第24話 学園闘技祭
いよいよ待ちに待った闘技祭当日だ。
闘技際はトーナメント方式で、A~Dまでの4つのブロックに分かれて進出する。
各ブロックではそれぞれ1対1の戦いである。
そして、準々決勝を勝ち抜いた者たちが準決勝→決勝と進出して行く。
「おはよう、ファイン君!」
「おはよう、ルナ」
ルナが来て元気よく挨拶してくれた。
それから、程なくしてディオーランもやって来た。
「おはよう、ファイン」
「おはよう」
「今日はライバル同士だけど、お互い頑張ろうね!」
「ああ」
「そうだな」
3人で意気込んでいると、ギルバートが現れた。
それに伴い、一気に緊張感が増した。
「来たか、ファイン・セヴェンス」
「ギルバート・ヴァレンタイン」
「いいかお前ら、勝つのはこの俺【ギルバート・ヴァレンタイン】様だ。お前ら全員、俺がブッ倒す!」
「僕たちも負けないさ」
「ま、せいぜい頑張りな」
ギルバートとそんなやり取りをしていると、レナ先生がやって来て闘技際の説明を始めた。
「皆さん、おはようございます。今回の学園闘技祭で審判を務めさせていただくレナと申します。早速ですが、ルール説明をいたします。闘技祭では、魔法や剣などの武器を使用しての戦いとなります。もちろん、スキルを使用してもOKです。ただし、アイテムの使用は禁止とします。制限時間は1試合あたり15分とさせていただきます。その間、攻撃を当てた回数の多い方が勝者となります。ただし、相手の攻撃で体力が尽き、倒れた方の選手が『負け』となります。また、場外に突き飛ばされたり、降参を認めた場合でも『負け』となります。この闘技場には高度な【結界魔法】が張られているため、いくら攻撃しても怪我をする心配はありません。組分けは事前に決めたとおりです。では、このあと第一試合に出る生徒は並んでください」
組分けは事前に決めており、ルナはAブロックから出る。
一方、僕はCブロックから出場する。
そして、Dブロックではディオーランとあのギルバートの戦いが繰り広げられる。
「準備はいいですか? レディー、ゴー!!」
早速、準々決勝の第一試合が始まった。
ルナは右手に剣を構えている。
ルナは左利きなので普段は左手で剣を持っているのだが、どうも右手で剣を持つ時は本気ではないらしい。
対戦相手は同じ一年生のジョンだ。
ルナは試合開始と同時に相手に猛スピードで迫り、剣を振り下ろした。
ジョンは何とか剣で防いだ。
だが、ルナは剣を抜くとすぐに下からの突き上げを行う。
強力なルナの剣戟により、ジョンの剣は弾き飛ばされた。
これにより、ジョンは降参を認めた。
「Aブロック勝者、ルナ・セラフィー!」
ルナは相手の生徒にあっさり勝った。
やはり本気でなくても、並みの生徒よりは遥かに強い。
そして、第三試合で僕の番がやってきた。
対戦相手は二年生のアダムである。
「お前を倒して、準決勝に進んでやるぜ!」
「準備はいいですか? レディー、ゴー!!」
試合開始と同時に、アダムは詠唱を開始した。
「炎の精霊よ、汝の力を……」
遅い。
「火球」
僕は相手が詠唱している隙に、火球を放った。
相手選手は倒れ、準々決勝Cブロックは僕の勝ちだ。
面白みのない試合だったが、そんなことはどうでも良い。
さっさと勝って、次の試合に駒を進めるだけだ。
■■■■■
第四試合は、DブロックからディオーランVSギルバートの戦いが行われる。
「頑張れよ、ディオーラン」
「ああ。だが、ギルバートはかなりの強敵だ。気を引き締めて行かないとな」
「なに、君ならやれるさ」
「ありがとう、ファイン」
僕は観客席に戻り、ディオーランンとギルバートの戦いを観ることにする。
「ファイン君、お疲れ様」
「ああ」
観客席に入ったところ、丁度近くにルナがいた。
そのため、僕はルナの隣に座った。
