表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/158

第16話 稽古

 決闘した日の午後、僕はルナに稽古を申し込まれた。

 昼食後、僕とルナは学園に戻ることにした。

 

 学園の校舎裏には稽古場があり、休日でも開放されている。

 そこで、僕とルナは稽古場に向かった。

 運がいいのか、この日は誰もいなかった。

 僕とルナは、倉庫にあった訓練用の木剣を持った。


「じゃあ、まずはいつも通りに攻めてきて」

「うん、わかったわ」


 早速、ルナは僕に向かってきた。


「はあああああっ!」


 ルナは上から斬撃する。

 僕は攻撃を回避し、ルナの背後に回り込む。

 ルナは振り向いて横斬りで攻撃する。

 僕は身を後ろに退いて回避した。


「せいっ! やあっ! はあっ!!」


 ルナは攻撃を続けた。無論、僕は回避や剣での防御を行う。

 ルナの弱点、というか改善点はもうわかっている。

 そろそろ、フィニッシュといこうか。

 僕は一旦、ルナから距離を取った。


「はあああああっ!!」


 すると、ルナがまた向かってきた。

 ルナが横から斬撃してきた。

 それと同時に、僕はルナの剣を蹴り上げた。


「きゃっ!」


 ルナの剣は宙を舞い、後方の地面に突き刺さった。


「ルナ、君の戦闘スタイルは【攻撃重視型】だ。それ故に、防御が疎かになってしまっている。常に敵にくっついていたら、やられてしまう危険があるだろう?」

「確かにそうだわ。でもどうすればいいの?」

「そこで、次からは【ヒット&アウェイ】……即ち、攻撃したら離れるということを意識するんだ」

「なるほど」

「それからもう一つ。ルナは剣戟時に力を入れ過ぎているように感じた。そこで、出し切る力は本気の9割までにするんだ」

「なぜ9割までなの?」

「100%以上の力を出すと、力が安定せずにかえって力を発揮できなくなる。したがって、100のパワーを出したければ、自分の限界値は110以上に鍛えると良い」

「なるほど……。アドバイスが適格だわ。ファイン君に稽古頼んで正解だったわ!」


 僕の指導に、ルナは目を輝かせている。

 ルナは再び僕に向かって攻撃してきた。

 僕はルナの攻撃をガードし、反撃に移る。

 しかし、ルナに避けられてしまう。

 そして、そのまま僕の剣戟の間合いから離れた。

 ルナはすぐさま僕に再度接近し、攻撃してきた。

 僕はまた防御してから、反撃する。

 ルナにはまた距離を取られた。


 ルナの動きが今までよりも格段に良くなっている。

 というか、以前よりも強くなっている。

 もとからルナは強かったが、ヒット&アウェイを覚えたことでさらに強くなった。

 

「いいぞ、今までよりも動きが良くなっている。攻撃したら()退()することを意識するんだ」

「えっ? こ、()()?」


 ルナはなぜか目を丸くした。

 そして、剣を降ろして僕の方に歩み寄ってきた。


「ハイタッチ!」

「えっ……?」


 ルナは突然、僕にハイタッチしてきた。

 僕もつられて手を合わせてしまった。


「えっ? いや、その“交代”じゃなくて……」

「……あっ! ごめんなさい! 攻守交代と間違えちゃったわ!」


 ルナは片目を閉じ、舌を出していた。

 どうやらルナは天然さんのようだ。


 とりあえず、休憩することにした。

 

■■■■■


 休憩中、ルナが話しかけてきた。


「ねえ、ファイン君。あなたの魔力はいくつだっけ?」

「僕の魔力はAだ」

「そうだったよね。すごいな~。ちゃんと魔法が使いこなせて」


 ルナはそう言うと、しゅんとした表情になった。

 しかし、僕はルナの発言が訝しいと感じた。


「どういうことだ?」

「入学試験の日のこと……憶えてる? 魔力測定で水晶が割れたことを。つまりね、私の魔力は測定不能だったの」

「そういえば……。でも魔力測定器が割れたってことは、ルナは規格外の魔力の持ち主ってことでは? もしかしたら、ルナの魔力はS級かもしれない。だとしたら、これは凄いぞ」


