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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第62話 悪しき者

 大臣は突如ヘビの魔物に変身した。

 並みの魔物からは感じられない、強い魔力を感じる。

 そう言えば、大臣は変身直前まで着けていた指輪が光ったことにより、蛇の魔物へと変貌を遂げた。

 どうやら、あの指輪と何か関係があるらしい。


「フハハハハ、愚か者どもが! いくら集まったところで、ちっぽけな人間共が無敵のワシに勝つことなど出来んよ」

「それはどうかな? 僕たちは今まで色々な困難に立ち向かい、その度に突破してきた。今回もそうしてやる!」

「無駄な悪あがきを……。勇敢と無謀の違いというものを教えてやろう!」

「行きましょう、ファイン君。私たちなら、あの化け物を倒せるわ!」

「そうだな、あんなデカブツ、ぶっ飛ばしてやろうぜ!」

「ファイン様、私もお供いたしますわ」


 仲間たちは意気揚々としていた。

 脅威を目の前にしても、逃げずに戦う勇気を持っているのだ。

 僕は頼もしい仲間たちを持ったと改めて思う。

 まずは、セレーネがいつも通り防御鎧(プロテクト)を全員にかける。


「まずは私が! はああああっ!!」


 そう言うと、騎士エリーゼが剣と盾を構えて走り出した。

 そして、蛇大臣の攻撃をかわし、懐に潜ると剣で刺突した。

 しかし、その攻撃は蛇大臣に効かなかった。

 どうやら、蛇大臣の防御力は想像以上に高いようだ。

 その直後、蛇大臣が反撃しようと頭を上げた。


「その程度でワシは倒せん! このまま消し去ってやろう!」

「しまった!」


 僕は援護として、火球(ファイアボール)を蛇大臣の頭めがけて放った。


「うぐう、小癪なマネを!」


 蛇大臣は当然のごとく火球を耐えた。

 やはり、下級魔法程度ではまともなダメージを与えることはできないようだ。

 しかし、援護にはなったようで、エリーゼさんは一度後退した。


「迂闊に突っ込まないでください、エリーゼさん。もっと連携しないと!」

「すまない、ファイン殿。貴殿のお陰で助かった!」

「行くぞ、ルナ、ヒューイ!」

「ええ」

「おう!」


 僕たちは武器を構えて蛇大臣に挑んだ。

 みんなで連携して攻撃すれば、蛇大臣にダメージを与えられるはずだ。

 すると、蛇大臣は息を大きく吸い込み、紫色の霧状ブレスを吐き出した。

 まずい、猛毒だ!

 それは、3年前にローランド王国を襲った巨大ドラゴンが吐いたのと同じ猛毒のブレスだった。

 セレーネがすぐに結界を張って防御してくれた。

 何とか間に合ったのだが、ここで問題が発生してしまう。

 一人先行していたルナが猛毒のブレスを浴びてしまったのだ。


「「ルナ!!」」

「ああああ!! やばい! 私、死んじゃう、死んじゃう! げほっ、げほっ……あれ? 何ともないわ。あっ、そうだわ! 私には【状態異常無効】のスキルがあるんだったわ!」


