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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第41話 奪還作戦

 カグラ公国北西部の街【スウェル】にて。

 この街は約9ヶ月前、帝国軍に占領されている。

 街の住民たちは奴隷的扱いを受けている。

 帝国軍の侵攻により、街にある一部の家は破壊されてしまった。

 帝国軍は復興と称して、街の住民たちを強制的に労働させ、同時に略奪をも行っている。

 スウェルの街を、首都オーシンへの本格的侵略の足掛かりにしようとしているのだ。

 そしてカグラ公国掌握後は、ローランド王国ならびにフォースター王国への侵攻を本格的に始める予定だ。


「こら、ジジイ!! 勝手に休憩するんじゃない!!」

「か、勘弁してくだされ……。わしは年寄り故に足腰が悪いのです……」

「何弱音を吐いているのだ!! 貴様らに休息などない!!」

「ひい……!」


 老人は帝国兵から労働を強制される。

 中には病気の人もおり、すでに何人か過労死した人もいる。

 街の人々は、すでに希望を手放しかけていた。


■■■■■


 僕たちは、北西部の街【スウェル】の奪還作戦に参加することになった。

 スウェルというのは、スモルウェー湖の近くにあるという意味からその名を取っている。


 出発前日、作戦会議を行った。

 新団長・ロイドが中心になって話を進める。


「今回の奪還作戦の内容は、帝国兵たちを倒しスウェルの民たちを解放するというものだ」

「しかし十中八九、敵は街の市民を人質に取るでしょう」

「その通りだ。さて、どうしたものか……」

「そこで、僕たちが陽動で敵の動きを封じます。その隙に騎士団の皆さんは市民の安全確保を」

「陽動?そう簡単に行くものなのか?」

「大丈夫です。僕は攻撃魔法の他に、睡眠や麻痺など状態異常を起こす魔法が使えます。それに、僕にちょっとした考えがあります」

「そうか、わかった。ファイン殿を信じよう」


 すると、ヒューイがこんな発言をした。


「ロイド団長! オレもファインたちの陽動についていくぜ!少しでも人数は多い方がいいだろ?」

「うむ、そうだな。ファイン殿、それでよろしいか?」

「ありがたい限りです」

「ではヒューイ、頼んだぞ」


 そして、出発当日。

 僕たちは移動の為、カグラ公国軍が用意した馬車に乗った。

 スウェルの街までは、約1週間かかるという。

 そして、作戦会議でヒューイも僕たちと一緒に陽動に出ると言った。

 そのため、同じ馬車にはヒューイも含めた4人で乗っている。


「そういえば、ファインたちの荷物は少ないが、大丈夫か?」

「心配ない。このマジックバッグあれば、生物以外は理論上何でも収納できるんだ」

「おおーっ、すげー!! 小さなカバンから、色んなアイテムが!! マジックバッグなんて、初めて見たぜ!!」


 僕はマジックバッグから、いくつかアイテムを取り出してみせた。

 ヒューイはマジックバッグを見て、まるで子供のようにはしゃいだ。

 大柄で強面な風貌とは裏腹に、無邪気で少し可愛らしい一面もあるようだ。


「ヒューイ! 遊びに行くわけじゃないんだぞ! 気を引き締めろ!」

「そう堅いこと言うなよ~」


 ヒューイは馬車を操る御者に怒られた。

 御者といっても、公国軍所属の騎士だが。


 オーシンを出発してから約1週間が経過した。

 僕たちはスウェル近傍に到着した。

 小高い丘から、スモルウェー湖の畔に小さな街が一望できる。

 また、街の中には一際大きな建物があるが、騎士団の詰所だという。


「では当初の予定通り、僕たちは先行して陽動をかけます」

「うむ、頼んだぞ」

