第39話 帝国の侵略
翌日、僕たちは公王に信書を渡すために城へ向かった。
城門前には、二人の兵士が立っていた。
「何だ、貴様たちは?」
「僕たちはローランド王国からの冒険者で、国王より公王様宛の信書を持って参りました」
「信書だと?」
城の中から、騎士の格好をしたやや太り気味な男が出て来た。
「どうした?」
「はっ、ムノー団長。この者たちが……」
ムノーと呼ばれた騎士が、兵士の話を最後まで聞かず、とんでもないことを言い出した。
「ムッ!? 貴様たちはもしや、帝国の手の者か!?」
「ち、違いますよ!」
「とぼけるな!! その武装した格好は、紛れもなく貴様たちは帝国の兵士だな!? わざわざ少人数で攻めてくるとは、愚かだな!」
「だから、帝国兵じゃないわよ!」
「こやつらを捕らえよ!! 捕らえて牢屋へ連れて行け!!」
団長の合図で、城の中から続々と兵士たちが出て来た。
僕たちは帝国の兵士だと勘違いされ、捕らえられてしまった……。
そして、地下の牢屋に閉じ込められた。
「ここから出してよ~!」
「大人しくしてろ!」
ルナが鉄格子を掴み、出して欲しいと言う。
しかし、兵士が聞いてくれるわけがない。
すると、セレーネが不安そうに訊いてきた。
「これからどうしますか?」
「しばらくはここで大人しくしていようと思う。……いざとなれば、ワープで脱出することも可能だ」
僕がそう言うと、ルナが小声で質問してきた。
「それなら、どうしてすぐに脱出しないの?」
「いきなり牢屋から脱出したら、怪しまれるでしょう? ここは事態が動くのを待ったほうが良い。ファイン様はそうお考えなのですよね?」
「そういうことだ」
セレーネが僕の考えを要約してくれた。
こんな状況で言うのも変だが、頼りになる仲間を持ったものだ。
とはいえ、どうしたものか。
まあ、もし最悪の事態が起きた場合は、ワープで脱出するしかないが。
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カグラ公国軍の騎士団長【ムノー】は報告のために、公王・カイムのもとへやって来た。
「陛下、帝国の兵士たちを捕らえました」
「なに!? それは誠か!?」
「はっ。少人数で攻めて来たところを捕らえました。たった3人で来るとは愚かなものです」
「うむ、でかしたぞ。下がれ」
「ハッ!」
(クックックッ、これで私も出世できるぞ!)
ファイン達を捕らえたことにより、ムノーは内心大喜びしていた。
しかし、ムノーのその考えは甘いものだった。
すると、一人の兵士が、慌てた様子で駆けつけた。
「ムノー団長! 大変です!!」
「どうした?」
「帝国軍が街に侵略して来ました!!」
「なにッ!? どういうことだ!? まさか、捕らえた奴らは囮だったのか!?」
「わかりませんが、その可能性は大いにあるかと……!」
「公王様を直ちに安全な場所へ!」
「はっ!」
ムノーは数名の兵士を連れて街道に出た。
すると、そこには馬に乗った帝国騎兵が大勢いた。
騎兵たちはそれぞれ、剣や槍などの武器を構えていた。
尚、公国軍はすでに市民を安全な場所へ避難させている。
「バカな!? 何故こんなに帝国の兵が!?」
「私は、帝国軍小隊長・ディーンである! これより、首都オーシンは帝国軍の制圧下に置く!」
帝国軍の隊長が話かけて来た。
頭には兜を被っており、顔は見えない。
「な、なんだと!? やはり、先程捕らえた者たちは貴様たちの仲間で、街への侵入を容易にするための囮だったのか!?」
「何のことだ? さっぱりわからないな。……まあいい。大人しく帝国軍に従えば、市民の安全は保障する。ただし、従わなければ……」
「我々がそのようなことを許すとでも思うか? カグラ公国軍は貴様ら帝国には屈しない!」
「……そうか、ならば仕方がない。力ずくで制圧させてもらう!!」
公国軍と帝国軍の戦闘が始まった。
だが、帝国軍の戦力は圧倒的で、公国軍は次第に劣勢に陥る。
「バカな!? 帝国の力がこれ程とはッ……!!」
帝国軍の前に、公国軍の兵たちは次々と倒されていった。