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第3話 ファインの旅立ち

 野盗を撃退したことで、村はお祝いムードになっていた。

 そんな村長たちに、僕は言った。


「みんなに言いたいことがあるんだ」

「なんじゃ? 改まって」

「実は僕、王都の学園に入学しようと思っているんだ」

「なんじゃと!?」


 村長たちは驚いていた。


「僕は王都の学園に行って、もっと世界のことを勉強したいんだ」

「だが、ファインがいなくなったら、誰がこの村を守るんだ?」

「ファインが守ってくれなきゃ、今度こそこの村はおしまいだ……」

「そうですぜ、ファインの兄貴! 兄貴には村のみんなを守ってほしいんです!」


 村人たちが反対的な意見を述べていた。

 村長が言った。


「お前たちの言いたいことはわかる。だが……」

「行かせてやんなさい」


 すると、おばあさんの声が聴こえた。


「婆さん!?」

「行かせてやんなさい。ファインもずっとこんな田舎に居たら、退屈だろう? アンタには世界のことを知る権利がある。だから村のことは私たちに任せておくれ」

「……そうだな。婆さんの言う通りだ! ファインに頼ってばかりじゃいられねぇ。俺たちの村は、俺たちで守らないとな!」

「そうだ、そうだ!」

「兄貴! オレたち、兄貴の分まで頑張りやすぜ!」


 村人たちは奮起して村を守ろうと決意していた。


「ありがとう、みんな。実はもう一つみんなに伝えておきたいことがあるんだ」


 僕は“ある物”を取り出した。

 

「何じゃ? その宝石みたいな物は……」

「これは【結界石】と言って、さっき僕が完成させたんだ。本当は今日起動する予定だったんだけど、野盗の襲撃に間に合わなかった」

「それで、その結界石の役割というのは、まさか……」

「大体予想はついてると思うけど、これは村を覆う結界を張る“魔道具”なんだ」

「「「な、なんだってー!?」」」


 村のみんなは驚いていた。


「これがあれば、今回みたいな野盗はもちろん、モンスターの侵入をも防ぐことができる。ただし、この村の人たちであれば自由に出入りができる。それから、結界石に触れれば、結界の展開や解除は自由にできる」

