表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
69/159

第68話 砂漠の迷宮

 流砂に飲まれた先には、謎の地下空間が広がっていた。

 そこは地下でありながら広々としていて、いくつもの柱が立っており、洞窟というよりは建物の中のようだった。


「なんなんだ、ここは……? 砂漠の地下にこんなところが……」


 僕がそう言うと、ルナが答える。


「そう言えば、お父様から少しだけ聞いたことがあるわ。ジャズナ砂漠のどこかには広大な地下遺跡があって、そこは別名【砂漠の迷宮(デザート・ラビリンス)】とも呼ばれているわ。きっとここがそうなんじゃないかしら?」

「砂漠の迷宮、か。いずれにせよ、出口を探さないとな」


 僕たちが落ちてきた場所は、なぜか地上への出口が繋がっていない。

 流砂で出来たはずの穴は、いつの間にか塞がってしまったのだ。

 これも、砂漠の迷宮(デザート・ラビリンス)の力なのか。

 ここは地下空間で、太陽光が遮られているためか涼しい。


 僕たちは、地上への出口を探すために迷宮の中へと進み出した。

 少し進むと、2つの穴があった。


「分かれ道か。どちらが正解だと思う?」

「私は左だと思うわ」

「私もですわ」

「オレは右だぜ!」


 ルナとセレーネは左をヒューイは右を選んだ。


「じゃあ左だね。左の穴に進もうか」


 入り口付近は広々としていたが、穴に入ると通路が急に狭くなった。

 その一方で、壁にはなぜか松明がかけられている。ここだけ妙に親切である。


「罠があるかもしれない。気を付けて進もう」

「そうね、気を付けましょう」


 ずっとまっすぐの通路を、ひたすら進み続けた。

 その時だった。

 僕の後ろを歩いているルナの目の前の壁から、突然槍が飛び出てきた。


「ひいぃぃっ!?」


 その拍子に、壁からは次々と槍が飛び出してきた。

 しかし、ルナは間一髪のところで回避した。

 よく見ると、ルナの立っている床が少しだけ沈んでいた。

 これが罠のスイッチだったのか。


「大丈夫か!?」

「ええ。だ、大丈夫よ」


 僕はルナの様子を心配したが、幸いにもケガはしていないようだ。


 しばらく先へ進むと、急に広場に出た。

 半径約20メートルはある円形のかなり広いフロアで、中央には支柱が建っている。

 また、壁にはいくつもの松明がかけられているため、明るい。

 そして左右を見渡すと、壁際に計二つの宝箱があった。


「あっ、宝箱だ」

「よせ、ルナ!!」


 ルナは宝箱を見るや否や、右の方に向かっていきなり走り出した。

 すると、どこからともなく無数の矢が飛んできた。


「危ないッ!!」

「ひいぃぃっ!?」


 僕は慌ててルナを止めた。

 ルナは矢に当たらずに済んだが、弾みでルナは尻餅をついてしまった。

 仲間たちも心配そうに駆け寄る。


「おい、大丈夫か!?」

「え、ええ。私は大丈夫よ」

「ファイン様が罠には気をつけろと言っていたでしょう?」

「そうね。心配かけてごめんなさい」


 ヒューイは単純にルナの心配をしていた。

 一方、セレーネは心配そうな表情をしてはいるが、意外と厳しいことを言う。

 ルナは天然ボケしているのか、時折ポカをやらかすことがある。

 学生時代のルナは成績優秀で、学年でもトップ3に入る程だったのに。


「それから、あの宝箱……あれ自体もおそらく罠だ」

「えっ?」

「あの宝箱を開けると中から毒ガスか何かが噴き出すか、あるいは宝箱自体がミミックなどのモンスターだったりする」

「ええー、そんなところにまで罠を?」


 その後先へ進んだ。

 通路は再び狭くなった。

 すると、奥から微かに物音が聞こえてきた。


「何か来る。戦闘準備を!」


 程なくして現れたのは、3体のキラースコーピオンだった。

