第26話 本気の戦い
準決勝にて、僕がギルバートに勝った。
これによって、決勝に進むことが出来る。
すると、気絶していたはずのギルバートが起き上がった。
「まさか、お前がこれ程までに強かったとはな……完敗だぜ。だが、次は負けねぇ。もっと強くなって、今度はオレが勝つ!」
「ああ、期待しているよ」
僕とギルバートは握手を交わし、お互いに健闘を讃え合った。
さて、次はいよいよ決勝戦で、ルナとの戦いになる。
以前の決闘では魔法縛りで、ルナもまだ魔法が使えず、剣での戦いであった。
今回のトーナメントではそういった縛りがなく、剣や魔法で戦うことが許されている。
だが、それはルナも同じだ。
ルナは前回の決闘では、まだ魔法は使えなかった。
しかし、この前の特訓で僕がルナに魔力コントロールの方法を教えたことで、晴れて魔法が使えるようになった。
つまり、ルナは決闘の時よりも数段強くなったということだ。
だが、逆に言うと、前回よりも白熱した戦いが楽しめることだろう。
「では、これより学園闘技祭決勝戦を行います。今年の闘技祭のトリを飾っていただくのはこの二人。ファイン・セヴェンス、そしてルナ・セラフィーです」
レナ先生の放送と共に、生徒たちの歓声が上がる。
そして、ルナが入場門より闘技場に現れた。
「いよいよこの時が来たわね」
「そうだな」
「今回は手加減はしないから、覚悟しておいてね?」
「それはこちらの台詞だ」
二人でそんな会話をしていると、レナ先生から声がかかった。
「では両者、位置についてください」
レナ先生の指示で、僕とルナはお互いに距離を取る。
「準備はいいですか? レディー、ゴー!」
今、闘技祭の決勝戦が始まった。
「本気で行くよー!!」
開始と同時に仕掛けて来たのはルナだった。
ルナは左手で剣を抜くと、ダッシュで一気に距離を詰めてくる。
「稲妻矢!」
僕は右手の指先から稲妻矢を放ち、迎撃する。
ルナはそれをジャンプで回避し、なおも僕に向かってくる。
そして、ルナはとうとう僕に肉薄し、剣を振り下ろした。
僕は剣を抜き、ルナの剣戟をガードする。
「さすがの腕前ね!」
「驚くのはまだ早いぞ」
そう言うと、僕は頭上から自分の周囲に稲妻矢を降らせた。
ルナは間一髪でそれを回避する。
「あっぶなー。そんな事をしたら、自分にも当たっちゃうじゃない!?」
「そんなドジはしないさ」
僕は左手で火炎弾を3発放つ。
ルナは最低限の身のこなしで回避する。
その隙に、僕はルナに向かってダッシュする。
そして、彼女に接近したところで、僕は横斬りで攻撃する。
対するルナは、僕の攻撃を受け止めようとはせずに、一歩後ろに下がってかわした。
その直後、ルナは刺突で攻撃してきた。
僕は間一髪で回避した。
危ないところだった。少し深く踏み込み過ぎたか。
学園内には結界が張られているが、これが実戦の場なら致命傷になっているところだった。
僕は一旦、ルナから距離を取ることにした。
「氷の矢!」
距離を取ると、ルナはすかさず氷の矢を3発撃ってきた。
氷の矢が、物凄いスピードで僕に飛んで来る。
僕は結界を展開して防御した。
ところが、結界を介して強い衝撃が伝わってくる。
何とか割れずに済んだが、さすがS級魔力の持ち主なだけはある。
ルナは再び剣を構えて走ってくる。
そのため、僕もルナに立ち向かうことにする。
お互いの剣がぶつかり合う。
僕は袈裟斬りを放つ。
ルナはそれを上手く受け止めると、僕の左側から首めがけて横斬りを放つ。
僕は剣を左側に構えて防御する。
ルナは続けざまに、上から斬擊を出す。
僕はガードしつつ、ルナの剣戟を弾いた。
そして、僕はもう一度袈裟斬りを放つ。
ルナは斜めに剣を構えてガードした。
ルナの剣戟の威力が、以前戦った時よりも強く感じる。
そして、このスピードのキレの良さ。
ルナはここ数日で腕を上げたようだ。
ルナは素早く刺突を放つ。
僕は最低限の動きでかわして、横薙ぎを放つ。
しかし、ルナはジャンプでかわすと空中回転し、僕の頭上から氷の刃を3発撃ってきた。
何て素早い動きだ。
僕はすぐにかわし、一旦ルナから距離を取った。
「腕を上げたようね、ファイン君!」
「そっちこそ!」
どうやら、ルナも僕と同じことを思っていたようだ。
今の攻撃は何とか躱すことができた。
しかし、ルナの素早さは相変わらず侮る事が出来ない。
僕はルナに向かって走って行き、袈裟斬りで攻撃する。
ルナは一歩後ろに退いて避けた。
僕はルナが次に攻撃の為に一歩前に出ることを予測して、足元に麻痺罠を仕掛けた。
予想通り、ルナが攻撃を行うために前に出てきた。
そのため、ルナはトラップを踏んだ。
僕は、動けなくなったルナに剣戟を入れる為に構えた。
ところが、ルナが動きを止めることはなかった。
そして、そのまま僕に対して剣戟を入れてくる。
トラップが効いていない!? なぜだ?