「兄貴……前から思ってたけど、兄貴ってやっぱ規格外(チート)ですよね!」

「そうか?そんなことないと思うけど……」


 ジャンは僕のことを規格外(チート)呼ばわりしていた。

 すると、今度はネオが口を開いた。


「っていうか兄貴……、そういえば今朝呑気に剣の素振りしてましたよね?」

「あ……」

「あの時兄貴がその魔道具で、さっさと結界を張ってくれれば野盗どもに村を襲われずに済んだのでは??」

「それは……」

「まあまあ、いいじゃないか! 結果的にファインが野盗たちを撃退してくれたのだから!!」


 村長が僕を擁護してくれた。村長ナイス。

 そして、おばあさんは改めて言った。


「さあ、行きなさいファイン。いつも薬草届けてくれてありがとう。私はお前のことを孫だと思っているからね」

「わしも同感じゃ。血の繋がりはなくとも、お前はわしらの自慢の“孫”じゃ!」

「ありがとう。おばあさん、村長。それじゃあみんな、行ってきます!」

「達者でな、ファイン! そして、いつか必ず帰ってくるのじゃぞ!」

「うん!」


 僕は村長たちに見送られ、旅立って行った。『世界』への第一歩である。


■■■■■


 僕は今、王都エストの街に到着した。

 本来なら1週間かかるところだが、転移(ワープ)したのですぐ着いた。

 【転移(ワープ)】とは、空間魔法の一種である。

 基本は瞬間移動(テレポート)と同じだが、より遠くまで行くことができる。

 ただし、自分の視界外へ瞬間移動する都合上、移動先の地形や気配を正確に把握する必要がある。

 また、消費精神力も多いので、多用するのには向いていない。


「相変わらず王都は賑わっているな。村とは比べ物にならないな」


 実は何度か王都に訪れたが、イナ村とは人口も街の規模も比較にならないほど大きい。

 数か月ぶりの王都なので、どこに何があるのかよく憶えていない。

 それよりも、今夜泊まる宿を探さなくてはな。今は手持ちが少ないので、できる限り宿泊費のかからない宿を見つけなくては。


「お嬢ちゃん、俺らと遊ぼうぜ?」

「ごめんなさい。困ります……」

「そう堅いこと言うなよ~、悪いようにはしないからさあ!」


 しばらく歩いていると、2人組のチンピラらしき男たちが女の子に執拗に絡んでいた。

 僕はチンピラたちに近づいて話しかけた。


「その辺でやめないか? 彼女が困っている」

「ああ!? なんだお前は?」

「その子から離れろと言っている」

「テメー、調子に乗るんじゃねぇ!!」


 そう言うと、チンピラたちはいきなり殴りかかってきた。

 しかし、僕は彼らをあっさりと蹴散らした。


「クッソー、覚えてろよー!!」


 チンピラたちは捨て台詞を吐いて去っていった。

 

 僕は女の子のほうを向いた。

 その女の子の容姿は、チョコレートのような色の茶髪を背中までかかるほど伸ばしており、透明感のある色白の肌、そしてまるで宝石のような大きなブルーの瞳をしていた。

 そして、声は澄んでいて綺麗だった。

 身長は推定160cm以上で、発育が良く健康的な体つきをしていた。

 年齢は15~16歳くらいで、僕とそう変わりないように見える。

 服装は白色のドレスで、スカートは膝丈くらいである。また、ドレスは胸元を強調するデザインをしている。

 髪には、天使の羽のような髪飾りを着けていた。

 おっと、僕としたことが。美少女に(うつつ)を抜かしている場合ではないな。

 僕は女の子に話しかけた。


「お怪我はありませんか?」

「ありがとう。あなたって強いのね。おかげで助かったわ!」

「それでは、僕はこれで……」


 僕は立ち去ろうとしたが、女の子に引き留められた。


「待って! 何かお礼をさせて欲しいの」

「お気になさらずに。僕が勝手にやったことですので」

「それでは私の気が収まらないの! ねえ、お願い! 何でもいいから、お礼をさせて。私もキミの役に立ちたいの!」


 そういわれてもなぁ……、本当に僕が勝手にやったことだし、お礼をしてもらうって程でもないんだよな……。

 しかし、女の子のほうも簡単に引き下がってくれそうにない。さて、どうしたものか。

 そうだ、一つだけして欲しいことがあったのを思い出した。


「それじゃあ、この街の格安で泊まれる宿を紹介していただけますか? 今、手持ちが少なくて……」

「お安い御用よ! 私について来て!」


 僕は女の子に格安の宿を紹介してもらうことになった。


「キミはどこから来たの? この街じゃ見ない顔よね」

「南の小さな村から来ました」

「へぇ、そうなんだ。随分遠くから来たのね。どうしてこの街に来たの?」

「明日、王都の学園に入学しようと思いまして」

「そうなのね! 実は私、アドヴァンスド学園の中等部所属なんだけど、明日私も高等部の入学試験を受けるの。もし会ったらよろしくね! ところで、私の名前は……」


 僕は、明朗闊達なこの女の子とお互いに自己紹介しあった。

 しかし、僕は生来の記憶力の悪さが災いし、この女の子の名前を速攻で忘れてしまった。

 ちなみに、なんとか公爵家の娘だと言っていた。

 どおりで、王都のことに詳しい訳だ。


「……そうなんだ、キミはファイン君って言うんだね! 私とは同い年だし、タメ口で話していいよ!」


 なんと、この女の子は貴族でありながら、田舎者の僕に対して分け隔てなく接してくれた。


「あっ、ここよ!」

「どうもありがとうございます」

「それじゃあ、また明日、学園でね! おやすみなさい」


 僕は案内された宿に着いた。

 女の子は笑顔で手を振って帰っていった。

 部屋は広くはなかったが、ベッドがきちんと用意されていて、朝まで寛ぐことができた。


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