第38話 新たなる出会い
僕たちは目的地である、カグラ公国の首都オーシンに到着した。
時間は既に夕方で、入国審査を受ける人たちで長蛇の列ができていた。
「【星の英雄たち】……、冒険者の方々ですね」
到着してから1時間後、ようやく入国審査を終えることができた。
その頃には、とっくに日は沈んでいた。
エノウ大陸の中央には、広大な湖【スモルウェー湖】がある。
その湖の南西にカグラ公国は位置する。
カグラ公国は様々な文化が交わる国で、ローランド王国では見ないようなものまである。
ゼフィール陛下はカグラ公国に協力を要請しようと考えており、僕たちから公王に信書を渡すように命令した。
「ファイン君、信書を渡すのは明日でいいんじゃない? 私、疲れたしお腹空いたよ」
「そうだな。君の言う通り、明日公王に信書を渡すことにしよう」
先程の工作兵との戦闘で、僕たちは疲労が溜まっていた。
時間は既に夜だったため、仲間と相談してディナーを食べることにした。
まずは、店を探すところから始める。
「なあ、あんたら。ここじゃ見ない顔だが、旅人かい?」
すると、後ろから男性に声をかけられた。
外見は長身で、身長は190cmはありそうだ。
全身が筋肉で引き締まっており、質実剛健という言葉が似合う。
赤髪と赤目が特徴的で、年は僕たちと近いように見える。
また、軽めの鎧を身に纏い、背中には斧を背負っている。
どうやら、男は戦士か冒険者のようだ。
強面だが気さくな笑顔で接してくれているので、悪い人ではなさそうだ。
「ええ、そうです。僕たちは【星の英雄たち】という冒険者です。僕はリーダーのファイン・セヴェンスです」
「ルナ・セラフィーです」
「セレーネ・ホープと申します」
「おっと、自己紹介が遅れたな。オレはヒューイ・サウスリー。見ての通り【戦士】だ」
男は親指を自分に向け、ヒューイと名乗った。
「よろしく、ヒューイさん」
「【ヒューイ】でいいぜ。見たところ、お前らとオレは年も近いようだしな。それで、何か困りごとかい?」
「ディナーを食べようと思っているのだが、どこかいい店を知っているかい?」
「おう、それならお安い御用だぜ。オレも丁度メシにしようと思ってたんだ。ついて来な!」
僕たちは、ヒューイについて行くことにした。
「着いたぜ。ここだ」
歩いているとすぐ店に到着した。
看板には【やよい】と書かれていた。
何というか……渋いお店だな。
中に入ると、外観同様に店内も渋い雰囲気だった。
僕たち4人は、空いているテーブル席に腰かけた。
メニュー表を見ると、ロースかつ定食やスシなど見たこともない料理ばかりだった。
「ローランドでは見ないような料理ばかりだな。カグラ公国の料理はこういうのが多いのか?」
「まあな。【和食】っていうんだ。他には、ローランドとかでも見るような料理が出される店もあるぜ」
「私はお寿司にするわ。私、お寿司が大好きなのよね!」
「では、私もお寿司にします」
ルナはメニュー表を見て、すぐにスシに決めた。
セレーネもルナと同じスシにした。
「このロースかつ定食というのは何だ?」
「豚肉に衣をまぶして、油で揚げた物よ」
「じゃあ、僕はロースかつ定食で」
「オレはカツ丼にするぜ。オレ様の大好物だぜ!」
注文してから数十分後、料理がテーブルに届いた。
僕はロースかつを食べた。
衣はサクサクで、肉も柔らかい。
また、思いのほか肉の味も濃厚で美味しい。
野菜は新鮮で瑞々しく、味噌汁も温かい。
「……そうか。ファインたちは公王様に信書を……」
「ああ。ローランド王国とカグラ公国で協力して、帝国に立ち向かおうという考えだ」
「なるほど、つまり同盟を組もうってわけか。その使者にお前らが選ばれたってことだな」
「そういうことだ」
「そう言えば、公国北西部の街が帝国に占領されてな。街の住民たちは奴隷的扱いを受けているらしい」
「酷いな」
「ああ。近々奪還作戦が計画されているんだが、その作戦にオレも参加する予定なんだ」
「若いのに、大変なんだな」
「心配ないぜ。父ちゃんに鍛えられてるから、腕っぷしには自信があるぜ!」
しばらくヒューイと談話した後、僕たちは代金を支払い退店した。
「今日はありがとう、ヒューイ」
「気にすんなよ。困ったときはお互い様だ。じゃ、また会おうぜ、ファイン!」
「ありがとう!」
「ありがとうございました」
それから、僕たちはヒューイと別れ、今日泊まる宿に向かった。