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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第56話 衝撃の事実

 僕たちはオークキングを退治したことをアイリーンさんに報告した。


「皆さん、お疲れ様でした。怪我がなくて何よりです! 報酬として、1人あたり白金貨を3枚ずつお支払いします」

「えっ、そんなに!?」

「はい。オークキングは危険な魔物のため、当然の対価だと思いますが、少ないですか?」

「いや、むしろ多いと思いますが……」

「そうですか。とりあえず、報酬をお渡ししますね!」


 こうして僕たちは、計12枚の白金貨をもらうことになった。

 そして、アリシアさんからは改めて感謝される。


「皆さん、お忙しい中助けていただいて本当にありがとうございます」

「気にしないでください。短い間とは言え、一緒に戦った仲間を見捨てるわけには行きません。それでは、僕たちは王都へ向かわなければいけないので、これにて失礼」


 そう言って僕は踵を返した。


「待ってください! 私はファインさんには何度も助けられました。私にとっての【英雄】をタダで帰すなんて申し訳ありません。ですから、これを受け取ってください」


 そう言うと、アリシアさんは自分が身に着けていたペンダントを僕にくれた。


「これは?」

「このペンダントはエルフの秘宝で、魔力を高める効果があります」

「それって、相当貴重な物じゃ……?」

「いいのです。私の命と比べたら、このペンダントなんて安い物です。どうか、ファインさんには受け取って欲しいのです。きっと今後の旅で役に立ってくれるはずです」

「わかりました。それなら、ありがたく受け取っておきます」


 こうして、僕はアリシアさんから『エルフのペンダント』をいただいた。


「さようなら、ファインさん。皆さんの今後の旅が無事であることを祈っています」

「またねファイン君! ボクももっと強くなれるよう、頑張るから!」

「楽しかったニャ! またいつか一緒に冒険しようニャ!」

「……」


 ミネルバのメンバーは別れの言葉を告げた。

 そう言われると、余計に寂しくなるな。

 しかし、エリシアさんだけはそっぽを向いていた。


「あら、エリシア? もしかして泣いているの?」

「な、泣いてなんか……!」


 すると、ルナがエリシアさんに抱き着いた。


「ありがとう、エリシアさん! またいつか会いましょう!」

「う、ううっ……! 言われなくたって、また会うに決まってるでしょ!!」


 エリシアさんは号泣し出した。


「ファインさん、いつかまた会いましょう!」

「ええ。いずれまた!」


 僕たち星の英雄たち(スター・ヒーローズ)は、ミネルバに見送られて旅立って行くのであった。


■■■■■


 オーバーテイルから馬車に乗ること2日。

 夕方、王都ベアバレーに着いた。

 フォースターの国王に信書を渡すため、僕たちは城に訪れた。


 城門前には、5人のフォースター王国騎士団が立っていた。

 その中に、ひと際目立つ一人の女性騎士がいた。

 容姿は金髪ロングに青い瞳であった。

 女性にしては身長が高く、170cm程はある。

 見た目が若いので、推定年齢は20歳くらいと思われる。

 服装は女性騎士らしく白銀の鎧とマント、そして青いスカートを着用している。

 若くて美人だが、凛とした雰囲気を醸し出している。


「お久しぶりです。エリーゼ」

「あなたは……!! まさか、セレーネティア“王女”か!?」

「はい」

「ああ、セレーネティア殿下……! お久しゅうございます!」


 エリーゼと呼ばれた女性騎士の口からは、衝撃の事実が告げられる。


「セレーネティア? それに『王女』って……!?」

「なにっ、王女だって!?」

「どういうことだ? セレーネ」

「無礼者! このお方はセレーネティア・フォン・フォースター王女殿下だ。セレーネではない!」

「フォースター!? それってまさか!?」


 何と、セレーネはフォースター王国の王女様だと言うのだ。

 僕はセレーネ……いや、セレーネティア王女に向かって恭しく跪いた。

 それに続いて、ルナとヒューイも跪いた。


「どうか、今までの無礼をお許しください。セレーネティア王女殿下」

「やめてください。良いのです、ファイン様。それに私のことは、今までどおりにセレーネとお呼びください。良いですね、エリーゼ?」

「はっ。王女殿下がそうおっしゃるなら。私はエリーゼ・ロックストーンと申す。フォースター王国軍所属の聖騎士(ホーリーナイト)だ。セレーネティア王女を護衛していただいたことを貴殿らに感謝する」


 エリーゼさんは感謝の言葉と共に、頭を下げた。


「ファイン様、今まで黙っていて申し訳ございません。この者の言う通り、私の本当の名はセレーネティア・フォン・フォースター。ですが、故あって今はセレーネ・ホープと名乗っております」