「ただいまより、準々決勝第四試合を開始いたします。第四試合はDブロックより、ディオーラン・ブラスター対ギルバート・ヴァレンタインでお送りいたします」
審判の放送の後、入場門からディオーランとギルバートが闘技場に入場してきた。
ディオーランは、左腰の鞘に剣を納めている。
一方、ギルバートは背中に幅広の剣を背負っている。
まもなく、試合が始まる。
「準備はいいですか? レディー、ゴー!!」
教員の合図とともに、試合が始まった。
先に攻撃を仕掛けたのは、ギルバートだった。
ギルバートは、背中の鞘から幅広の両刃剣を抜き、ディオーランに向かって走った。
そして両手で剣を構え、上から斬擊を放った。
ディオーランは鞘から剣を抜き、ギルバートの攻撃を受け止めた。
今の攻撃は様子見と言ったところか。
「なかなかやるじゃねぇか」
「驚くのはまだ早いぞ」
ディオーランはそう言うと、ギルバートの剣を弾き反撃に出た。
ギルバートもタダでやられる訳がなく、ディオーランの一撃を躱して、一旦後ろに下がった。
今度はディオーランが両手に剣を構え、ギルバートに向かって走る。
そして、ディオーランは横斬りを放つ。
しかし、踏み込みが浅い。
対するギルバートは、後ろに躱そうとする。
躱した後にカウンターを入れるようだ。
ところが、ディオーランは斬撃から突然刺突に切り替えた。
「くっ……!」
最初の斬撃はフェイントだったのだ。
ギルバートは刺突をギリギリで躱そうとするが、剣が頬を掠めた。
ディオーランはこの刺突のために、わざと踏み込みを浅くしていたのだ。
「お前、なかなか楽しませてくれるじゃあねぇか! 今まで戦って来たヤツらなら秒で終わってたぜ」
「俺は他のヤツらとは違うからな」
「だが、その程度じゃあオレに勝つことは出来ねぇぜッ!」
先程と比べ、ギルバートの剣戟のスピードが増した。
一方、ディオーランもそのスピードに追従できている。
どうやら、ディオーランは影で特訓してきたようだ。
その後も、剣による接近戦が繰り広げられる。
今のところ、ディオーランはギルバートと互角に戦いを進めている。
僕の隣に座っているルナが話しかけてきた。
「ディオーラン君、勝てると思う?」
「どうだろうな。今のギルバートは恐らく……本気の5割ってとこだろうな」
「あれで5割なの!?」
ルナは驚いていたが、ギルバートが本気を出した場合はなかなか苦戦を強いられそうだ。
「予想以上にやるな。少し本気を出させてもらうぜ」
すると、今度はいよいよギルバートが反撃に出た。
ギルバートの剣戟により、ディオーランはいよいよ追い詰められる。
ディオーランは何とかギルバートの猛攻に耐えるが、防戦一方になる。
この状況をどうにかするべく、ディオーランはギルバートから一旦距離を取った。
「ハッ、なかなかやるじゃねぇか! ここまでオレの攻撃に耐えたのはお前が初めてだぜ! だが、それもここまでだ。オレのとっておきの技を見せてやるぜ」
ギルバートは自らが持つ剣を構えた。
剣には渦状の炎を纏わせる。
そして剣を振り下ろし、炎をディオーランに向けて放った。
「バーニングブラスト!!」
激しい炎が渦巻きながらディオーランを襲った。
ディオーランは避けきれず、炎を食らってしまった。
「ぐわあああああ!!」
ディオーランは後方に吹き飛ばされ、そのまま倒れた。
「勝者、ギルバート・ヴァレンタイン!」
これによって、準決勝では僕とギルバートが戦うことが確定した。
バーニングブラストは非常に強力な技のようだ。
あれを喰らったら、ひとたまりもないだろう。今のディオーランのように。
その一方で、ギルバートの必殺技を一つ知ることができたので、少しばかり有利に戦うことができるだろう。
余談ですが、モブの名前はテキトーです。