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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第58話 不思議な男

 ベアバレーに着いてから二日目。

 ヘイズル陛下からは、会議での意見が決まるまで、ゆっくりして行って良いと言われた。

 久々の休暇なので、読書でもして過ごそうかと思っていた。

 しかし、昼間はルナやヒューイの稽古に付き合わされたので疲れた。

 休日だからと言ってぐうたらしていると、体が鈍ってしまうとか何とか言われた。


 その日の夜、僕は気分転換に一人で街に出かけた。

 ベアバレーはフォースター王国の王都というだけあって、街はかなりの人で賑わっている。


「やはり人が多いな」


 商店街には多くの店が並んでおり、活気が溢れている。

 ちなみに、他のみんなは城で談話しているらしい。


 久々に一人の時間だ。

 みんなで一緒に過ごすのもいいが、個人的にはやはり一人で行動する方が好きだ。

 そう言えば、イナ村で暮らしていた頃は、一人で行動することが多かった。

 何だかあの頃が懐かしい。


 街を歩いていると、金髪赤目の男性とすれ違った。

 身長が高く、精悍な顔立ちをしている。推定年齢は20歳くらい。

 黒いマントを羽織っており、どこかの貴族のようだ。

 言葉では表せないが、その人からどこか不思議な雰囲気を感じた。

 相手も僕の視線に気が付いた。

 しかし、特に声をかけることはなく、そのまますれ違った。


 その直後、後ろから不穏な声がしたので振り返った。

 先程の男性が、3人組のチンピラに絡まれており、そのまま路地裏に連れていかれた。

 僕は後を追うことにした。

 そして、隠れて様子を見ることにした。


「兄ちゃん、痛い目に遭いたくなかったら、カネを出しな!」

「お前どっかの貴族だろ!? 当然、俺ら貧乏人に恵んでくれるよなぁ!?」


 金髪の男性に対し、チンピラどもはカツアゲをしようとする。

 なるほど。大臣が言っていた平民と貴族の貧富の差は、こういう形で犯罪として起きるのか。

 威圧感を強く出しているチンピラどもに対し、金髪の男性は冷静に対応した。


「悪いが、今は手持ちが少ないんだ。それに、持っていたとしても、下衆に出す金はないのでね」

「テメェ!! 俺たちを下衆呼ばわりするたぁ、いい度胸じゃねぇかッ!! やっちめぇ!!」


 そう言うと、チンピラたちは男性に向かって襲いかかった。

 僕は飛び出し、男性の前に立ちはだかった。


「な、何だ小僧!? 邪魔するなら、てめえもやってやる!!」


 チンピラたちは、標的を僕に変える。

 しかし、僕は問題なくチンピラたちを撃退した。


「クッソー、覚えてやがれ!!」


 チンピラたちは捨て台詞を吐き、逃走して行った。


「大丈夫ですか?」

「ありがとう。君のおかげで助かったよ。俺はアレン。君の名は?」

「僕はファイン・セヴェンスと言います」

「ファイン君か。見かけによらず、強いんだね」

「こう見えても鍛えているので」


 金髪の男性はアレンと名乗った。

 落ち着いていて紳士的であると同時に、どこかミステリアスな雰囲気も感じた。

 僕は、アレンさんに感じていた率直な疑問を述べた。


「僕たち、どこかでお会いしました? あなたとは初めて会うのに、初めてじゃない気がするんです」

「奇遇だな。俺も君とは初めて会うはずなのに、どこかで会った気がするんだ」

「えっ? それってつまり……」


 何と、アレンさんも僕と同じことを思っていたようだ。

 しかし、アレンさんは直後にこう言った。


「いやいや、まさか。気のせいだろう。ファイン君、改めて礼をさせて欲しい。君の都合が良ければだが、奢らせて欲しい」

「わかりました。ご厚意に甘えさせていただきます」


 僕はアレンさんと共に、酒場へ行くことになった。


■■■■■


「……なるほど。ファイン君は冒険者として旅をしているのか」

「はい。僕は仲間と共にローランド王国から来ました」

「奇遇だな。私もローランドから来たのだよ。今はこうして、自由気ままに世界を旅している」

「そうなんですか」


 酒場では、アレンさんと他愛のない世間話をした。

 アレンさんはグラスに注がれた酒を飲む。

 ちなみに、僕はコーラを注文した。

 オーバーテイルで飲んで以来、気に入ったのだ。


「ファイン君、今日は好きなだけ飲みたまえ。私の奢りだ」

「ありがとうございます」


 こうして、僕とアレンさんはしばらく酒場に滞在した。

 アレンさんは何杯か酒を飲んでいたが、酒に強いのか酔った素振りを見せなかった。

 それから、数十分ほどが経った。

 アレンさんが代金を払い、酒場を出る。


「今日は楽しませてもらった。改めて礼を言わせてもらうよ」

「こちらこそ、奢っていただいてありがとうございました」

「気にしないでくれ。それじゃあ、また会おう。ファイン君」


 僕は頷くと、踵を返し城へ戻ろうとした。


「……君が無事、生き延びられたらの話だがね」

「えっ?」


 アレンさんは、唐突に意味深なことを言った。

 僕は振り替えるが、アレンさんは既にいなかった。

 一体、どういう意味だったのか。

 考えてもしょうがないので、僕は城に戻ることにした。

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