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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第72話 潜入作戦

ジャズナ王国を取り戻すための第一フェイズ開始ッ

圧倒的不利な状況から勝ってみせる

 ヴィオラ王女に、捕らわれた女王並びにジャズナ王国を取り戻して欲しいと懇願された。

 これから、帝国に占領されたジャズナ王国の王都マシャクへ潜入するつもりだ。

 しかし、今回行く場所はあくまでも敵地であるため危険を伴う。

 そこで潜入する前に、リーダーであるギース氏の主導のもと綿密な作戦会議を行うことにする。


「まず、王都マシャクは敵の侵攻を防ぐために、周囲を高い壁に囲まれている。ところが帝国軍は侵攻当時、三隻の飛空艇を用いて攻めて来た。帝国軍の前に我が軍は成す術なく敗北した。私は当時、ヴィオラ殿下と共に城にいたのだが、一人の兵士が帝国が侵攻してきたことを報告してきた。そして、女王陛下の命を受け、私はヴィオラ殿下を連れてこの町まで逃げて来たのだ」


 ギース氏は帝国侵略時の詳細を話す。

 僕は女王陛下の様子について聞こうとした。


「では、女王陛下は今……」

「お母様はきっと生きているわ! でも、今は帝国に捕まってて……お願い! お母様を助けてあげて!」


 ヴィオラ王女は、首を横に振ってそう言った。

 最愛の母親が不幸な目に遭っているという、現実を受け容れたくないのだろう。

 女王がまだ死んだと決まった訳ではないが、処刑されるのは時間の問題だろう。

 だからと言って、ここで諦めるわけには行かない。

 少しでも可能性があるなら、それに賭けたいと思う。


「大丈夫、女王様は必ず僕たちがお救いいたします」

「ホント!? ありがとう!!」


 僕の言葉の後、仲間たちは頷いた。

 ヴィオラ王女は涙を浮かべて感謝した。


「では本題に入るが、問題はどうやってマシャクに潜入するか、だ」

「門には十中八九、帝国の警備兵が配置されている……という訳ですね」

「その通りだ。無論、普通に門を通ろうものなら、敵だとバレかねん。さて、どうしたものか……」


 ギース氏は顎に手を当てて考える。


「商人を装って潜入すればいいんじゃないでしょうか?」

「うむ、確かにいい考えではあるな。だが、帝国がそう簡単に通してくれるとは思えんな」


 最初にルナが自分の意見を述べる。

 しかし、それに対してギース氏は否定的な意見だ。

 だが、帝国軍の警備は厳重だろう。

 ましてや、今のマシャクは帝国の支配下だ。

 荷物があるにしても、正式な手続きがなければ入れないであろう。


「ではこれならどうでしょうか? 魔法で敵兵を眠らせて、その隙に潜入するというのは」

「いや、それだと自分たちが眠っていたという異変で勘づかれるリスクが大きい」

「あ、そうでした」


 次にセレーネが自分の考えを述べた。

 一見良さそうな作戦ではあるが、眠りから目が覚めた時に、侵入者が現れたと勘づかれる可能性が高い。

 そうなれば、王都内ではたちまち帝国の兵士たちが出動するだろう。

 逃げ場はなくなり、もはや捕まるのも時間の問題だ。


「だったら、シンプルに敵は全員ぶっ倒せば良くね?」

「「えっ!?」」

「君はバカか? そんなことをしたら、敵に報告されてバレるだろう?」


 ヒューイは突然ぶっ飛んだ発言をした。

 その発言には、ルナとセレーネも度肝を抜かれる。

 ヒューイらしいと言えばそれまでなのだが、いくら何でも考えがなさすぎる。


 とは言え、仲間たちの案はどれもこれも却下されている。

 それだけ敵地への潜入は危険を伴うということだ。


 ならば、これしかないか。

 できればやりたくなかったのだが、仲間たちの案が却下された以上は仕方がない。

 僕は密かに考えていた自分の作戦を伝えることにした。


「では、僕一人で王都マシャクに潜入します」

「「えっ!?」」

「正気か!? ファイン」

「君にだけは言われたくないんだが」


 僕の言葉を聞いて、案の定驚く仲間たち。


「一人で潜入するだと? いくら何でも無謀過ぎる……」

「そうでもありません。まず、隠密(ステルス)で見つからないように近づきます。そして、瞬間移動(テレポート)で門の内側に潜入します。その後にこことマシャクに空間魔法【転移門(ゲート)】をつなげ、皆さんを合流させようと思います」

「なるほど。よく分からんが、ファイン君は相当規格外な存在のようだな。だが、それなら敵に悟られずに潜入できるかもしれないな」

「そんな! いくら何でも危険だわ!」

「そうですよ!」

「わかっている。しかし、もうこれしか手はない」


 ルナとセレーネは、僕のことを心配する。

 しかし、そんな二人に構わず僕は話を続ける。


「ところで、可能であれば王都内で協力者が欲しいのですが、どなたか信頼できる方はいませんか?」

「ああ! それなら、心配はいらない。古くから知り合いの冒険者集団がいるんだ。【砂漠のサソリ】というパーティー名で、リーダーの名はガレット。口は悪いが、頼りになる青年だ。彼らのアジトは、マシャク南部一帯の5の8番地にある。南部には噴水があり、その北側の住宅地に彼らの拠点がある。このような有事に備えて一見すると外観は普通の民家になっているが、目印は小さなサソリだ。そして、拠点の入口に辿り着いたら、ノックして門番に合言葉を言え。合言葉は『デザートはアイス』だ」


