第43話 帝国騎士として
やっとカグラ公国編終わったー
そして、ようやく10万文字達成!!
重傷を重症と誤っていたので、修正しました。(10/17追記)
俺は今、帝国が奪取したローランド王国北部での防衛戦に参加している。
帝国に戻ってから、俺の部隊にもすぐに召集がかかった。
この戦線で帝国軍は王国軍に対して劣勢だったため、援軍として呼ばれたのだ。
そんな中、俺は敵の中にとある人物を見つけた。
俺は『そいつ』を追い詰めると、兜のフェイスガードを上げて顔を見せた。
「久しぶりだな、アッカス」
「なっ!? き、貴様は、ディオーラン!? バ、バカなッ、なぜ貴様が生きている!?」
「俺には【頑丈】のスキルがあってな。皮肉なもんだ、戦いとは無縁の家系に生まれたというのに……。なあアッカス、俺は今からお前の首を斬るんだが、許せ。戦争だから、悪く思うなよ」
「や、やめろ!! ボクが悪かった!! ゆ、許してくれッ!!」
「そうやって自分が窮地に陥ると、命乞いをするのか? 相変わらずクソ野郎だな、お前は」
「や、やめっ……!!」
俺は、躊躇いなくアッカスの首を刎ねた。
アッカスは死んだ。
だが、正直何の感情も沸かなかった。
憎んでいたはずの、自分をいじめていたヤツを殺しても、こんなものか。
すると、部下が何やら慌てた様子で、俺のもとへと駆けつけた。
「ディーン隊長! 我が軍の司令官【地のドロス】将軍が、敵の将軍アポロ・セラフィーによって討たれたとの報告が……!! このままでは戦線を維持できません!! 我が軍の敗北です!! ディーン隊長、ご命令を!!」
アポロ・セラフィー……ローランドの【白金騎士】か。
相変わらず凄まじい強さだな。
どうやら、彼を敵に回したのが間違いだったようだ。
「敵にこの地を奪還された以上、ここに居るメリットは何もない。これより、我が隊は速やかに撤退する。急げ、帝国に帰還するぞ!」
「はっ!」
俺は部下を率いて、速やかに帝国へ撤退した。
この地はローランドに奪還されてしまうが、背に腹は代えられぬ。
命があるだけマシと言えよう。
■■■■■
3年前……。
目が覚めたら、俺は知らない家で寝ていた。
そこには、見知らぬ年配の女性がいた。
「あら、目が覚めたのね?」
「うーん……」
「主人を呼んで来るから、そこで待っててね」
そう言って、女性は部屋を出て行った。
そして、しばらくするとガタイの良い老人がやって来た。
「目を覚ましたか、若者よ。お主、名前は?」
「俺の名は、ディー……ン……?」
あれ? 名前が思い出せない……。
俺の名前……何だっけ……?
それよりも、何で俺はここにいるんだ?
「そうか。ディーンと言うのか、お主の名は。ワシは、レオナルド・フォン・ガイウス。見ての通り、帝国の騎士だ。お主はローランドのとある森に倒れていた。そこをワシが見つけ、お主を帝国まで連れ帰ったという訳だ」
レオナルドと名乗る老人は、俺が森に倒れていたと言う。
だが、俺はそんなことを全く憶えていなかった。
「ところでお主、何ゆえにあのような森の中へ入った?」
「……憶えていません。それどころか、自分が誰で、どこの出身かも……」
「そうか、記憶喪失か。可哀想に……。しばらくはワシの家でゆっくりしてゆくがよい」
「ありがとうございます」
俺はレオナルド氏のご厚意に甘えることにした。
それから、俺はレオナルド将軍に剣の指導を受けることになった。
……なんだろう。
初めて剣を握るはずなのに、何だか懐かしい感じがする。
「ほう、なかなか剣筋があるな。お主、帝国軍に入らぬか?」
「え?」
「お主の力はきっと、帝国の民の為に役立つ日が来る。どうだ?」
「はい! 俺に何ができるかわかりませんが、拾ってくれたレオナルド将軍の役に少しでも立ちたいです!」
俺はレオナルド将軍の勧めで、帝国軍に入隊することにした。
ある日のこと。
とある村がドラゴンの襲撃を受けて、壊滅的な被害を受けているとのこと。
そこで、レオナルド将軍はその村へ救援に向かうと言う。
俺もレオナルド将軍の部下として、村の救援に向かうことになった。
今回の任務が、帝国兵としての俺の初任務だ。
レオナルド将軍は民の危機には、率先して救いの手を差し伸べる。
そのため、彼に対する民からの信頼は厚いそうだ。
早速村へ向かったのだが、時すでに遅し。
ドラゴンが吐いたと思われる炎に覆われ、村は壊滅的な被害を受けていた。
死傷者も大勢出ているらしい。
「何ということだ……!!」
その凄惨な光景を見て、レオナルド将軍は驚愕した。
「あ、ああああ……」
この光景を見た俺は、“あの時”の出来事がフラッシュバックした。
全て思い出した。
俺の名は、【ディオーラン・ブラスター】。
ローランド王国の平民出身の男だ。
俺はあの森で、アッカスどもに焼かれて瀕死の重傷を負ったのだった。
その瞬間、貴族たちの言葉が俺の頭の中を駆け巡った。
「お宅の息子が、うちの息子に暴行を働いたそうではないか? きちんと教育して欲しいものだね」
「わかったか。平民は貴族に逆らえないんだよ」
「父上の手前良くしてやってはいたが、本当はお前たちのことは良く思っていなかったんだよ。住まわせてもらえるだけありがたいと思え」
「ディオーラン! ボクはなぁ、お前が気にくわないんだよ!! お前はいつもいつも、ボクの『先』を行く。昔っからそんなお前のことが気に入らなかったんだよ、ディオーラン!!」
この瞬間、俺は全ての貴族を憎んだ。
俺をこんな目に合わせたローランドの貴族どもは、決して許さない。
「アッカス・ヴァカダノー……! ヤツだけは決して……!!」
俺は右手を強く握りしめた。
それから、俺は努力に努力を重ねた。