第30話 因縁の対決
今回は因縁のアイツと決闘します。
僕たちはあの後、ギルドマスターに呼ばれて冒険者ギルドへ行った。
王都を守った報酬として1人あたり白金貨10枚を受け取った。
加えて、僕とルナはDランクへの昇格が認められた。
その翌日、僕はいつも通り学園生活を送ろうとしていた。
「おはよう、ファイン君!」
「おはよう」
ルナが隣にやってきた。
すると、今度は正面からアッカスたちが何やら面白くなさそうな表情で歩いて来た。
「おい、セヴェンス!」
「何だい?」
「王都を救ったことで、多額の報酬をもらった上にDランク冒険者に昇格したそうじゃないか? 何でキミは評価されているのに、ボクは正当に評価されないんだよ!? ボクだって街を守った【英雄】のはずなのに! 平民のくせに、ボクよりも目立たないでほしいね」
「「そうだそうだ!」」
アッカスの言葉に、取り巻きたちも同情する。
すると、アッカスの話を聞いていたルナが口を開いた。
「何を言っているの!? 当然の評価でしょう! ファイン君は頑張って巨大ドラゴンを倒したんだから! あなたは一人であのドラゴンを倒せたと言うの!?」
「な、なにを……キミは貴族でありながら、平民の味方をするっていうのかい!?」
アッカスは逆ギレし、ルナに対してあり得ない発言をした。
「フン、そう言えばキミはセラフィー公爵家の本当の人間じゃないそうだね? 何でも、10年前に森に捨てられていたそうじゃないか。どおりで平民の味方をするワケだ。所詮、キミも『偽りの貴族』ってワケだね」
「な……!!」
アッカスに偽りの貴族と言われ、ルナはショックを受けてしまう。
そのことで、僕はカチンと来た。
「今……なんて言った?」
「あ?」
僕は気が付いたら、アッカスに向かって【火球】を放っていた。
「ぐわっ!? き、貴様ッ……! 危ないじゃないか!!」
「心配するなよ、威力は抑えてある。それに、学園には防御結界はあるから、怪我はしていないだろう? それよりもよくも友達を貶してくれたな」
「き、貴様……! よくもボクに向かって……! 決闘だ!! こうなったらお前に決闘を申し込んでやる!!」
「ああ、受けて立つ……!」
この出来事がきっかけで、僕とアッカスは一触即発の状態になる。
アッカスは決闘を申し込んだので、僕はそれを受けて立つことにした。
■■■■■
僕とアッカスは、決闘を行うために闘技場へ移動した。
観客席には大勢の生徒たちがやってきており、ルナとセレーネも見守る。
そして、レナ先生もやってきて、ルール説明を開始した。
「今回の決闘のルールは、自分が使える手は全て使っても構いません。つまり、剣で戦ってもよし、魔法で戦ってもよし。敗北のルールは、気絶したり、場外に突き飛ばされたり、降参を認めたりしたら『負け』です。なお、再三言う必要はないと思いますが、闘技場内には防御結界があります。それでは両者、位置についてください」
「フン、ボクに歯向かったことを後悔させてやるよ」
「その言葉、そっくりそのまま返すよ」
「準備はいいですか? レディー……ゴー!!」
レナ先生の合図で、僕VSアッカスの決闘が始まった。
「来いよ、先手は譲ってやる」
「切り刻んでやる、平民ッ!!」
僕はアッカスの実力を測るために、先手を譲ることにした。
アッカスは僕にダッシュで向かい、剣で攻撃してくる。
だが、ルナと比べてスピードは遅いうえに、太刀筋もひどい。
正直言って、ルナと決闘した時ほどの緊張感はなかった。
僕はアッカスの攻撃を問題なく回避した。
「なにっ!?」
「この程度か」
「図に乗るな、平民がッ!!」
僕はアッカスを挑発した。
アッカスも挑発に乗り、僕に対して連続攻撃する。
しかし、攻撃が当たるはずもなく、僕は剣戟を受け止め、アッカスを蹴った。
「グオオッ!? よ、よくもボクを……!」
ルナとアッカスの実力は、ハッキリ言って雲泥の差だ。
これだけ実力差があるのなら、すぐに勝てる。
とはいえ、あっさり勝ってしまっては面白くない。
何より、アッカスには決して僕に敵わないと分からせてやりたいと思った。
そのため、僕は敢えて遊んでやることにした。
そして、僕は再度アッカスを挑発した。
「その程度の強さでは、ルナには遠く及ばないな」
「平民の分際で、ボクを舐めるなよ!身体強化!」
アッカスは【身体強化】を使い、僕に向かって剣戟を浴びせて来る。
しかし、強さは正直そこまで変わらない。
そして、相変わらず酷い太刀筋だ。
僕はアッカスの剣戟を受け止めた。
「身体強化してもその程度か。これなら、強化していないルナの方が断然強いな」
「な、なんだと……!! 舐めやがって!!」
そう言うと、アッカスは再び剣を振り下ろした。
僕は剣を振り上げ、アッカスの剣を弾き飛ばした。
アッカスの剣は場外に突き刺さった。
「なにぃッ!?」
僕はアッカスを再び蹴り飛ばした。
「グホッ!!」
アッカスは、あと一歩で場外に足を踏み外しそうになる。
しかし、何とか踏みとどまった。
「これでお前は、武器を失ったという訳だな」
「ふっ、バカめ。ボクの『武器』が剣だけではないということを、忘れたのか!? 炎の精霊よ、汝の力を貸し与え給え、【火球】!」
アッカスは魔法で攻撃して来た。
「そうだったな。お前は魔法が使えるんだったな。詠唱なしでは発動できない、『低次元』の魔法がな」
僕は剣に【強化魔法】を施し、火の玉を真っ二つに切り裂いた。
そのことに、アッカスも驚きを隠せない。
「なにぃ!? ボクの【火球】を切り裂いただと!?」
「剣と魔法が使えることだけは素直に褒めてやる。もっとも、実力はルナと僕には遠く及ばないがな」
「くっ、ボクの力を見くびるなよ!! 炎の精霊よ、汝の力を貸し与え給え、【火球】!」
アッカスは挑発に乗り、再び【火球】を放ってきた。
「また同じ手か、芸がないな。【火球】」
対する僕も【無詠唱】で魔法を放った。
アッカスの【火球】は、僕の物と比べて弾速が遅い。
そして、威力のほうはもちろん……。
「バカな!? ……グハッ!!」
お互いの【火球】がぶつかったが、僕のほうが威力が高かった。
そのため、僕の【火球】はアッカスに直撃した。
「もう実力差は十分わかっただろう。負けを認め、ルナに謝罪するんだ」
「ボクが負けを認めるだって!? そんなこと、死んでもゴメンだね!! ブツブツブツ……」
アッカスは決して人に頭を下げたくないという。
貴族ゆえにプライドが高いのだろう。
もっとも、アッカスは伯爵家なので、貴族階級で言えばルナの方が上だが。
そして、アッカスが小声でなにか言い出した。
まあ、どうせ悪あがきに過ぎないだろう。
そう思い僕は剣を抜き、アッカスに接近した。
次の瞬間……。
「【火炎爆弾】!!」
「ハッ……!!」
アッカスは巨大な火の玉を放ち、それが僕に迫ってきた。