 若干興奮ぎみの僕に対して、ルナの表情は相変わらず曇っていた。


「でもね、私は魔法を使うと、暴走してしまうの。だから、私は魔法を使えないの」

「魔法を使うと暴走してしまう? それは魔力コントロールが正しくできていないからだろう。魔力が高すぎが故の“弊害”だろうな。よし、今度は魔力コントロールの訓練をしてみよう」

「うん、お願いね!」

「まずは空気中に漂う魔素(マナ)を体内に取り入れ、魔力に変換する練習から始めよう。そして、魔素(マナ)を取り入れたら、体内でグルグルと循環させるイメージで」

「わかったわ」


 そう……。

 この世はありとあらゆることが【循環】することで成り立っている。

 

 簡単な例を挙げよう。

 雨が降ると、地上に水源ができる。そこから水蒸気が蒸発し、そして雲となってまた雨が降る。

 一日は朝・昼・晩と時間が流れ、そして夜が明けて翌日には再び朝を迎える。

 もっと身近な例を挙げるとすると、私たち人間は体内で血液が循環することによって、呼吸で取り入れた酸素と二酸化炭素を行き来させ、生命活動をおこなっているのだ。


 これらが、【循環】の法則。


 5分ほど魔力コントロールの練習を行った。

 ルナが苦しそうにする。


「うっ、少し苦しいわ……」

魔素(マナ)を体内に入れ過ぎたのかもしれない。そういう時は、少し体外に出してみよう」

「うん。……あっ、少し楽になったかも」

「よし、魔力コントロールは十分そうだね?」

「うん。できたわ」

「それじゃあ次はいよいよ魔法の実践だ」

「うん!」


 僕がそう言うと、ルナはニコニコしながら頷いた。

 魔法が使えるようになるのが楽しみなのだろう。

 

「私、下級の攻撃魔法なら一通り覚えたわよ!」

「そうか。魔法の実践訓練を行う前に一つ聞きたいんだけど、ルナの加護属性(エレメント)は何?」

「私の加護属性(エレメント)? 水属性だけど、どうして?」

「ならルナには【氷の刃(アイス・エッジ)】を習得してもらおうか。自分の加護属性(エレメント)と同じ属性魔法を使うと、威力が15%上乗せされるんだ」

「そうなんだ、初めて知ったわ。ファイン君って物知りね! あっ、魔法使い(メイジ)だから当たり前だよね」


 僕は倉庫から幾つか的を取り出し、稽古場に設置した。


「あの的に向かって氷の刃(アイス・エッジ)を撃ってもらう。せっかくだから、【無詠唱】もこの際習得してみよう。コツは、頭の中で術式を思い浮かべること」

「うん、わかった。やってみるわ」


 ルナは目を瞑った。

 そして左手を前に出し、右手を添えた。

 それから5秒ほど経った時だった。


「【氷の刃(アイス・エッジ)】!」


 ルナが魔法名を叫ぶと、手の先から青色の魔法陣が現れた。

 そこから、寒風と共に魔法陣から氷の刃(アイス・エッジ)が3発高速で発射された。

 そして、的は真っ二つに切り裂かれた。

 す、すごい……。

 魔力コントロールの練習を少ししただけなのに、ここまで強い魔法を出せるなんて。

 さすがはS級魔力の持ち主だ。

 いや、それよりもルナの成長性がずば抜けて高いということだろうか。


「や、やった……! やったわ! 私、ちゃんと魔法が使えるようになったわ!!」


 そう言うと、ルナは僕に抱きついてきた。

 異性に抱き着かれて、僕は内心ドキドキしていた。


「これも、ファイン君のお陰よ。ありがとう、ありがとう……」


 ルナは感動のあまり、涙を流していた。

 

 その後もルナは魔法の練習を続けた。

 何回か続けていくうちに、最初のころよりも魔法の扱いが上達していった。

 そして、ルナは氷の刃(アイス・エッジ)以外の攻撃魔法に加え、治癒(ヒール)解消(リフレッシュ)といった回復魔法もマスターした。

 その頃には既に夕方になっていたので、僕とルナは寮へ戻った。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