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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第45話 温泉のある宿

今回は、一人で読むことをお勧めします。

前半に『ヒューイの過去』の話を追加しました。(2024/01/29)

 オレの名は、ヒューイ・サウスリー。カグラ公国出身で、獣人族とのハーフだ。

 父親の名はコージ・サウスリー。猿人族で屈強な戦士だったと聞いている。

 人よりも体がデカく、力も人一倍強かったそうだ。また、猿人族の特徴でもある尻尾が生えていたそうだ。

 一方、オレには尻尾が生えておらず、見た目だけならまんま人間だ。


 母親の名はレイラ・サウスリーで、人間である。

 オレの記憶が正しければ、おふくろは赤髪赤目が特徴的な女性で、その特徴をオレも受け継いでいる。


 聞いた話だと、親父は斧を使って立ちはだかる敵をなぎ倒す程強かったらしい。

 と言うのも、オレが物心つく前に親父は王帝戦争の時に傭兵としてローランド王国に協力したが、仲間を庇い戦死している。


 それからのオレはおふくろと二人暮らしをしていた。

 しかし、おふくろはオレが8つの時に病気で亡くなってしまった。

 その後、オレはおふくろの親戚に引き取られたが、親戚は獣人を嫌っていたためかオレは良く扱われなかった。


 オレは子供の頃から体がデカくて力も強かったが、当時は気弱で回りの子供たちからもいじめられていた。

 だが、オレには友達も頼れる大人もいなかったため、そのことを打ち明けることは出来なかった。


「やーい、やーい。ヒューイ、お前はデカすぎんだよ!」


 そう言っていじめっ子たちはオレを蹴った。

 彼らは、オレのガタイの良さが気に食わなかったらしい。

 だが、気弱なオレは言い返すこともできなかった。


 ある日、好奇心で森を探検していたオレはモンスターの群れに出会ってしまう。

 絶体絶命のピンチ。

 そこに一人の若い冒険者が偶然現れた。

 冒険者は斧を軽々と振り回し、モンスターたちをあっという間にやっつけてしまった。


「大丈夫か? 坊主。ケガはないか?」

「うん、ありがとう」

「こんな所に子供一人で来ちゃ危ないぞ」


 親切な冒険者はオレをオーシンの街まで送ってくれた。

 それ以来、その冒険者とは仲良くなった。

 彼はジャズナ王国出身で、冒険者として世界を気ままに旅しているらしい。

 冒険者はたまにオレと遊んでくれたり、ちょっとした稽古をつけてくれたりもした。

 オレは冒険者のことを『兄貴』と呼ぶことにした。


 だが、いじめっ子たちは相変わらずオレをいじめていた。

 オレは勇気を出して、いじめられていることを兄貴に告白した。


「……そうか、よく今まで耐えて来たな。偉いぞ。後は大人に任せな」


 オレは兄貴をいじめっ子たちのもとに案内した。

 そして、兄貴はいじめっ子たちに言った。


「お前ら、ヒューイをいじめてるんだって? いいか、よく聞け。いじめは、いじめるヤツのほうが弱い。そいつは心が弱いんだ。だから、いじめっ子は決して強者ではない、ただの【弱虫】だ。そんな弱虫がかっこいいと思うか? ヒューイを見ろ。こんなにデカくて力も強いのに、決して暴力は振るわなかった。もしヒューイがその気になれば、お前らなんかイチコロだぜ? ヒューイの優しさには感謝しないとなぁ?」


 兄貴の言葉を聞いたいじめっ子たちは息をのんだ。

 いじめっ子たちはオレに今までのことを謝った。それ以来、彼らとは晴れて友達になった。

 その後、兄貴は再び世界を旅すると言って、カグラ公国を去って行った。


 オレは心も身体も強くなるべく、己の肉体を鍛え続けた。

 それから現在、オレはカグラ公国を救ってくれたファイン達の力になるべく、共に旅をすることに決めた。


■■■■■


 カグラ公国の首都オーシンを出てから大体5日が経過していた。

 その日の夕方。

 日没後、夜の帳が下りた。

 夜の森は、真っ暗で何も見えない。

 しかも、昼に比べて夜は魔物の動きも活発になる。


灯火(トーチ)


