第1話 物語の始まり
第1話。ここから本編開始です。
僕の名は、ファイン・セヴェンス。15歳である。
僕は生まれてから現在まで、ここイナ村という小さな村の孤児院で暮らしている。
僕が暮らす土地は、歪なAの形あるいは三角形の【エノウ大陸】。その南東部に位置する、ローランド王国の王都エストの南にあるイナ村で暮らしている。
今から村に住む、ジラばあさんに薬草を届けようとしているところだ。
ジラばあさんは高齢なので、体調を崩しがちだ。今日も風邪を引いて寝込んでいるとのことだ。
そのため、僕が時々村の外へ行って薬草を採取してくるのだ。
ちょうど今、薬草を採取して村へ戻ってきたところだ。
そして扉をノックし、おばあさんの家へ入った。
「こんにちは。おばあさん、今日も薬草を届けに来たよ」
「おや、ファインかい。いつもすまないねぇ。ゲホッ、ゲホッ……」
おばあさんは寝室のベッドで横になっていた。
そして、ゲホゲホとせき込んでいた。
「おばあさん、大丈夫? どうかお大事に」
「ありがとう。ファインは優しいね」
「気にしないで、好きでやっているだけだから。それじゃあ、また薬草届けるから」
「ああ。いつもありがとう」
僕はジラばあさんの家を後にした。
イナ村は小さいので、みんな家族同然の存在だ。
そのため、みんなで助け合って生活しているのだ。
おばあさんの家を出た後、孤児院の『兄弟』たち会った。
「ファイン兄ちゃん、遊んで!」
「いいぞ」
「やったー!」
僕は兄弟たちとしばらく遊んでやった後、孤児院に戻ることにした。
道中、ジャン・ワンスとネオ・トゥースに会った。
彼ら同じ孤児院で暮らしている僕の舎弟である。舎弟と言っても、彼らが勝手に志願してやっているだけだが。
「オッス、ファインの兄貴! ご機嫌いかがですか?」
「兄貴、おいらたちとも遊びましょうよ!」
「ジャンとネオか。悪いが、僕は今から読書するつもりだ」
「そうですか、失礼しました!」
僕は孤児院に戻ると、裏に回った。そして、石畳を踏んだ。
すると、地下への階段が出現し、下に扉があった。
これは地下書庫への入り口である。
この地下書庫は、僕が趣味で読書などをしている場所だ。
つまり、僕の秘密基地のような場所だ。
ちなみに、この地下書庫の扉はなぜか僕以外には開けることができない。
僕が地下書庫に入ると、壁のランプに火が灯った。
どういう仕掛けかはわからないが、僕が入室すると毎回火が灯るようになっている。
僕は読書を開始した。
十数分くらい経った頃だろうか。外からジャンとネオが扉を叩く音が聴こえた。
「兄貴! ファインの兄貴、大変だ! 今すぐ出てきてくれ!!」
僕は静かに読書していたいところだが、あまりに騒々しいので仕方なく出てやった。
「騒がしいな。一体何なんだ? 僕は今、読書をしているんだ」
「それどころじゃねえ!! 野盗が来たんだ!」
「は?」
「村長たちがなんとか説得しているが、あいつら、今にも襲いかかりそうなんだ! 村人がファインの兄貴を呼べって……」
「わかった。今行く」
僕はジャンたちの案内で野盗のもとへ行った。
すると、4人組の野盗たちが見えた。野盗はそれぞれ、斧やナイフなどで武装していた。
村長のゲンブと数人の村人たちが野盗を説得しているのが見えた。
「どうかお引き取りを!」
「ヒャッハー! 命が惜しければ、金目の物をよこしな!!」
「ですから、ウチは小さな村ですので! 金目の物はありません!」
「うるせえぞ、ジジイ! だったら有り金全部よこしなァ!!」
このままでは、村長たちの命が危ない。
僕は野盗の前に立ちはだかった。
「なんだ小僧、ここはガキの出るとこじゃねえ。さっさと失せな!」
「悪いが、お前らにくれてやる物はここにはない。帰ってもらおうか」
「テメエ! 生意気なガキだなァ!ぶっ殺してやらぁ!!」
そう言うと、野盗たちは持っていた武器でいきなり斬りかかってきた。
しかし、僕は難なくかわし、カウンターのパンチを野盗たちにブチかました。
あれ? こいつら思っていたよりも弱いぞ。
僕は野盗のリーダー格らしき人物に言ってやった。
「もう一度言う。今すぐ帰れ!」
「クッソー! このガキが、覚えてろよー!!」
野盗たちは捨て台詞を吐いて逃走した。
「おお、ファイン! お前がいなければ今頃わしらはどうなっていたことか……」
「さすがファインの兄貴!」
ゲンブ村長たちは僕を称えていた。どうやら、村長たちは実際に手を出されてはいないらしい。そのため、無傷であった。
「だが、ファイン。もしかすると、奴らまたこの村を襲うかもしれん。その時はどうしたものか……」
「心配する必要はないよ、村長。その時はまた僕が追い払えばいいだろう?」
「おお、何と頼もしい! ファインがいれば、安心じゃ!」
そう言うと、ゲンブ村長の顔がパーッと明るくなった。
翌日、僕は剣の素振りをしていた。
僕は魔法使いだが、一人で戦えるよう日頃から鍛えているのだ。
すると、ネオが慌てた様子でやってきた。
「大変です兄貴! また野盗どもが現れました!」
「なんだって? またか!?」
「しかも奴ら、今日はボスを連れてきたみたいなんです!」
「懲りない奴らだ……」
僕はため息をつき、外へ出た。
村の入り口に9人の野盗がいた。昨日の倍以上の人数だ。
そして、中心には親玉らしき大柄な男が斧を担いで立っていた。