僕は間一髪で回避する。
そして、僕は横薙ぎでルナに反撃する。
しかし、ルナは素早くしゃがんで僕の攻撃を躱した。
「遅い!」
ルナはそう言うと、僕の懐に潜り込んで横斬りを放つ。
僕は宙返りしてルナの攻撃を躱した。
そして、僕はルナから再び距離を取った。
「氷結剣!」
ルナは続けざまに、氷結剣を放ってきた。
厚い氷の刃が、僕に迫ってくる。
僕は結界で防御した。
ルナはまた僕に向かってダッシュで迫ってくる。
僕は風属性上級魔法の竜巻を放つ。
「きゃああああっ!?」
ルナはかわしきれず、遠くに吹き飛ばされてしまう。
しかし、空中で上手く体勢を立て直して着地した。
「なかなかやるな、ルナ。魔法まで使いこなせるようになるとはな」
「ふふっ、ファイン君のお陰ね!」
ルナは走って近づく。
そして、上からの斬擊を出した。
僕はガードしたのち、剣で反撃する。
しかし、ルナは素早く背後に回り込んで横斬りを放った。
僕は回避しつつ、ルナから距離を取る。
僕は氷の槍をルナに向けて放った。
ルナは剣を振り、自身の前に巨大な氷の壁を生成した。
氷の槍は、氷の壁によって防がれた。
僕は次に、火属性上級魔法である火炎爆弾を放つ。
弾は氷の壁にヒットし、爆発を起こした。
すると、氷の壁の表面にヒビが入り、すぐに崩れた。
「くっ、私だって! 火炎爆弾!」
ルナは両手を前に出し、火炎爆弾を放ってきた。
僕も同じ魔法で応戦する。
お互いの火炎爆弾がぶつかり、大爆発を引き起こした。
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ここまでは、ほぼ互角の勝負が続いている。
だが、このままではお互い有効打を与えることはできないだろう。
そんなことを考えていると、ルナが行動を起こした。
「こうなったら、これを使わせてもらうわ。身体強化!」
ルナは身体強化を使った。
「やはり、そう来るか。ならば……!」
そのため、僕も身体強化を使って応戦することにした。
「それじゃあ……本気で行くわよ!」
僕とルナはほぼ同時に動き出した。
学園の闘技場では、二人の激しい剣戟が繰り広げられる。
それは、今までにない程の激戦となった。
「剣の舞!」
「ぐっ!?」
ルナの剣の連撃が、僕に当たる。
僕も剣戟のラッシュで反撃する。
「きゃっ!?」
僕の剣戟がルナに当たった。
お互いに、攻撃を当てては、攻撃を当てられるというのを繰り返す。
そのような一進一退の攻防が続いた。
「おいおい、マジかよ……あいつらバケモノ過ぎるだろ!!」
「なんてヤツらだ……やはり次元が違い過ぎる……!!」
観客席からは、ギルバートとディオーランの声が微かに聞こえた。
あの二人も驚いているようだ。
残り時間はあと僅か。
僕とルナの攻撃を当てた回数は同じとなった。
「こうなったら……これで決めさせてもらうわ!」
そう言って、先に動き出したのはルナだった。
ルナは左手を頭上に上げた。
頭上には、巨大な火の玉が現れた。
「火炎爆弾か」
「そうよ。でも、ただの火炎爆弾ではないわ」
ルナがそう言うと、信じられないことが起きた。
火炎爆弾はさらに2つ増え、合計で3つになった。
「なにっ……!?」
なんて子だ。
火炎爆弾を3発同時に生み出せるとは。
普通、そんな事を出来る者はいない。
しかも、ルナはこれまでに多くの魔法やスキルを使用してきたというのに、魔力切れを起こした様子は窺えない。
やはり、ルナの魔力量は半端ではないようだ。
「あなたにこれが防げるかしら? 火炎爆弾!!」
ルナの掛け声と共に、3つの火炎爆弾が僕に迫り来る。
まずい、これは結界でも防ぎきれない。
そして、火炎爆弾が着弾すると、案の定大爆発が起きた。
凄まじい爆風が闘技場を覆った。
「やった!?」
やがて爆発は収まり、視界が元に戻った。
「ファイン君がいない!?」
ルナは、大爆発で倒れたはずの僕がいない事に驚いていた。
なぜなら……。
「後ろだ」
「!?」
僕の声を聞き、ルナは慌てて後ろを振り返った。
「火炎爆弾が着弾する寸前、僕は瞬間移動していたんだ」
「いつの間に!? ……って、ちょっと、何これ!?」
僕は生命創成でルナの脚に蔦を絡めた。
会話することで、ルナの注意を引いていたのだ。
そして、最終的には彼女の全身を拘束した。
「これは……生命創成!? ちょっと、離してよ! 蔦で拘束するなんて、レディに対して失礼よ!」
全身を蔦で絡まれたルナは、身動きが取れなくなった。
ところが、ルナは必死でもがき、何とか蔦から抜け出した。
相変わらずの馬鹿力だ。普通の人間なら、そう簡単には抜け出せないというのに。
しかし、時すでに遅し。
僕は蔦を生み出すと同時に、ルナに向けて竜巻を放った。
「しまった! きゃああああっ!!」
ルナは竜巻によって吹き飛ばされ、場外で倒れた。
その直後、試合終了のホイッスルが鳴った。
「そこまで! 勝者、ファイン・セヴェンス!」
最後に竜巻を当てたことにより、僅差で僕の勝ちとなった。
そして、観客席からは今日一番の歓声が上がった。
ルナは立ち上がると、僕に向かって来た。
「おめでとう、ファイン君。悔しいけど、今回も私の負けね」
「ありがとう。とても楽しい戦いだったよ」
決勝戦の相手選手であるルナからも健闘が讃えられた。
僕とルナは握手を交わした。
今年の学園闘技際の優勝者は僕、ファイン・セヴェンスで幕を閉じた。