 僕の要望に応えたギース氏は、協力者を紹介してくれた。


「ありがとうございます、ギースさん。後は確実な信頼を得たいので、あなた直筆の手紙を書いていただけますか? 何分、僕と砂漠のサソリとは初対面ですので」

「ああ、それもそうだな」


 作戦会議の後、僕は出発に向けて準備を始める。明日の朝には出発するつもりだ。

 また何日も砂漠を移動することになるため、荷造りはしっかり行わなくてはいけない。

 すべては、ジャズナ王国を救うために。


 作戦会議の翌日。

 僕はマシャクに向かうため、朝から移動する。

 ここサンタナからマシャクまでは5日かかると言うことなので、ラクダに乗って移動する。


「気をつけてね、ファイン」

「頑張れよ、ファイン!」

「ファイン様、お気を付けて」

「ありがとう、みんな。行ってくるよ」


 仲間たちに見送られ、僕は出発しようとしていた。


「……やっぱり、私も一緒に行こうか?」

「いや、万が一に備えて、君にはヴィオラ王女をお守りして欲しい。頼りにしているよ」

「わかったわ」


 ルナは僕に付いて行きたいと言った。

 しかし、万が一に備えてルナにはヴィオラ王女のそばにいて欲しいと思う。

 ここから先は、誰にも任せられない危険な仕事だ。

 僕はラクダに乗り、サンタナの町を後にした。


■■■■■


 サンタナを出発してから5日。

 ジャズナ王国の王都マシャクが見えて来た。

 ラクダに乗っているとは言え、かなりの距離を移動したのでさすがに疲れた。

 しかし、疲れている暇はない。

 一刻も早く女王を救う手立てを講じなければならない。

 その第一段階として、ギース氏が紹介してくれた【砂漠のサソリ】と会う必要がある。

 城は王都の中心部だが、中心に行けば行く程、帝国の警備は厳重だろう。

 女王の救出は困難だ。


 潜入は視界が悪く、且つ人出の少ない夜だ。

 そう思っていたが、移動しているうちに丁度夜を迎えた。

 そのため、これからマシャクへの潜入作戦を敢行しようと思う。

 乗って来たラクダを降り、転移門(ゲート)でサンタナに戻した。

 ここからは、自分の足で歩いてマシャクに向かう。

 王都の周囲には、敵の侵攻を防ぐための大きな壁がある。


 僕はまず、隠密(ステルス)で身を隠す。

 このまま歩いて近づきたいところだが、砂地は柔らかくて足跡が出来てしまうため、気配を消しても足跡でバレてしまう。

 そこで、門の前まで一気に瞬間移動(テレポート)する。

 入口となる門には、案の定兵士が2人立っている。

 鎧には帝国の紋章を付けている。

 しかし、僕は隠密(ステルス)で気配を消している為、兵士に僕の姿は見えないはずだ。

 僕は再度瞬間移動(テレポート)を使い、門の内側へと移動した。


 ここから冒険者パーティーの拠点に向かわなければいけない。

 拠点の場所は、王都の南部一帯にある5の8番地だと言う。

 ギース氏の話によれば、南部には噴水があり、その北側の住宅地に彼らの拠点があると言う。

