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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第2章 世界への旅立ち
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第37話 車内での戦い

 僕は剣を抜き、刺客に質問する。


「お前たちは帝国軍の工作兵だな? 何故こんなことをする?」

「ふん、貴様らに答えてやる義理などないわッ!」


 刺客は短剣で攻撃してきた。

 列車内は狭いので、僕は刺突で攻撃する。

 相手も手練れなのか、攻撃をかわす。


 結界を張って乗客の安全を確保しているとはいえ、狭い列車内なので決着は早めに付けたい。


「グハッ!!」

「おのれ……!!」


 ルナは隙を見て、魔法使いの男を蹴り倒した。

 残った刺客は再び僕に向かって攻撃してきた。

 僕は躱して反撃するも、刺客に攻撃を避けられてしまう。

 このままでは埒が明かないので、ヤツの隙を突く作戦を取る。

 僕は刺客に対し、剣を構えるのをやめてわざと隙を見せた。


「もらったァー!!」


 刺客は素早く僕に肉薄する。

 しかし、刺客の動きは突如止まる。


「なにィー!? 身動きが取れないだと!?」


 シートの下からは蔦が伸びていた。

 そう、【生命創成(ライフクリエイト)】である。

 ついでに、魔法使いも刺客と一緒に拘束しておいた。


「フン、この程度で私たちを拘束したつもりか!? 残念だが、このまま撤退させてもらう! 【転移(ワープ)】!」


 魔法使いが魔法名を叫ぶ。しかし、魔法は発動しなかった。


「どうしたッ!? 何故ワープできないッ!?」

「残念だったな。実はさっき隙を見て、【魔封じ(ディスペル)】を使わせてもらった。したがって、お前たちは一切魔法を使うことはできない」

「ナ、ナニィ!?」

「だ、だが、もうじき我々が仕掛けた『魔導爆弾』が爆発する! そうなれば貴様たちも終わりだな!」

「な、なんですって!?」

「そ、そんな……!!」

「……」


 工作兵は高らかに勝利宣言する。

 ルナとセレーネは焦りの表情を見せる。


「魔導爆弾っていうのは、これのことか?」

「!?」


 僕はその魔導爆弾とやらを魔法鞄から出して見せる。

 工作兵たちは驚愕の表情を露わにする。


「き、貴様、一体どうやって見つけた!?」

「数十分前、車内を歩いていたら乗客が全員眠っていたので、不審に思った。もしかしたら、と思い探知したら、案の定先頭車の座席下に仕掛けられていたよ。そしてこの先にはカグラ公国との国境『レビア大河』がある。もし爆破するとしたら、そこだろう?」

「フン、見つけたことだけは褒めてやる。だが、あと数分で爆発する! そうなれば、乗客もろとも貴様らは終わりだな!!」

「それなら、魔法構造を解析して爆発しないように事前に解除しておいた」

「な、なんだとッ!? そう言えば、先程強烈な眠気を感じた。あれはまさか、貴様の仕業だったのか!?」

「フッ。そうだ、僕がお前たちを魔法で眠らせた【犯人】さ……!」


 そう言って僕は不敵な笑みを浮かべる。

 これでは、最早どちらが悪役かわからないな。

 そして、僕は続けざまに言う。


「その隙に魔導具を見つけ、解除しておいたのだ。さて、あとはお前の身柄をカグラ公国の軍隊に渡すとしようか」


 僕がそう言った直後のことだった。

 工作兵から青白い光が発生する。


「!?」

「念のため持っておいて正解だったよ……」

「まさか……、それは【転移石】……!?」

「クックックッ、そうだ。まさか、魔導具を解除されるとは思いもよらなかったぞ。だが、我々はこのまま撤退させてもらう!」

「待てッ!!」


 工作兵たちはそのまま光と共に消え去ってしまった。


「チッ!逃げられたか……」

「でも、乗員乗客の安全は確保できたし、良かったじゃない?」

「そうだな」

「それにしても、帝国はなぜ列車を爆破し、無関係な市民たちを巻き込むのかしら?」

「ローランド王国が列車を爆破したことにし、ローランド王国とカグラ公国に戦争を招こうとしたのだろう。そして、両国が疲弊した隙に帝国が首都に攻め込んで来るつもりだったのだろう」

「そんなの卑怯じゃない! 許せないわ!」


 温厚なルナが珍しく怒りを露わにする。

 ルナが続けざまに質問してきた。


「そう言えば、ファイン君はどうして睡眠の魔法が効かなかったの?」

「ああ、それは睡眠無効の腕輪を装備していたからだよ。っていうか、ルナだって睡眠無効だったじゃないか」

「私ね、【状態異常無効】のスキルを持っているの」

「なんだって……!? 状態異常無効って、レアスキルじゃないか! そんな物を持っている人間、そうそういないぞ」


 ルナはえへへ、と笑った。


 道理で、学園闘技祭の時に麻痺罠(トラップ)が効かなかった訳だ。

 ところで、睡眠無効のルナがなぜ眠ったのかと言うと、列車の揺れか何かで眠気を誘われたからだろう。

 それから弾丸列車(ブレットトレイン)は、川幅が最大10キロメートルにもなる『レビア大河』を渡った。

 そして、無事カグラ公国に到着した。


■■■■■


 グランヴァル帝国の城にて。

 弾丸列車(ブレットトレイン)から工作兵たちが帰還してきた。


「申し訳ございません、ジェノス将軍。列車に仕掛けた魔導爆弾が、とある男の手によって解除されてしまいました。奴はおそらく王国軍の手の者です。奴は只者ではありません!」


 工作兵たちの前には、目つきが鋭く長い金髪の男が佇んでいた。

 その名は【天のジェノス】。六大帝将の一人である。

 フルネームはジェノス・ファーブニルという。

 ジェノスは飛竜を駆る竜騎士で、槍を得意武器とする。

 その性格は好戦的かつ非常に残忍で、占領した敵国の民を平気で殺し、財宝を奪うことに何の躊躇いもない男だ。

 事実、18年前の王帝戦争の際にローランド王国の民を殺し略奪を働いたことから、傭兵騎士団に左遷された経緯を持つ。

 しかし、騎士としての実力は確かなもので、今回の各国侵略に当たって正規騎士として呼び戻された。

 そして、皇帝直々に六大帝将【天】の地位を授かった。


 天のジェノスは、無慈悲にも魔法使いの男を刺し殺した。


「ガハッ……!」


 残った工作兵はジェノスに命乞いをする。


「お、お許しください、ジェノス将軍! わ、私はまだお役に立てます!!」

「任務を失敗した貴様たちが、何の役に立つと言うのだ?貴様たちは用済みだ」

「どうかお慈悲を!! ジェノス将軍!!」

「心配するな。貴様らの代わりなどいくらでもいる」

「ギャアアアアアアアアアッ!!」


 工作兵は、ジェノスの愛竜の餌食となった。

 この工作兵は帝国軍特務部隊【コウガ】所属で、工作兵としての実力は非常に優れていたのだ。

 しかし、ジェノスが殺してしまったため、結果的に帝国軍の戦力はダウンすることになるだろう。

 そして、先に殺しておいた魔法使いも愛竜に食わせた。


「魔導爆弾を発見し、解除した男か……。こやつらの言う通り、只者ではなさそうだ。ククッ、楽しみだ。そいつとまみえるのが……!」


 天のジェノスは、不気味な笑みを浮かべていた。

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