「皆さんは、5分後に街の入り口に待機。合図があったら突入し、詰所の帝国兵を制圧してください」

「了解した」


 僕たちは慎重に街の入り口へと近づいた。

 木陰から様子を伺った。

 すると、門には二人の見張りが立っているのが見えた。


 【睡眠(スリープ)】。


 僕は心の中で魔法を念じると、二人の見張りは眠った。


「おおっ、すげー。敵を一瞬で眠らせたぜ!」

「シーッ、静かに! さて、これから街に突入して陽動をかけるのだが……」

「ようするに、突っ込んで行って敵をなぎ倒せばいいんだろ?」

「だめよ。市民を危険に晒すことになるじゃない。それに敵が来たと分かれば、帝国は市民を人質にするわ」

「市民の皆様に危害を加えたら、本末転倒ですわ」

「あっ、そっか……」


 ヒューイは、自分の考えを女性陣に厳しく指摘される。

 ここは『あの手』で行こうと思っている。


「そこでまず初めに、【ステルス】の魔法を自分たちにかける。こうすれば敵に姿を視認されなくなる。ただし、味方同士では姿が見えるようにしておく。その方が連携は取りやすいだろう」

「そいつはスゲーや。これなら好きなだけ暴れられるぜ!」

「あ、ああ。ただし、姿は見えなくても音だけは消せないから、なるべく足音を立てず慎重に行動するんだ」

「おう」


 僕はステルスの魔法をかけた。


「では、5秒後に街に侵入する。ルナとヒューイは前衛。侵入したら、散開しろ」

「ええ」

「おう!」

「セレーネはルナに同行し、傷ついた市民たちを回復してくれ」

「わかりました」

「僕は魔法で後方から援護する。……行くぞ」


 僕たちはスウェルに入った。


「おらぁ、働け!!」

「ひいっ……!」


 スウェルでは、民が帝国兵に虐げられている。

 ルナが背後から敵を倒す。


「がはっ……」


 その後も、ルナとヒューイは次々と敵兵を倒していく。

 僕は遠距離から、水属性中級魔法【氷の矢(アイス・アロー)】で敵を攻撃する。

 なぜ氷魔法なのかと言うと、市民を巻き込むリスクが比較的少ないからだ。

 火魔法では火災の危険があるし、雷魔法では市民への感電の危険だってある。

 一方で、氷魔法は攻撃範囲が狭い。そう言った理由で氷魔法を使った。

 姿の見えない僕たちに、帝国兵たちは成す術もなく倒れていく。


「て、敵襲!!」


 この状況を見た帝国兵の一人が叫ぶ。


「どこだ!? どこにも敵は見当たらないぞ!?」

「さっき仲間が倒れるのを見たんだ。氷の魔法も見えた。間違いなくい……ぐっ」

「お、おいっ!? グアッ……」


 しかし、叫んだところで帝国兵は成す術もない。

 セレーネは傷ついた市民たちを回復する。

 そろそろ頃合いだな。

 僕は空に向かって、合図となる火球を何発か撃ち出した。


「な、なんだ!?」

「た、大変だ!! 南から、公国の騎士共が……!!」


 合図の直後、公国軍騎士団がスウェルに突入してきた。


「ぐわああああああっ!!」


 公国軍はあっという間に帝国兵たちを倒し、詰所へ突入して行った。


 すると、詰所の裏から何人かの帝国騎士が馬に乗って逃げて行くのが見えた。

 そのうちの一人が、『ディーン』と呼ばれていたあの黒い鎧兜の騎士だった。


「アイツは、あの時の……!」


 黒騎士はスウェルを出ると、一人だけ騎士の集団から外れた。

 そして、森の中へと入った。

 僕もその騎士を追って森の中へ入った。


「待て!!」


 森に入ってしばらく進むと、黒騎士は立ち止まった。

 すると、黒騎士は突然兜を脱いだ。


「なっ!? ディオーラン!?」

「久しぶりだな、ファイン」


 その正体はなんと、死んだはずのディオーランだった。

 ディオーランは笑みを浮かべた。

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