「何があったのかは知らないが、詮索はしないでおこう」

「すみません。助かります」

「セレーネティア殿下、私はあなたの帰国をどんなに待ち望んだことか……」

「ふふっ、心配をかけましたね。エリーゼ」


 会話の後、僕たちはいよいよ城に入った。

 城に入ってしばらく進んだ時、エリーゼさんが騎士たちに言い放った。


「お前たちは城門前の警備に戻れ。私はセレーネティア殿下とご客人を案内する」

「はっ!」


 エリーゼさんの指示で、騎士たちは城門前へと戻って行った。

 今の言動から察するに、エリーゼさんは若くして騎士たちのリーダーのようだ。


「殿下、こちらです」

「はい」

「貴殿らはこちらで待たれよ」


 城に入った後、セレーネはエリーゼさんに目の前の部屋へと連れていかれた。

 その間、僕たち3人は用意された別室で待たされることになった。


 それから約30分の時が経った。


「失礼します」


 扉がノックされ、セレーネがエリーゼさんと共に部屋に入って来た。

 しかし、セレーネはドレスを着用し化粧までしていた。

 あまりの美しさに、僕は目を奪われた。それは、ルナやヒューイも同じだった。

 もともとセレーネは美人だったが、ドレスを着たセレーネはさらに美しい。

 こうして見ると、セレーネは本当に王女様なんだなと改めて思う。


「いかがでしょうか?」

「すごく似合っているよ」

「ありがとうございます、ファイン様」


 僕は率直な感想を述べた。


「行きましょう、セレーネティア殿下。国王陛下がお待ちかねです」

「ええ、そうですね」


 エリーゼさんの案内で、玉座の間を目指すべく移動する。


 通路では、身分の高そうな壮年男性に会った。

 その男性は、肥満体型で頭頂部がハゲている。

 

「おお、エリーゼではないか! そちらは?」

「大臣、こちらはローランド王国から来たと言う使者です」

「はじめまして。私たちは国王ゼフィールより、フォースター王国国王様宛ての信書を持って参りました」


 僕は大臣に挨拶をする。

 すると、大臣はセレーネを見る。


「おや、あなたは……セレーネティア殿下ではありませんか! お久しゅうございます!」

「……」

「セレーネ……?」


 セレーネはなぜか僕の後ろに隠れた。

 セレーネは俯いており、その表情はどこか怯えているようにも見えた。


 そして、エリーゼさんに案内されて玉座の間に着いた。

 玉座には、フォースター王国の国王が座していた。

 容姿は金髪で髭を生やしており、精悍な顔立ちをしている。

 推定年齢は40歳くらいで、一国の王にしては若々しい印象だ。

 僕たちは、国王の前に跪いた。


「よく来たな。面を上げよ」

「ヘイズル陛下、ローランド王国から来たと言う使者を連れてまいりました。そして……」

「お、お前は……!?」


 フォースター国王は、セレーネを見て驚いた。


「お前は、もしやセレーネティアではないか!?」

「お久しぶりです、父上」

「おお、セレーネティアよ。本当にセレーネティアなのだな?」

「はい、父上」


 ヘイズル陛下は娘のセレーネを前に涙ぐんでいた。

 無理もないだろう。久々に最愛の娘と再会できたのだから。


「よくぞ戻った我が娘よ。……ところで、その者たちはローランド王国の使者と言ったな?」

「はい。私はファイン様たちと共に、只今フォースターに帰還いたしました」

「うむ。我が娘を無事フォースターに送り届けてくれたことを感謝する。天国では亡き母・セシリアも喜んでいるであろう」

「いえ、礼には及びません」


 送り届けたと言っても成り行きでそうなっただけで、本当はセレーネが一緒に旅をしたいと付いて来ただけである。

 僕は本題を出そうとするが、先にセレーネが話し出した。


「父上、私たちはローランド王国のゼフィール陛下から父上宛ての信書を賜っております。どうかお読みください」

「こちらです」


 僕は懐から信書を出し、ヘイズル陛下に渡した。


「……ふむ、なるほど。ローランド王国はグランヴァル帝国に立ち向かうべく、我がフォースター王国と同盟を結びたいわけだな?」

「その通りです」


 しかし、ヘイズル陛下出した答えはこうだった。


「うむ、なるほど。だが、現時点では今すぐに同盟を結ぶことは出来ん。同盟を結ぶにしても、我が国の軍備を整えるなど準備に時間がかかる。とは言え、同盟を組むことは前向きに検討させてもらいたい。フォースターもローランドとは少なからず国交がある故、ローランドは我が国においても経済的な支えにもなっているからな」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 ヘイズル陛下が出した答えは、堅実なものだった。

 確かに、今すぐ同盟を組ませてもらいますと言うにしても、そのための準備には時間がかかるのも事実だ。


「では、この件については後日臣下を集めて会議をするとしよう。ところで、君たちは今夜泊まる宿は決めたのかね?」

「いいえ。まだですが……」

「では今夜はこの城に泊まっていくがよい。娘を無事届けてくれた恩もあるしな」

「ありがとうございます」


 ヘイズル陛下は、今夜は城に泊めてくれると言う。

 ありがたい限りだ。


「では、私が案内いたします」

「ああ。頼むぞ、エリーゼ」

「こちらです」


 部屋へはエリーゼさんが案内してくれるという。

 すると、大臣が僕のもとに寄って来た。


「フォースター王国では貴族と平民の貧富の差が激しいのですが、それゆえに平民の犯罪が我が国で問題になっているのです」

「はあ……」

「現在国においても陛下が中心になって、平民の貧困対策を考えているところなのです。ですが、わしは平民の犯罪が許せないのです! ゆえに平民の犯罪は厳しく処罰しております」

「そ、そうなんですか」


 大臣は突然僕にそんなことを伝えた。

 そんなことをよそ者の僕に話すと言うことは、よほど犯罪が許せないのだろう。

 大臣の過去に、一体何があったのだろうか。


 その後、僕たちは男女別で与えられた部屋で休んだ。

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