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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第40話 解放の時

 僕たちが牢屋に閉じ込められて数十分の時が経った。

 上が騒がしいな。一体、どうしたのだろうか。

 見張りの兵士はすでにいない。


 聞こえる限りでは、外で帝国軍が攻めてきたらしい。

 そのために、兵を向かわせているようだ。


「ねえ、外が騒がしいわ。誰かー!! 誰か来てーっ!!」


 ルナが必死に叫んだ。

 しかし、帝国兵だと思われている以上、助けは来ないだろう。

 そう思った矢先だった。

 階段を駆け降りる足音が聴こえてきた。

 そこに現れたのは、あの人物だった。


「ヒューイ!?」

「ファイン!? どうしてお前らがこんなところに!?」

「あのムノーとかいう人物に、帝国兵だと勘違いされて捕らえられてしまったんだ」

「ムノー団長が? いや、そんなことより、助ける方が先だな。ふんっ! ぬおおおおおおおっ!!」


 ヒューイは鉄格子を両手で掴むと、あっという間に扉を破壊してしまった。


「すごい力だ……」

「オレ、獣人族とのハーフだからな。バカだけど体力だけは自信あるんだ」

「ありがとう、ヒューイ。ところで上が騒がしいが、帝国軍が攻めてきたのか?」

「そうみたいなんだ。だが公国軍は劣勢らしく、オレも援軍として呼ばれたところなんだ」

「僕たちも協力するよ。ムノーって人は許せないが、帝国はもっと許せない」

「本当か!? すまない、恩に着るぜ」


 僕たちは、城の外に出た。

 街に出ると、戦闘が繰り広げられていた。

 だが、ヒューイの話どおり公国軍は帝国軍に押されていた。


「くっ! 怯むな!! 公国の力を見せてやれ!!」


 団長のムノーが騎士たちを鼓舞する。

 しかし、現状は何も変わらなかった。

 ここは僕がなんとかするしかない。

 とはいえ、チマチマ敵を倒していても面倒だし、現状を打破するにはアレしかない。


「公国軍の方々は下がってください!! 敵を一掃します!! 出でよ、ウンディーネ!」


 そう言うと、僕は公国軍の前に出た。

 そして、水の精霊【ウンディーネ】を召喚した。


「偉大なる大波よ、万物を飲み込み無に還せ! 【ビッグウェーブ】!」

「な、なんだ、あれは!?」

「バカなッ!? 何もない所から大波がッ!!」


 頭に浮かんだ技名を叫ぶと、大波が発生した。

 狼狽える帝国軍の騎士たちは成す術もなく、次々と大波に飲み込まれていった。


「「「ぐわああああああ!!」」」


 ついさっきまで優勢だった帝国軍は、嘘みたいに壊滅的状況となった。

 尚、街に被害を与えないように威力は抑えた。


「馬鹿な……!? こんなことが……」

「ディーン隊長! 今の攻撃で、我が軍は壊滅的です!! 戦闘継続は不可能かと……!!」

「チッ、撤退する!!」


 隊長を含め、生存した帝国兵たちは撤退した。

 去り際、ディーンと呼ばれた黒い鎧兜に身を包んだ敵の隊長が兜のフェイスガードを上げた。


「あれは……まさか……!?」


 その顔には、見覚えがあった。

 死んだはずの【ディオーラン】に良く似ていた……気がした。

 いや、きっと気のせいだろう。

 敵の中にディオーランがいるはずもない。


「どうしたの? ファイン君」

「いや、何でもない」

「そう」

「皆様、今から魔法で回復して差し上げます。出でよ、ウンディーネ。降り注げ、【ヒールレイン】」


 セレーネがウンディーネを呼び寄せた。

 降り注ぐ雨が、傷ついた公国軍の兵士たちを癒す。


「み、見ろ……。俺たちの傷が回復しているぞ……。ありがとう……!」


 兵士たちからは感動の言葉が聴こえた。

 すると、僕たちのもとにムノーがやってきた。


「貴様たち、帝国軍のくせに何故我々を助けた?」

