第47話 再会
ようやく自分が好きな話にまで辿り着いた~
山間の村を出発し、フォースターに向けて再び険しい道を進む。
今度はまた山を登ることになる。
道中、ワイルドボアという猪の魔獣三体に遭遇した。
ワイルドボアは大型の魔獣ながら、四足歩行ゆえに足が速い。
その巨体と足の速さを駆使して、ワイルドボアは猛スピードで突進して来る。
しかし、先に攻撃したのはルナだった。
ルナは風斬刃でワイルドボア一体を真っ二つにした。
「やっぱり、私には魔法よりも剣が合っているわね」
続いて僕がサンダーアローでワイルドボア一体を倒した。
その直後、ヒューイが走ってワイルドボアに向かって行った。
ワイルドボアは構わず突進するが、ヒューイは斧で受け止めた。
そしてそのまま、ワイルドボアを弾き返した。
「おりゃあっ!!」
ヒューイは斧を振り下ろしてワイルドボアを真っ二つにした。
「オレたちにとっては、向かうところ敵なしだな!」
「油断大敵だぞ、ヒューイ」
その後も、僕たちは何度かモンスターと戦いながら、山道を進んだ。
カグラ公国を出発してから、すでに1週間以上が経過していた。
クタクタに疲れたある日の夜、ようやく街が見えて来た。
すると、セレーネが口を開いた。
「ここはフォースター王国北部の街、【オーバーテイル】です」
「ようやくフォースター王国に着いたか」
「ええ。ですが、ここから王都まではあと2日かかりますわ」
「そうか。それなら今夜はこの街に泊まるとするか」
僕たちは宿を探すことにした。
街は人で賑わっていたが、周りは山で囲まれていた。
さすがは、『緑の国フォースター』と呼ぶに相応しい風景だ。
そして1分もしないうちに、宿を見つけることが出来た。
ちなみに、今回はちゃんと男女で別れて泊まることが出来た。
■■■■■
翌日。
僕たちは王都へ向けて出発しようとしていた。
そんな折、後ろから女性の声が聞こえた。
「あれ? もしかして……!」
その小鳥のさえずりのような声には、聞き覚えがあった。
「アイリーンさん!?」
「あっ! やっぱり、ファインさん! それにルナさんまで! お久しぶりです!」
「アイリーンさん、久しぶりね!」
ルナとアイリーンさんは、お互いに手を取り合って再会を喜んだ。
持ち前のコミュ力の高さで、ルナは冒険者になった頃からアイリーンさんとは仲が良かった。
たまに世間話をしたり、時には買い物などにも一緒に行く程の仲になったらしい。
「どうしてここに?」
「今年から、冒険者ギルド協会のフォースター王国支部に異動になったんです。ところで、そちらの方々はお仲間ですか?」
「セレーネ・ホープと申します」
「ヒューイ・サウスリーだぜ!」
「それにしても、すごい偶然ですね! あっ、そうだ! 今からギルドに来てくれませんか? 大事な話があるんです」
僕たちは、アイリーンさんと共にギルドに向かった。
「単刀直入に申し上げます。ゴブリンを退治していただけませんか?」
「はい?」
「最近、この地域の周辺にゴブリンが出回っていて、街の人たちが困っているんです。ですが、冒険者の数が少なく人手が足りてないんです。どうか、お願いします! ファインさんたちにしか頼めないんです!!」
アイリーンさんは頭を下げた。
僕はなるべく早めにフォースター王国の国王に信書を渡したいと思っている。
しかし、困ったな。
僕は頼まれると弱い性格をしている。
何より、目の前で困っている人を見捨てることは出来なかった。
「わかりました。その依頼、受けて立ちましょう」
「本当ですか!? ありがとうございます! それから、強力な『助っ人』の方々をお呼びします」
「助っ人?」
「あれ、ゼフィール陛下から例の『サポート』の件、聞いていませんでしたか? あれってローランド以外の国でも使えるんですよ! ゼフィール陛下からギルドマスターにも話を通してあるそうですよ。ファインさんたちが安全に冒険ができるようにって」
「ではお願いします」
「わかりました! それでは、冒険者の方々をお呼びするのに、数分かかりますので、少々お待ちくださいね」
その後、僕たちは別室に呼ばれた。
そして後から、二人の冒険者がアイリーンさんに連れてこられた。
一人は、緑色のドレスを着た金髪碧眼の女性エルフである。
もう一人は、緑のシャツと半ズボンを着た茶髪の獣人で、猫耳としっぽが特徴的だ。また、猫耳少女は腰に短剣をぶら下げている。
「はじめまして。私の名はアリシア・エルフィード。【ミネルバ】のリーダーを務めております。よろしくお願いいたします。後方支援は私の弓と回復魔法にお任せくださいね」
「あたしはミーナ・キャッツマンだニャ! ジョブは盗賊だニャ! よろしくね!」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
エルフの女性は、穏やかな口調でアリシアと名乗る。
猫耳の獣人少女は、元気よく自己紹介した。
……おや? ちょっと待てよ。
このエルフ、なんだか見覚えがあるような……。
そう思っていると、エルフは僕を見て驚いた。
「ああっ! あなたは! あの時、大男から私を助けてくれた方ですね!」
「えっ? あっ!」
思い出した。
このエルフは3年前の冒険者試験登録の日に、ガラの悪い大男から救ったエルフの女性だった。
まさか、こんなところで会うとは思いもよらなかった。
「その節は本当にありがとうございました」
「いえ、お気になさらず」
すると、今度はアイリーンさんが口を開いた。
「あれ? そう言えば、他の方は?」
「今日はもう一人来る予定なのですが……」
「あの子は遅刻が多いニャ」
アリシアさんとミーナさんは困った顔をした。
そんな会話を聞いていると、突然部屋の扉がバタンと開いた。
「ごめーん!! 遅れた!!」
慌ただしく入って来たのは、金髪赤目の少年だった。
その少年は、少女のように華奢な体格をしていた。
声が高く、まだ声変わりする前のようだ。
そして、半袖の赤いジャケットとスパッツを着用しており、背中には槍を背負っていた。
……あれ? ちょっと待てよ。
この少年、ひょっとして……。
「遅いですよ、フラン。今日は他の冒険者の方々と一緒なのですから、もう少し早く来てください」
「ごめんごめん、ボクはフラン・ナインス。見ての通り【槍使い】だよ。まだまだ未熟者だけど、よろしくね!」
ああ、やっぱりそうだ!
彼は僕と同じ孤児院にいた子だ。
フランは一時期僕に付きまとっており、僕が苦手意識を持っていた子だ。
そして、フランは確か今年で16歳になるはずだ。
「あっ! ファイン君じゃん! 久しぶり!!」
「あ、ああ。久しぶり」
「ファイン君が村を急に出ていくから、寂しかったよ!」
「ああ、ごめん」
「でも、そんなファイン君に憧れて、ボクも1年前から冒険者になったんだ!」
「そ、そうなんだ」
まさか、今日でこんなに懐かしい面々と再会するとは思いもよらなかった。
次回の投稿には時間がかかる見込みです。