表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
58/159

第57話 セレーネの苦悩

今回はタイトル通り、セレーネ視点での話になります。(後半から)

 僕はヒューイと共に、与えられた部屋に入った。

 一般客用の部屋と思われるが、中は広々としていた。

 そして夕食後、再び部屋に戻ってきた。


「あー、食った食った」


 ヒューイはすぐにベッドで横になった。

 僕は読書をしようと、魔法鞄(マジックバッグ)から本を出した。

 しかし、やけに静かだと思った直後、いびきが聞こえてきた。

 振り返ると、ヒューイはすでに寝てしまった。


「よく寝られるな……」


 僕はそう呟いて、読書をすることにした。

 数分後、部屋の扉がノックされた。


「ファイン様、今よろしいですか?」

「どうぞ」


 部屋にやってきたのは、セレーネだった。


「どうしたんだい? セレーネ。こんな時間に……」

「少し、相談したいことがありまして……」

「?」

「とりあえず、場所を変えませんか?」


 僕とセレーネは、屋上へと移動した。

 珍しく僕はセレーネと二人きりになった。

 そして、セレーネは俯きながら突然こんなことを言い出した。


「私って、役立たずですよね?」

「どうしたんだい? 急に……」

「ルナは剣術に優れていて、ヒューイさんも力自慢です。そして、ファイン様は剣と魔法の両方が使えて凄いと思います。ですが、私だけは戦うことが出来ません。私は皆さんと比べて体力もないですし、足手まといになっているだけです……」


 セレーネは自分の悩みを僕に打ち明けた。

 確かにセレーネは戦うことが出来ず、はたから見れば足手まといに見えるかもしれない。

 しかし、僕はセレーネに対する率直な感想を述べる。


「そ、そんなことはないよ! セレーネの回復・補助魔法はいつも頼りになっているよ。正直、セレーネがいなければ、今回の旅は厳しかったと思う。今更だけど、いつも僕たちを支えてくれてありがとう」

「ファイン様……! ありがとうございます! 私、悩みを打ち明けて良かったです!」

「悩みを打ち明けてくれて、ありがとう。これからも頼りにしているよ」

「はい!」


 セレーネは涙ぐんでいたが、次第に笑顔を取り戻して行った。

 これで、セレーネも少しは自信が持てただろう。

 そして、セレーネは相談を続けた。


「ファイン様、せっかくなので、私の過去について聞いていただいてもよろしいでしょうか? ファイン様にだけは、本当の私を知っていて欲しいのです」

「ああ、構わない」


 そう言うと、セレーネは自分の過去の話を始めた。


■■■■■


 私の名は、セレーネ・ホープ。

 本名はセレーネティア・フォン・フォースター。

 そう、私はフォースター王国の王女なのです。

 私は、人間の父とエルフの母の間に生まれたハーフエルフです。

 母の名はセシリアで、旧姓は【ホープ】でした。

 つまり、セレーネ・ホープの名は母方の旧姓から取っているのです。

 

 母・セシリアは二十数年前に、エルフの森を出て人間界に引っ越してきました。

 そこで母は、私の父となる国王のヘイズル・フォン・フォースターに求婚されました。

 母の美貌に、父は一目惚れしたそうです。

 そうして、私・セレーネティアは誕生しました。

 母・セシリアは穏やかな性格で、誰にでも優しかったそうです。

 しかし、私が幼い頃に母は病気で亡くなってしまいました。


 私が生まれる前から、父には正妻がいました。

 そして、その正妻の息子にして、私の腹違いの兄であるヘンリーがいます。

 また、母の結婚前の身分は『平民』と言うことになります。


 フォースター王国は、平民と貴族の貧富の差が激しく、また平民に対する差別意識が強い国です。

 私は『王女』という立場にもかかわらず、平民との間に生まれた子供と言うだけあって、城内でも快く思われていませんでした。

 兄は口には出しませんでしたが、態度からして私に不快感を示していたのは明白でした。

 そして、私は使用人にすら嫌がらせを受けていました。

 特に大臣は率先して私に嫌がらせを行い、王城では居心地が悪いと感じていました。


「皆、本当はあなたを王女とは認めたくないんですよ」


 それが、大臣の口癖でした。

 ですが、私は心配をかけまいと父に打ち明けることは出来ませんでした。


 そんな私の唯一の理解者は、エリーゼだけでした。

 エリーゼは、代々騎士を輩出してきた名門貴族【ロックストーン伯爵家】の人間です。

 彼女とは、子供の頃から姉妹同然に過ごしてきました。

 そして5年前、エリーゼは弱冠15歳にして騎士になりました。

 その際には、自ら志願して私を護衛する任務に就いてくれました。


 ですが、私は王城では居心地が悪いと感じていました。

 そこで、エリーゼに辺境の地に住まわせてもらうように頼みました。

 エリーゼは意外にも、私の考えを快く受け入れてくれました。


「私は騎士になる前から、セレーネティア殿下に忠誠を誓いました。ですから、殿下の願いはどんなことであっても、喜んで受け入れましょう」


 私は幼い頃に道端で転んでしまい、膝に怪我を負ってしまいました。

 ですが、そこを通りかかった親切な冒険者の方が、回復魔法で私を治療してくださいました。

 この出来事がきっかけで、私は癒し手(ヒーラー)に憧れるようになります。

 少しでも、多くの人々を救えるようにと。


 そこで、私は15歳になる前、ローランド王国のアドヴァンスド学園に入学することを希望します。

 それをエリーゼに話しました。

 彼女は、文句一つ言わずに私の願いを聞き入れてくれました。

 エリーゼはアドヴァンスド学園に着くまで私を護衛してくれました。

 ここまでしてくれたエリーゼには、感謝の気持ちしかありません。


 アドヴァンスド学園入学後は、ファイン様やルナとも知り合い、仲良くなりました。

 特に、ファイン様には様々な回復・補助魔法に加えて、無詠唱まで教えていただきました。

 そして、学園卒業後はファイン様やルナ、そしてヒューイさんと共に世界を救う旅に出ています。

 これからも、私の魔法で皆さんを支えられるように努力したいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