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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第54話 捕らわれる者たち

 アリシア率いる【ミネルバ】は、オーバーテイル近郊に突如現れたというオークの討伐に向かった。

 オークの目撃情報は、街の南側で複数寄せられている。

 しかし、この地域にもともとオークは出没しなかったはずだ。

 住民たちは、オーク討伐の依頼をギルドに出した。

 そして、ミネルバがそれを受理したのであった。


 アリシアたち4名は、オークが潜んでいるであろうオーバーテイル南の森へと足を踏み入れた。

 この日は、どんよりとした曇り空である。

 フランとミーナが前衛、エルフィード姉妹は後衛を務める。

 これは、ミネルバにおける普段の戦闘隊形である。


「オークなんて、本当にいるのかな? きっと、何かの見間違いだよね?」

「そうだと良いのですが、複数の住民からの目撃情報がギルドに寄せられているとのことです。おそらく見間違いではないでしょう」

「フラン、アンタ怖気づいたの?」

「そ、そんなんじゃないよ!」

「心配いらないわ。私がいれば、オークなんてすぐに仕留めてやるんだから!」

「静かに! オークがいるとしたらこの森です。気づかれないよう、慎重に進みましょう」


 フランとエルフィード姉妹が会話する。


 木々が生い茂る森の中を進むミネルバ一行。

 すると、ミーナの耳がピクリと動く。


「前方に気配を感じるニャ!」


 ミーナはそう言って前方を指さす。

 猫人族である彼女は聴覚に優れている。故に優れた索敵能力を発揮する。

 普通の人には聞こえないような、微かな音でも聴き取れるのだ。


 エリシアは木の上に登り、上から魔導弓(シューター)で狙い撃ちにするつもりだ。

 各々は、武器を構えてゆっくり進んだ。


 すると、前方にオークがいた。

 オークは緑の体色をしており、体長は約3メートル程。

 そして、人間と同じく二足歩行のモンスターである。

 確認できるだけでも数は3体。

 ミネルバ一行に緊張感が走る。


「目撃情報、ウソじゃなかったみたいですね」

「どうするの? アリシア」

「まず私とエリシアが狙撃してオークの数を減らします。その後、フランとミーナが接近戦を仕掛けてください。私たちもできる限り援護するので、あまり無理はしないように」

「了解ニャ!」


 アリシアはそう言うと、弓を構えてオークに狙いを定めた。

 そして、アリシアは思いっきり弓を弾いて矢を放った。

 矢はオークの眉間に当たった。

 残りのオークが気づき、アリシアたちに向かう。

 しかし、エリシアの狙撃でもう一体も倒される。

 最後の一体をフランが槍で串刺しにした。


「これで終わり……!」

「気を付けるニャ! まだ来るニャ!」


 ミーナの言う通り、オークがまた現れた。数は4体。


「だとしても、どうにかなるわ! 喰らえっ!!」


 エリシアは木の上からオーク一体を狙撃した。

 姉のアリシアは、左手で矢を三本同時に構えた。

 そして矢を三本同時に放ち、オーク三体を射抜いた。


「急所突き!」


 ミーナは素早い動きでオークの懐に潜ると、オークの首をナイフで突き刺した。

 この攻撃でオーク二体を倒した。

 フランも槍で少しずつだが敵を倒していく。


「おかしい……」


 しかし、オークの数は一向に減らない。

 それどころか、むしろオークの数は少しずつ増えて行っている。

 減らないオークを前に、ミネルバのメンバーも段々疲弊していく。


「フラン! 後ろです!!」

「えっ? うわあっ!!」


 オークのパンチで、フランが吹き飛ばされた。

 フランは死んでいないが、気を失ってしまった。

 オークたちは何かに気づいたのか、フランに寄っていく。


「フランから、離れなさい!」


 アリシアは矢を三本放ち、フランに近づいたオークたちを倒す。


「にゃあああああっ!!」

「ミーナ!!」


 ミーナもオークの攻撃で気絶してしまう。


「きゃあっ! は、離しなさい!!」

「お姉ちゃん!!」