 そうだ、忘れていた。

 本人も忘れていたようだが、ルナにステータス異常は効かないのだった。

 無事で何よりだったが、相当肝を冷やしたぞ。


「ぬうう、ワシの猛毒を喰らって無事でおるとは……。生意気な小娘がっ!」

「よくもやってくれたわね!」


 ルナはそう言うと、素早い動きで蛇大臣に接近した。


剣の舞(ソード・ダンシング)!」


 ルナは目にも止まらぬ速さで蛇大臣に斬撃を繰り出す。

 さすがの蛇大臣も巨体ゆえに、ルナの素早さにはついて来れない。

 しかし、多少のダメージは与えられているものの、やはり蛇大臣の高い防御力の前に有効打を与えられない。


「うぐぅ、小癪な小娘が! そんな攻撃で、ワシを倒せるとでも思っていたのか!」

「くっ……! こいつ、思ったよりも硬いわね!」

「だったらオレが!」


 次に飛び出したのはヒューイだった。

 ヒューイは斧を構え、蛇大臣の頭めがけてジャンプした。

 一方、蛇大臣もただ見ているわけではなく、頭突きで反撃した。

 もちろん、巨体ゆえに破壊力は大きく、ヒューイは勢い良く吹き飛ばされた。


「ぐおおおおっ!!」

「大丈夫ですか? ヒューイさん」

「す、すまねぇ。助かったぜ」


 ヒューイは怪我を負ったが、致命傷には至っていない。

 さすがの頑丈さだ。

 その後、すぐにセレーネが回復した。


「今度は私が行く! 氷結剣(アイスブランド)!」


 騎士エリーゼは前に出ると、剣技を放った。

 さすがは聖騎士(ホーリーナイト)なだけあって、強力な技が使えるようだ。

 氷の刃は蛇大臣の胴体に刺さり、血が出てきた。

 しかし、出血したと言っても少量で、まだ傷は浅いようだ。


「ぬうう、たかが人間風情が……。ワシのとっておきの技、見せてやろう!」


 蛇大臣は口を大きく開け、火の玉を召喚した。

 その火の玉は、みるみるうちに大きくなって行く。


「あれは……!? まさか!」

「私の後ろへ!!」


 騎士エリーゼは僕たちの前に出ると、左手の盾を前方にかざした。

 すると、盾からは聖なる光が発生した。


「スキル【聖盾(せいじゅん)】!」

火炎爆弾(フレイムボム)!!」

「無詠唱……だと!?」


 蛇大臣が放ったのは、やはりフレイムボムだった。

 しかも驚くことに、無詠唱で魔法を放ってきたのだ。

 フレイムボムは騎士エリーゼの盾によって受け止められた。

 しかし、蛇大臣の魔力は非常に強力なようで、フレイムボムなかなか消滅せずにいた。

 セレーネも結界を張って防御力を高めた。

 やがて、フレイムボムは大爆発を起こした。

 僕たちはなんとか無傷で済んだが、玉座の間は滅茶苦茶に破壊され、窓ガラスも割れた。


「ぬうう、ワシの魔法を受けてなお無事でいられるとは、小癪な人間共め!」


 蛇大臣がベラベラ喋っている隙に、僕は【空気刃(エアカッター)】を放った。

 見えない風の刃が、高速で蛇大臣の左目を抉り取った。

 これで、蛇大臣は左目を失ったと言うわけだ。


「ギャアアアアアア!! 小童が、よくもワシの顔に傷をつけたなァ!!」

「べらべら喋っているからだ」

「……よかろう、人間共。ワシの顔に傷を付けたことは褒めてやろう。だが、貴様らに勝ち目はない。次の攻撃で終わらせてやろう!」


 蛇大臣は体勢を立て直した。次もまた火炎爆弾(フレイムボム)を撃ってくるつもりなのだろう。

 既に玉座の間は、蛇大臣の攻撃でボロボロである。

 これ以上の攻撃を受けると、建物が持たないだろう。

 何とかして、こちらも次の攻撃で終わらせなくてはいけない。

 僕ば後ろを振り向き、セレーネに目を合わせた。

 すると、セレーネも頷いた。

 そして、他の仲間たちも僕の周りに集まってきた。


「消え去れ、脆弱な人間共!!」

火球(ファイアボール)!!」


 蛇大臣は再びフレイムボムを放ってきた。

 対する僕は、下級魔法ファイアボールで対抗する。


「フハハハハ、愚かな!! そんなちっぽけな火の玉でワシの火炎爆弾(フレイムボム)に敵うとでも思っているのか!!」


 そう、蛇大臣の言う通りだ。

 火球(ファイアボール)火炎爆弾(フレイムボム)に勝てるわけがない。

 だが、僕の狙いはもっと別にあるのだ。

 蛇大臣の放った火炎爆弾(フレイムボム)は大爆発を起こした。


「フハハハハ!! 終わったな。人間ごときがワシに敵うはずがなかろうが!!」


 大爆発で発生した煙は、徐々に収まってきた。


「……何!? バカな!? 何故生きておる!?」


 蛇大臣は、火炎爆弾(フレイムボム)を受けてなお無事でいる僕たちの姿を見て驚愕していた。

 実は蛇大臣の攻撃の前、僕は【通信魔法】で仲間たちに作戦を伝えていたのだ。


 作戦の内容はこうだ。

 騎士エリーゼが前に出て、聖盾で防御する。

 同時にセレーネは、蛇大臣の攻撃で城が崩壊しないように、蛇大臣の周りに結界を張っていたのだ。

 また、ルナとヒューイには被害を受けないよう、騎士エリーゼの後ろに来るように指示した。

 最後に、なぜ僕が敢えて火球(ファイアボール)で対抗したのか。

 その理由はこうだ。


「な、なんだ? この雲は……」


 そう、稲妻斬撃(サンダースラッシュ)で蛇大臣を倒したかったのだが、これを発動するには少々時間がかかる。

 そこで、敵のフレイムボムを利用し大爆発を起こすことによって、カモフラージュすることにしたのだ。

 その際、消費の少ないファイアボールをぶつけることで、稲妻斬撃(サンダースラッシュ)を発動する際の負担を抑えることにしたのだ。

 さて、フィニッシュと行こうか。


「お前の陰謀もこれで終わりだ、大臣! 稲妻斬撃(サンダースラッシュ)!!」


 無数の稲妻が、蛇大臣を直撃した。

 蛇大臣にようやく大ダメージを与えることが出来た。


「ギャアアアアアアアアア!! そんなバカな……。【魔王様】に頂いたせっかくの力が……」

「なに……? 今、なんて……!?」


 蛇大臣は気になることを言い出した。


「いいか。人間共、よく聞け。もうじき【魔王アガレス】様が復活を遂げられる! 今はまだ不完全だが、やがて力を取り戻すであろう。そして、魔王様が力を取り戻した時、世界を支配するときが再びやってくるのだ……!」

「そんな……! そんな事って……!!」

「クックックッ。魔王様のお力は、ワシとは比べものにならない程強大だぞ。せいぜい、その時まで震えて待っているがいい、人間共……!」


 蛇大臣は不穏な言葉を遺し絶命した。そして、死体はそのまま消滅した。


「ファイン殿、【魔王アガレス】とは、かの有名な人魔大戦の……?」

「ええ。蛇になった大臣からは、並みのモンスターからは感じられない強力な魔力を感じました。大臣の言うことが本当の事なら……大変なことになりました」

「うむ。王にも警鐘を鳴らす必要があるようだな」


 蛇大臣は、魔王アガレスが復活したと言う。

 そう言えば、伝承では大賢者ユリウスが放った黒い光に、魔王アガレスは飲み込まれたと書いてあった。

 それが本当なら、ユリウスは魔王を倒したのではなく、封印したと言うことになる。

 その封印が今、解けて復活したということだろう。

 そして、魔王は世界のどこかで人知れず力を蓄えていると言うのなら、一刻も早く対策を考えなくてはならない。

 とは言え、今は目の前の脅威である帝国軍を何とかしなくてはならない。

 僕たちは、これから今まで以上に困難に立ち向かうことになるだろう。

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