 目印は小さなサソリの絵だ。

 そして、ノックをした後に門番に合言葉の『デザートはアイス』と言わなければならない。

 なぜデザートなのかと思ったが、砂漠と食べ物のデザートをかけているのか。


 僕はクリアリングのため、探知(サーチ)を使った。

 周囲にちらほら帝国兵らしき気配を感じるが、夜間だけあってか数はまばらだ。

 そして、マシャクの民は誰一人として外出していない。

 帝国軍からは、外出を禁止されているのか。あるいは、単純に帝国の支配下なので外出したくないだけか。


 とりあえず、目印となる噴水を探すべく南部一帯を調べることにする。

 マシャクはジャズナ王国の王都だけあって、建物だらけである。これは探すのも一苦労だろう。

 ……前方から誰か来た。数は2人。

 僕は気配を殺して、悟られないようにした。

 予想どおり、現れたのは帝国兵だった。


「あーあ、夜の見回りだりぃな」

「それにしても、なぜ皇帝陛下は他国への侵略をするのか……」

「シッ……! ジェノス将軍に聞かれたらヤバイぞ……。バレたら即処刑だ」

「そ、そうだな」


 帝国兵たちはそんな会話をしていた。

 どうやら、帝国内部でも他国への侵略に疑問を抱いている者もいるようだ。

 帝国人とて、王国人と同じ人間。

 ゆえに、帝国兵でも根っからの悪人ばかりではない。むしろ大半は善良な人間である。


「ディーン将軍の考えた作戦は完璧だ。ジャズナの女王を人質に取ることで、迅速かつ最小限の被害でジャズナ王国の王都マシャクを占領することができた。クックックッ、誰も最強の帝国軍に手出しはできまい」


 なに? 女王を人質に取っただと?

 と言うことは、メアリー女王はまだ生きているということか。

 それに、兵士は【ディーン将軍】の名前も出した。

 ディーン……即ち、ディオーランがジャズナ侵攻作戦を指揮していたということか。

 アイツも出世したようだな。いや、今は感心している場合ではない。


 そして、帝国兵は僕に気づくことなく、そのまますれ違っていった。

 もっとも、隠密(ステルス)で気配を消しているので当然と言えば当然だが。


 さて、気を取り直して噴水の場所を探すか。

 それから、南部一帯を探索すること約5分。

 ギース氏が言っていたと思われる噴水を発見した。


「これか?」


 見つけるのにもっと時間がかかると思っていたが、予想以上に早く発見することができた。

 あとはこの噴水から北の地域を探すことにする。この周辺に砂漠のサソリの隠れ家があるはずだ。

 さらに探すこと約2分が経過した。

 扉に小さなサソリの絵が書かれた家を見つけた。


「あった! 間違いない」


 僕はマシャクに潜入してから、1時間足らずで砂漠のサソリの拠点を見つけることができた。

 これから、砂漠のサソリの拠点に入り、彼らの協力を得ようと思う。

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