「まだわからないのか? こいつらは帝国軍じゃない!!」

「ヒューイ、貴様!! 誰に向かって口を利いているのだ!!」


 ヒューイが僕たちを擁護してくれた。


「彼の言う通りです。何度も言いますように、僕たちは帝国の人間ではありません」

「な、何を……」

「とりあえず、報告もありますので、公王様のもとに連れて行っていただけますか」

「ぬう……。わ、わかった」


■■■■■


 その後、僕たちは公王のもとへ謁見することになった。

 玉座の間にて。


「この度は、街を守ってくれてありがとう。貴殿らの活躍がなければ、今頃公国は帝国の手に落ちていただろう」

「礼には及びません。帝国に危害を加えられるのは、見ていられませんでしたから」


 公王には首都を救ったことを感謝された。

 ところが、ムノーが面白くなさそうに話に首を突っ込んできた。


「陛下! こやつらはやはり、帝国の手先なのでは? 味方のフリををして、急に襲いかかる可能性も……」

「黙れ、ムノー!! まだ分からないのか? 彼らは公国を助けてくれたのだぞ! 帝国軍なはずがなかろうが!! 貴様は、公国を救ってくれた救世主にそんな口を利くのか? この無礼者めっ!!」

「くっ……!」


 僕たちを未だに帝国の手先だと思い込んでいるムノーに対し、公王は厳しく叱り付ける。


「ところで若者よ、まだ貴殿の名を聞いていなかったな」

「はい。私はファイン・セヴェンスと申します」

「ファイン殿、この度は我が軍の騎士が大変無礼を働いたようだ。本当に申し訳ない」

「いえいえ、お気になさらず。ところで、私はローランド王国より国王の命により、カイム公王陛下宛てに国王ゼフィール直筆の『信書』をお渡しに参りました」


 僕は懐から例の信書を出し、公王に渡した。

 公王は信書を受け取ると、静かに読み始めた。


「……なるほど。つまり、ローランド王国はカグラ公国と同盟を結びたいと言うことだな?」

「はい。帝国の脅威に立ち向かうには、それしかないと」

「よかろう。カグラ公国はこれより貴国と同盟を結ぼう」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 公王は快く、同盟を結ぶことを引き受けてくれた。

 これは非常に心強い。

 すると、ムノーは再び口を挟んできた。


「しかし、陛下! 突如現れたよそ者の言うことなど……」

「ムノー、貴様は今日付けで騎士団長の任を解く! 貴様に団長職は相応しくない!」

「なっ!?」


 ムノーに対し、公王は突然非情な現実を突き付ける。


「ロイド、ムノーに代わってお前が騎士団の指揮を執るのだ。良いな?」

「はっ、お任せを!」

「陛下、なぜ……!?」

「ムノー……二度は言わん。これ以上、わしに恥をかかせるでない」


 ムノーは騎士団長をクビにされた。

 だが、僕たちを帝国軍だと決めつけた、当然の報いだろう。

 僕は内心いい気味だなと思った。


「さて、ファイン殿。突然で申し訳ないが、帝国に占領された公国北西部の街を奪還することに協力してはくれんか? 他国の人間にこのようなことを頼むのは申し訳ないと思っているが、我が軍は如何せん兵力が不足している。そこで、首都を守る活躍を見せた君たちに是非協力して欲しいと思っておる! 君たちに頼むのは他でもない!」


 公王は、北西部の街を帝国の手から解放して欲しいと言う。

 僕は戦争とは無縁な人々が巻き込まれるのを、これ以上見過ごすことはできなかった。


「わかりました。同盟を組んでいただいた以上、協力させていただきます。これ以上、戦争とは無関係な民たちが帝国に危害を加えられるのを、見てはいられませんから」

「本当か!? 感謝する! 奪還作戦が成功した暁には、報酬を出そう」


 僕たちが奪還作戦に協力することに、公王は大変喜んだ。

 これから先、僕たちは帝国と本格的に戦うことになるだろう。

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