 体長1メートルの大型サソリである。

 もちろん、ハサミと尻尾には毒がある。

 砂漠にはよく生息しているが、この迷宮にも出るのか。

 キラースコーピオンはハサミを大きく上げて威嚇している。


「1体ずつチマチマやるのは面倒ね。ここは私に任せて!」


 そう言うと、ルナが剣を横に振って風斬刃(ウィンドブレイド)を放った。

 3体のキラースコーピオンは、成す術なく真っ二つに切り裂かれた。


「オレの出番は?」

「もうないわよ?」

「マジかよ……」


 肉体派のヒューイは戦いたかったようだが、ガックリと肩を落とす。

 ただ、先のことも考えて戦いは最小限にとどめたい。

 キラースコーピオンを倒した後、狭い通路を更に先へ進む。


 しばらく進むと、また広場に出た。

 そこには5体のキラースコーピオンが待ち構えていた。


「まずはオレが行くぜ! おりゃああああ!!」


 ここぞとばかりに、ヒューイが先に飛び出した。

 ヒューイは斧で2体のキラースコーピオンを倒した。


「残りは私がやるわ!」


 そう言ってルナはまた風斬刃(ウィンドブレイド)を放ち、残った3体のキラースコーピオンを倒した。

 その後も何度かモンスターに遭遇し、その度にルナが剣技で敵をなぎ倒していった。


「なんだか、少し疲れたわ……」

「魔力を少し使いすぎでは? ほら、手を出して」

「うん」


 僕が出した手を、ルナが握った。


精神力供給(マインドサプライ)

「わあ、魔力が回復したわ。ありがとう!」


 ルナの精神力を回復させた後、再び狭い通路を進む。

 ところが、その矢先のことだった。

 突然通路の床に落とし穴が発生してしまい、みんな落ちてしまった。


「うわああああああああ!!!」


 しかし、落とし穴の中が垂直ではなく、スロープ状になっていたおかげで助かった。

 そして、落ちた先には泉があった。

 なぜ落とし穴の先に、このような設備を付けたのかは疑問に思うが。

 とは言え、長旅で疲れていたので、このタイミングで水場に辿り着けたのは僥倖だ。

 とりあえず、近くに敵の気配はないため、ここで休憩することにした。


■■■■■


 休憩後は、泉の奥に見える通路を進むことにした。

 時折モンスターの群れが現れるので、それを倒しつつ進んだ。


 更に進むと、巨大な螺旋階段が現れた。

 上を見渡すが、地上が全く見えない。

 どうやら、相当地下深くにまで落ちてしまったようだ。

 一方で下を見ると、一番下までは30メートル程はあろうか。

 中央には巨大な支柱が建てられている。

 まさに、迷宮と呼ぶに相応しい構造をしている。


「とても高いな」

「どっちに進むんだ?」

「当然、上を目指す。そのほうが出口に近づけるはずだ」

「おう!」


 螺旋階段を上り、地上を目指すことにする。

 手すりはないが、階段の幅は3メートルはあるので注意すれば落ちることはない。

 とは言え、一番無難なのは壁際を歩くことだ。そうすれば安全に階段を上ることが出来る。


「ファイン、私怖いわ」

「大丈夫、壁際を歩けば落ちることはない」


 途中の壁には所々に通路への入口があったが、できるだけ上の階を目指すことにする。

 しかし、螺旋階段の半径は約20メートルはあるようで、1階分上るのに思ったよりも時間がかかった。


 そして、階段を上り始めてから10分程が経った。

 6階分に相当する高さまで上ると、階段は途切れてしまった。

 まだ天井までそこそこあるが、これ以上ここから上へは行けない。

 まさか、この迷宮に落ちた時点で相当地下深くにまで来てしまったのか?

 いや、それも有り得るな。


 とりあえず、一番上にあるこの通路に入ることにする。

 それから、通路の奥にさらに進むと、大きな扉が現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