議が始まった。
「では、作戦会議を始めよう。知っての通り、王都マシャクは現在グランヴァル帝国の支配下だ。反撃を行いたいところだが、帝国と王国の戦力は雲泥の差だ」
「加えて、女王様も人質に取られちまっているし、生き残った騎士団も捕虜にされている。こちらから迂闊に手出しできねぇ。何とかして女王様を助けたいが……」
ガレットがそう話すと、ヴィオラ様は心配そうな表情になる。
それを見た僕は話を進める。
「まずは女王陛下の救出が先決ですね」
「そうなんだが、女王様は王都中心部の城の中だ。しかし、今は王都中帝国の兵士がウジャウジャいる。救出は困難だ」
「では、陛下の救出は僕が行おう。隠密で敵に気づかれないように城まで移動し、女王陛下を助け出す」
「やれるのか？」
「大丈夫。陛下の救出なら、ここの誰よりも僕が適任者だ」
「しかし……」
「いや、ファイン君以上に女王陛下救出の適任者はここにはいないだろう」
「そうだな。さっきの魔法を見て、俺もそう思う。よし、頼んだぞ」
ギース氏とガレットは僕の背中を押した。
「任せてください。それでここから大事なんですが、女王陛下の救出後は街中の冒険者たちを一斉蜂起させ、帝国軍を撃退しようと思います。女王陛下の救出に成功したら、合図の火炎爆弾を空に打ち上げます。問題は戦力と、いつ行うかと言うことです」
「戦力もそうだが、問題はそのフレイムボムが合図という情報をどうやって流すかだ。誰かに伝言ゲームしてもらうか……？」
「それだと、帝国に見つかった時のリスクが高いな。さて、どうしたものか……」
ギース氏やガレットが判断に迷っていると、ルナが口を開いた。
「じゃあ、私たちが各地に分散して、ファインの合図とともに動くと言うのはどうでしょうか？」
「なに？」
「それで、騒ぎを聞きつけた帝国兵をこちらに引き付けることができますし、手薄になった他の地域では冒険者たちが蜂起してくれると思います」
「そうだな。それならオレも暴れることができるぜ！」
「ですが……」
「セレーネ、心配すんなって！ オレがいるんだぜ！」
ルナはそのように大胆な発言をした。
自ら率先して行動し、冒険者たちの蜂起を促すと言う。
セレーネは否定的な意見だが、好戦的な性格のヒューイは賛成だった。
「しかし、行動を起こすにしても人数が少なすぎる」
「いや、僕の仲間たちなら出来るかもしれません。仲間の強さは僕が一番よく知っている。頼むぞみんな」
「おうっ！」
「任せて！」
「わかりました」
こうして、一斉蜂起を促す役目を仲間たちに任せるのであった。
しかし、実際に攻撃を行う前に、敵の拠点の場所を聞くことにした。
仲間がいくら強くても、攻撃目標はできる限り正確に把握しておく必要がある。
「ガレット、敵の戦力が集中している場所は分かるか？」
「ああ。仲間が偵察に行った時の情報なんだが、城の南東と南西にそれぞれ帝国兵たちの拠点が置かれているらしい。ちなみに、そいつは今でも偵察に行っているぜ」
「と言うことは、そこを攻撃すれば帝国軍は城から増援を割かなければならなくなるだろう。しかし、大人数で動いても目立つな」
一斉蜂起を前に、敵に作戦がバレる訳には行かない。
さて、どうしたものか。
あまりやらせたくはないが、なるべく目立たないように動くしかあるまい。
「ルナ、単独で南西の拠点を攻撃できるか？」
「ええ、任せて」
「ヒューイとセレーネは二人で南東の拠点を攻撃してくれるか？」
「おう！」
「お任せください」
「セレーネ、ヒューイは特に危なっかしいから、君がサポートしてやるんだぞ」
「はい」
「お前、それどういう意味だよ！？」
話を進めていると、ギース氏が心配そうに声をかけて来た。
「そんな少人数で大丈夫なのか？」
「大丈夫です。こう見えても、僕の仲間は強いので」
「だぞうだぜ、ギースさん。俺たちも俺たちで行動しないとな。俺たち砂漠のサソリは、そっちの嬢ちゃんの後に続いて南西の拠点を攻略するぜ。よろしくな、嬢ちゃん」
「よろしくね！」
「では我々、ジャズナ王国騎士団は南東の拠点を攻略する。ヒューイは魔物の森に一人で入るくらいに危なっかしいからな？」
「ちょ、兄貴！？ 何年前の話だよ！？」
ガレットとギース氏も、仲間を率いて各自で動いてくれると言う。
「ところで、報酬の話がまだだったな。俺たちは少人数で帝国に立ち向かうからリスクが伴う訳だ。だから、それ相応の対価を支払ってくれるんだろう？」
ガレットは報酬の話をしてきた。
これから、危険な場所へ飛び込むために当然の対価だと言う。
僕は魔法鞄から袋を取り出し、テーブルにゴールドをばらまいた。
「お、おい、今それどこから取り出した？」
「前払いで一人あたり金貨１０枚……すなわち１万ゴールド払おう。そして、作戦が成功した暁にはさらに１０万ゴールド支払う」
「な、何ィィィィ！？」
ガレットは驚きを隠せずにいた。
我ながら大胆な行動に出たと思う。
今後僕の財布はほとんどスッカラカンになるが、どうせ使い道などないに等しかったのだ。ここで使っても問題はないだろう。
とは言え、これで彼らは否が応でも動かざるを得ない。
「そんな大金……一体、どこから出したんだ？ お前が只者じゃないってことだけは分かったぜ。だが、お前の誠意……しかと受け止めたぞ。俺たち、砂漠のサソリは星の英雄たちと共に戦うことを約束しよう」
「ありがとう。では決まりだな。明日の夜に僕が城へ赴き、女王陛下を救出に向かいます。しかし、状況によっては時間がかかることも十分予想できます。いつでも動けるようにしていてください」
「わかった。私たちも各自で動くようにしよう」
会議が終わり、部屋を出た
それと同時にヴィオラ様が僕に話しかけてきた。
「ファイン君、私も一緒に連れてって！」
「ダメです。危険過ぎます」
「お願い！ お母様に早く会いたいんだもの！ それにファイン君のステルスって魔法を使えば大丈夫でしょ？」
「仕方ありません。わかりました、一緒に行きましょう」
ヴィオラ様は、自分も一緒に連れていって欲しいと言う。
本当は連れて行きたくないのだが、あまりに真剣な眼差しを僕に向けてくるので、負けてしまった。
ヴィオラ様は未来のジャズナ王国を担う重要な人だ。
難しいことだが、ヴィオラ様は何があっても守りきることに努めよう。
