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第4話 学園入学試験

 僕はローランド王国国立アドヴァンスド学園の入学試験を受けるために、王都エストにやって来た。

 朝になり、泊まった宿を出た。


「あれがアドヴァンスド学園か」


 歩くこと10分、巨大な建物が見えてきた。

 アドヴァンスド学園は幾人もの騎士や英雄を輩出してきた学園だそうだ。

 僕は校舎へ向けて歩いていた。

 

「おい、貴様! そこの貴様だよ! 平民が堂々と真ん中を歩いてるんじゃないぞ!」


 後ろから怒鳴り声が聞こえた。

 後ろを振り返ると、赤髪の男と二人の取り巻きらしき男たちがいた。

 

「僕に何か用か?」

「なんだ、その口の利き方は!? ヴァカダノー伯爵家のアッカス・ヴァカダノー様が相手と知ってのことか!」

「「そうだそうだ!」」

「ヴァカダノー伯爵家……? 知らないな。それに僕は貴族といえども、そんな風に傲岸不遜な態度を取る者には、それ相応に対応する主義なんでね」

「なんだとッ!? 貴様、生意気な! 修正してやるッ!」


 そう言うと、アッカスと名乗った男はいきなり僕に殴りかかってきた。

 僕はそのパンチを受け止め、右手の拳をアッカスの目の前で寸止めした。


「ヒッ!」

「やれやれ、入学前からトラブルは起こしたくないんでね。悪いが退いてもらえないか?」

「き、貴様……!」

「その辺でやめないか? アッカス」


 アッカスの後ろから、金髪で長身な男が声をかけてきた。


「ディオーラン、貴様!」

「オレはテメーなんかに敬意を払ってやる義理はないんでね」

「な、なんだと! 貴様ッ、平民の分際で生意気な……!」

「なんだ? またオレにブチのめされたいのか?」

「ちっ、もういい! 貴様ら、覚えてろよ! 行くぞ、ボブ、ゴンザレス!」

「「ああ! 待ってください、アッカス様~!」」


 アッカスは捨て台詞を吐きながら、取り巻き共々去っていった。

 僕はディオーランに話しかけた。


「助けてくれてありがとう。僕はファイン・セヴェンス。よければ君の名を聞かせてもらえないか?」

「オレの名はディオーラン・ブラスターだ。お前もあのアッカスってヤツには気をつけな。アイツに絡まれたらロクなことなんかねーぜ」

「ご忠告ありがとう」

「おう」


 早速、僕は試験会場へ向かった。

 入学試験の内容は、『筆記試験』『実技試験』そして、『バトルロイヤル』である。

 合計で300点満点で、合格ラインは最低でも210点以上とのことである。

 僕の組み分けはEだった。E組にはディオーランもいた。


「おう、お前もEか、奇遇だな。お互い頑張ろうぜ」


 10分後に答案用紙が配られ、筆記試験が始まった。制限時間は1時間である。

 試験問題は簡単な問題から、難しい問題まで様々だった。

 なかにはこんな問題があった。

 300年前の人魔大戦で魔王アガレスを倒した【英雄】は誰か、という趣旨の問題である。

 答えは、【ユリウス・ヴァン・ローランド】である。

 彼は大賢者であるため、様々な魔法を使うことができたという。

 特に、雷魔法を得意としていたらしい。

 ちなみに、ローランドの姓が示すとおり、ユリウスはローランド王家の人間である。

 

 そして1時間が経ち、筆記試験が終わった。

 僕は手ごたえを感じていた。


■■■■■


 筆記試験の次は、実技試験である。

 僕を含めた受験生たちは校庭に集められた。

 そして、試験監督らしき女性教員が現れた。


「今回の実技試験の監督を務めさせていただくレナと申します。これから行う実技試験の内容ですが、『魔力測定』と『武器試験』の二種類があります。まずは『魔力測定』ですが、こちらの魔力測定器と呼ばれる水晶に手をかざしてもらいます」