 アリシアはオークの群れに捕らわれてしまう。


「お姉ちゃんを……離せっ!!」

「だめよ、エリシア! 木から降りては!!」


 エリシアは木から降りて、アリシアを捕まえたオークを撃ち抜く。

 これによって二体のオークは倒れた。

 しかし、木から降りたことが仇となった。

 樹上に留まれば、オークの手が届くことはない。

 しかし、樹上に留まって姉を見捨てるという選択は、姉想いのエリシアにできなかった。

 結果、エリシアもオークに捕らえられてしまった。


「ア、アンタは……!!」


 エルフィード姉妹が目にしたものは、驚くべきものだった。

 こうして、アリシアたちはオークの群れに連れていかれることになった。


 この様子を何者かが離れて見ていた。

 それは、ローランド王国で魔物群を仕向けたフードの男だった。


「クックックッ、その女性たちは、お前たちにくれてやりましょう……。オーク達よ、オーバーテイルを! フォースター王国を滅ぼすのです!!」


 男はそう言うと、いずこかへ消え去ってしまった。

 今の言葉からも分かる通り、オークたちを仕向けたのは紛れもなくフードの男である。

 しかし、フードの男は一体何者なのか? そして、何を企んでいるのか?

 現時点では全くを持って不明であった。


 ……そして、時は1時間前に遡る。


■■■■■


 僕たちはオーバーテイルを発ち、王都ベアバレーを目指そうとしていた。

 出発前に、ギルド受付嬢のアイリーンさんに一言挨拶しようと思っていた。

 そのため、僕たちはギルドへ行くことにした。

 ギルドではアイリーンさんの前に、ミネルバのメンバーが集まっていた。

 アイリーンさんも僕たちに気づいた。


「あっ、ファインさん! おはようございます!」

「おはようございます。ところで皆さん、どうしたんですか?」


 僕の質問に、アリシアさんが不安そうな表情で答える。


「実はオーバーテイルの南にオークが現れたそうなのです。それを今から、私たちで退治しに行こうと思います」

「そうなんですか。僕たちも手伝いましょうか?」

「いいえ、それには及びません。ファインさんたちも、国王陛下に信書を渡しに行くのでしょう? ですから、皆さんの手を煩わすわけには行きません」

「そうよ、ファイン。アンタ達の手を借りなくても、オーク如きに後れを取る私たちじゃないわ。だから、早く行きなさい」


 アリシアさん達は自分たちの力だけでオークを退治するという。

 僕は別れの挨拶をする。


「そうですか。では皆さん、気を付けて」

「ファイン君たちもね! ボクたちも頑張るから!」

「ありがとうニャ! 短い間だったけど、楽しかったニャ!」

「いつかまた会いましょう!」


 ルナが別れの言葉を告げた後、いよいよ出発する。

 僕たちはベアバレー行きの馬車に乗った。

 料金は前払いで銀貨10枚。それ程高くはなく、手軽に乗ることが出来る。


 出発から十数分後、今は森の中を進んでいるところだ。

 すると、ルナが急にこんなことを言い出す。


「ねえ、ファイン君。やっぱりアリシアさん達のこと、心配じゃない?」

「どうしたんだい? 急に」

「エリシアさんは自分たちの力だけでオークを退治できるって言ってたけど、やっぱり私、嫌な予感がするわ」

「しかし、僕たちも僕たちで、目的があって急いでいる訳で……」


 ルナは急にミネルバの心配をする。

 そして、次に突然こんなことを言い出した。


「ねえ、ファイン君。やっぱりオーバーテイルに戻りましょう!私、アリシアさん達のことが心配でしょうがないわ!」

「そうだな。ルナの言う通り戻ろうぜ!そして、アリシア達を助けに行こうぜ!」

「私もルナに賛成ですわ」


 何と、ヒューイとセレーネまでもが、ルナの意見に賛成すると言うのだ。


「わかった、わかった。御者、急だけど僕たちはここで降りさせてもらうよ」

「えっ? ちょっと、お客さん方!?」


 僕たちは御者の制止を無視して馬車を降りた。

 そして、転移(ワープ)で一旦オーバーテイルに戻ることにした。

補足ですが、エルフィード姉妹が見たものはフードの男ではありません。

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