第44話 フォースター王国に向けて
翌日。
僕たちは、いよいよフォースター王国に向けて出発する。
出発前に玉座の間にて、改めて公王に挨拶する。
「今回は色々とありがとうございました」
「はっはっはっ。礼を言いたいのはこちらのほうだよ。公国を救ってくれてありがとう」
「では、僕たちはこれで……」
「ああ。また公国に遊びにきておくれ」
「いずれまた」
僕たちは城を後にした。
「それで、これからの旅についてだが……」
「待ってくれ~!!」
外に出ると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
振り替えると、ヒューイが僕たちを追ってきていた。
「ヒューイ!? どうしんだ?」
「オレもお前たちの旅に連れていってくれ!」
「「えっ!?」」
「それはいいけど、どうして?」
「お前らの戦いぶりを見て、オレももっと強くなりたいんだ。公王様や、父ちゃん母ちゃんには許可を得てきた。頼む、オレを連れていってくれ!」
そう言うと、ヒューイは頭を下げた。
「ありがとう、ヒューイ。仲間は多いほうが旅は楽しくなる。是非とも来て欲しい」
「本当か!? ありがとう!! オレは魔法は使えないが、斧で戦うことができるぜ」
こうして、ヒューイが仲間になった。
「それでこれからの旅程だが、馬車がないので歩いて行くことになる」
「気になっていたんだけど、どうしてワープで移動しないの?」
ルナは純粋な疑問を投げかける。
「それなんだけど、ワープするにはワープする地形を正確に把握できないといけない。それに、誰かいると危ないので、どの道サーチができなければダメだ。したがって、ワープは一度行った場所でないと行けないんだ」
「そういうことだったのね」
「世の中、そう都合のいいことばかりじゃないのさ。さて、本題に戻すけど、ここからフォースターまで歩かなければならない。特に、後衛のセレーネは体力的に心配だから、こまめに休憩を取りながら進もうと思う」
「私なら大丈夫ですわ。こんなこともあろうかと、学園では自主的にトレーニングしていましたので。私だけの都合で、皆さんにご迷惑をおかけするわけには行きません」
「そうか。でも無理はしないでくれ」
僕たちは早速、出発することにした。
カグラ公国の南に位置する、フォースター王国は自然豊かな緑の国として有名だ。
僕たちは今度、そのフォースター王国の国王に信書を渡しに行く。
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オーシンの街を出ると、しばらくは平原の道を進む。
街を出てから数キロ進むと、森に入った。
僕たちは、その森の中をひたすら突き進む。
まだオーシンを出てから1時間と経っていないが、もうフォースター王国に着いたかと錯覚する。
しかし、こういう森の中は視界が悪く、いつモンスターに出くわしてもおかしくない。
僕は周囲をサーチしながら進んだ。
「ブラッディベアだ。全員、臨戦態勢に入れ!」
すると、木陰からブラッディベアが一体出てきた。
ブラッディベアはD級魔獣である。
そのため、熟練の冒険者なら苦戦はしないが、初心者にとっては危険な敵だ。
また、こいつは魔法や特殊攻撃こそ使わないが、身体能力が高く意外に素早い動きをするので注意が必要だ。
「ここはオレ様に任せな!」
ヒューイは前に出ると、持っていた斧を振り下ろした。
「おりゃあっ!!」
ヒューイは一撃でブラッディベアを倒した。
「すごい、ブラッディベアをたった一撃で……。ヒューイはやっぱり強いな」
「当たり前だろ? オレはいつも鍛えてんだからな! ブラッディベア程度はへでもないぜ!」
ヒューイは笑顔で自分の強さを自慢した。これは、今後の旅において非常に頼りになるな。
しばらく進むと、今度は三体のブラッディベアに遭遇した。
「ルナとヒューイは前衛、セレーネには後衛を任せる。僕はサポートに回る」
「ええ」
「おう!」
「お任せを」
僕が指示を出すと、各々ポジションに就いた。
「アイス・ジャベリン!」
まずはルナがブラッディベアAに、アイス・ジャベリン3発を放った。
超高速のアイス・ジャベリンは、ブラッディベアの心臓部を突き刺した。
ブラッディベアAは倒れた。
「おらぁっ!!」
次はヒューイが両手で斧を構え、ブラッディベアBを真っ二つにした。
最後に僕が剣でブラッディベアCの首を刎ねた。
これにて、ブラッディベアたちを殲滅した。
「やっとチーム戦らしくなってきたわね」
「そうだね」
その後も何度かモンスターを倒しながら、フォースターに向けて進んだ。
オーシンを出てから何時間か経過した。
僕は少し疲れを感じていたが、まだまだ歩ける。
ルナとヒューイも平気そうだ。
特にヒューイは体力自慢だけあって、余裕な表情である。
しかし、セレーネだけは辛そうな表情であった。
「セレーネ、顔色が良くないけど、大丈夫?」
「はい。私はまだまだ平気です」
そう言って、セレーネは笑顔を見せる。
しかし、セレーネは明らかに無理をしていた。
「少し休憩しようか」
「ですが……」
「無理をするな。フォースターまではまだまだ長いからな」
「はい……。皆さん、私のせいでご迷惑をおかけして申し訳ありません……」
「気にしないで!」
「そうだぜ。無理することないんだぜ!」
僕たちは少し休憩を挟むことにした。
それから、30分後に再び出発した。
その後も、こまめに休憩を取りつつ、ひたすら森の中を突き進んだ。