 僕はトーチで周囲を明るく照らした。

 これで暗闇の道を進むことが出来る。

 加えて、ある程度は魔除けの効果もあるため、弱い魔物なら退けることも可能だ。


「今夜も野営かしら。子供の頃にお父様と一緒に野営したことあるからいいけど、たまにはお風呂に入りたいわ」


 ルナがそんなことを言う。

 彼女の言う通り、カグラ公国を出てからは野宿をしている。

 僕たちは未だに、このように木々の生い茂った山道を進んでいる。

 しかも、山道ゆえに地形が平坦ではないため、野営地を選定するのも一苦労だ。

 下り坂を下っていると、木陰から幾つかの小さな光が見えた。


「見て、遠くに明かりが見えるわ。あれはもしかして……!? 行ってみましょう」


 ルナがそう言うと、みんなで走って光の方へと向かった。

 坂道を下った先の盆地に、小さな村を発見した。


「やった、村だ!」

「今夜はここに泊めてもらいましょう!」


 僕たちはルナに続いて村に入った。

 村には出歩いている、村人と思われる老人がいた。

 ルナがその村人に挨拶しに行った。


「こんばんは!」

「おや、こんばんは。アンタたち、冒険者かね? 長旅で疲れたじゃろう。この村の宿に泊まって行くことを勧めるよ」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

「ああ。ちなみに、宿には温泉もあるぞ」


 僕たちは早速、その温泉があるという宿に向かった。


「こんばんは。旅の方々ですか?」

「はい。二人部屋を二つずつ取りたいのですが、空いていますか?」

「申し訳ございません。本日は二人部屋はあと一つしか空いておりません。後は一人部屋になりますが……」

「じゃ、じゃあそれで」

「かしこまりました」


 僕たちは、一人部屋と二人部屋を一つずつ取ることにした。

 その後、部屋割りを決めることにした。


「とりあえず、ルナとセレーネは二人部屋に泊まるといい。僕とヒューイが一人部屋に泊まり、ヒューイはベッドに寝てもらおうと思う。僕は床にでも寝る」


 すると、ルナとセレーネは猛反対する。


「そんなのダメよ! いつもみんなを引っ張って、人一倍頑張っているファイン君が床で寝るなんて可哀想だわ!」

「そうですよ、ルナの言う通りですわ!」

「というわけで、ファイン君は私たちと一緒の部屋に行きましょう」

「えっ!? ちょっ……」


 ルナとセレーネは僕の腕を掴み、二人部屋へと連れて行った。


「……なあ、ファイン。オレ一人で部屋使ってもいいのか?」

「ああ、構わない」


 こうして僕は、ルナとセレーネと一緒に二人部屋で寝泊まりすることになった。

 二人部屋というだけあって、ベッドは二つ用意されていた。

 それにしても、女の子二人と一緒の部屋で寝るのは何だか落ち着かないな……。


「ファイン君、遠慮せず寛いでね!」

「ああ、ありがとう」


 ルナは、着ていた鎧を脱いだ。


「それでファイン君、私たちは今から温泉に入るけど……」

「えっ、温泉……!?」


 『温泉』という単語を聞いて、ドキッとする自分がいた。

 いやいや、僕は何を想像しているのだ。

 そんな僕を見て、ルナはきょとんと首をかしげた。


「? どうしたの?」

「いや、何でも。それじゃあ、僕は散歩にでも行こうかな……」

「そう。危ないから、遠くに行っちゃダメよ」

「わかってるって」

「それじゃ!」


 ルナとセレーネは部屋を出て行った。


■■■■■


 ルナとセレーネは脱衣所にて服を脱ぐと、いよいよ温泉に入った。

 ルナは服の上からでもわかるほど胸は大きいが、服を脱いだら当然その大きさは目立つ。

 一方、セレーネの胸はルナ程の大きさではないが、脱いだら脱いだで意外と大きい。


「ルナの胸は何でそんなに大きいのですか?」

「ん? うーん、よく食べて、よく寝ること、かな?」

「納得行きません。私だって睡眠時間は多く取っています! それなのに、私の胸は……あまり大きくありません」

「そ、そんなことないわよ!セレーネのおっぱいだって十分大きいと思うわ!」

「むー」


 ルナはセレーネを慰めるが、セレーネはふくれっ面をする。


「?」

 

 セレーネは突然ルナの後ろに回り込んだ。

 そして、後ろからルナの胸を鷲掴みにした。


「きゃっ!? ちょ、ちょっと!!」

「どうしてルナの胸はそんなに大きいのですか!! ズルですよ、ズル!!」

「ド、ドコ触ってるの!?」


 相手が同じ女の子とは言え、胸を揉まれて顔を真っ赤にするルナ。

 女湯でこんな出来事があったことを、ファインは知る由もなかった。 

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