 試験監督の説明が終わると、魔力測定が始まった。

 ディオーランが手をかざした。水晶が青く光った。


「Dです」

「やっぱり、こんなもんか。魔力にはあんまり自信がなかったんだよなぁ……」


 ディオーランは苦笑いした。

 しばらくして、僕の番が来た。


「次、362番【ファイン・セヴェンス】!」

「はい」


 僕が水晶に手をかざすと、赤く光った。


「すごい、Aです! 魔力Aランクは珍しいですよ!」

「す、すげー。ファインの魔力はAかよ……」


 大半の受験生は、EかDの魔力で高くてもCがほとんどだった。

 そんな中、僕の魔力はAだった。僕の魔力だけ異様に高いのは気になるが、幼少期から魔法の訓練をしてきた賜物だと思う。

 しかし、この後にもっと驚く出来事が起きた。


「次、443番【ルナ・セラフィー】!」

「はい」


 ルナと呼ばれた女の子が、澄んだ声で返事をして前に出た。

 その子の容姿は、茶髪ロングに色白肌、そして瞳は綺麗な青色の容姿端麗な美少女だった。

 身長は女子にしては高めで、160cm以上はあると思われる。

 また、スタイルが良く服越しにも分かるほどの“大きさ”だった。


 おや、あの子どこかで見たことがあるような……? そうだ、思い出した。


 あの子は昨日、チンピラに絡まれていたところを、僕が助けた子だった。

 それに、入学試験を受けるとも言っていた。

 ルナは水晶に左手をかざした。すると……。


 パリーン!!


 なんと、水晶が割れたのだ。


「そ、測定不可能です!」


 測定不可能……?

 ひょっとしたら、ルナは幻のSランク魔力の持ち主では……?

 その後は特に何事もなく魔力測定は進んだ。

 そして、次は武器試験だ。


「続いては、『武器試験』になります。各自得意な武器を装備し、あの試験官と対戦していただきます。ただし、試験官に勝てなくても技術力などで採点させていただきます」


 レナ先生に紹介された試験官は、ガタイの良い男性である。

 左腰に帯剣し、鎧まで装備している。

 説明の後、武器試験が始まった。

 しかし経験の差もあってか、ほとんどの受験生は試験官に勝てなかった。

 一方、ディオーランは他の者と比べると善戦していたが、最終的には試験官に剣を向けられた。


「次、362番【ファイン・セヴェンス】!」

「はい」


 そして、いよいよ僕の番が来た。

 ちなみに、僕のクラスは魔法使い(メイジ)だが、ある程度は剣を使うことができる。

 そのため、武器試験には剣で挑むことにした。


「よろしくお願いします」

「うむ、いつでもきたまえ」


 先手を譲られたので、僕は近づいて斬りかかった。

 しかし、僕の攻撃は試験官に受け止められた。


「なかなかの剣筋だな。だが……!」

「ぬう……!」


 僕は後ろに弾き返されてしまった。

 今度は試験官が攻撃してきた。


「今度はこちらから行くぞ!」


 僕はその攻撃を避けた。

 試験官が続けて攻撃した。


「どうした? その程度の動きでは、私は倒せんぞ!」


 では、そろそろ反撃に出るとしよう。

 試験官が上から剣を振り下ろした。

 すると、剣戟で地面が抉れた。


「なに!?」


 僕は回避した後、試験官の背後に回り込んだ。そして、剣を向けた。

 周りからも驚きの声が上がっていた。

 それもそのはず。ここまで戦い抜いたのは、僕は初なのだから。


「まさか、私から1本取るとは……。おめでとう。武器試験、きみが初の合格者だ!」

「ありがとうございました」


 僕は試験官に一礼した。

 周りのみんなも拍手していた。


「やったな、ファイン! お前ってやっぱすげーな!」


 ディオーランも僕を褒めたたえていた。

 そして、しばらくしてルナの番が来た。

 ルナは右腰にナックルガード付きの剣を装備している。

 しかし、この後驚くことがまた起きた。


「次、443番【ルナ・セラフィー】!」

「よろしくお願いします」


 ルナは試験官に一礼した後、左手で剣を抜いた。

 そして、ルナは超高速で試験官に迫った。


「なっ!?」


 僕はその光景に驚愕した。

 そして、その直後……。

 シャキーン!

 試験官の剣が宙を舞っていた。


「い、一体何が起きたんだ?」


 試験官を含め、周りのみんなはただただ驚くばかりだった。

 しばらくして、試験官が口を開いた。


「ご、合格だ! まさか、私を打ち負かす者が二人も出るとは……」


 なんてことだ。ルナがこれほど強かったとは。

 ということは、昨日仮に僕が助けなかったとしても、ルナは自力でチンピラたちを倒すことが出来たというのか。

 この出来事によりルナは只者ではないと、僕は心の中で警鐘を鳴らすのだった。


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