第15話 デート……!?
僕はルナと共に【転移】し、闘技場から脱出した。
そして、女子寮の前に来た。
「えっ? ……ええっ!? ここは……!?」
「寮の前だよ」
ルナは地面に座ったままだったので、手を差し伸べた。
「ファイン君が今使った魔法って……」
「【転移】だよ。目標地点に瞬間移動する【空間魔法】さ」
「転移!? それって【失われた魔法】でしょ?……でも、ファイン君なら使えてもおかしくはないよね。……ねえ、ファイン君。おめでとう!」
「どうしたの?急に」
すると、ルナは衝撃的なことを言い出した。
「私に勝ったご褒美に……デートしてあげる!」
「えっ!?」
「負けちゃったのは悔しいけど、ファイン君のことは嫌いになったわけじゃないから、安心して。負けちゃったけど、むしろ清々しい気持ちかも!」
ルナは笑顔を取り戻していた。
だが、僕は勝った気がしなかった。
なんでだろう、不思議な気分だ。決闘には勝ったというのに。
不本意とはいえ、僕は女の子に辱めてしまったからだろうか?
「ほら、デートしてあげるって言ってるのだから、そんな顔しないの! それとも、私とでは嬉しくないの?」
「いや、そうじゃないけど。それよりも着替えて来なよ。……濡れているから」
「!!」
僕が指摘すると、ルナは思い出したかのように顔を真っ赤に染め、手でスカートを押さえた。
「もうっ、ファイン君のえっち……」
「な、なんで……!?」
ルナが小声で言った。
「じゃあ、30分後に着替えてここで待ち合わせね」
「わかった」
ルナは小走りで寮に入って行った。
20分後、僕は私服に着替えて寮の外でルナを待っていた。
それから5分ほど経ち、私服に着替えたルナがやってきた。
「えへへ、おまたせ」
ルナの私服は白色無地の肩出しシャツに、黒のミニスカートとニーソックスであった。
か、かわいい……。
その姿は大人っぽく、いつにも増して可愛らしかった。
僕が見惚れていると、ルナは感想を訊いてきた。
「……どうかな?」
「似合っていると思うよ」
「うふふっ、ありがとう。それじゃあ、行きましょう」
「ルナ」
「うん?」
「その……、さっきはごめん。剣を向けられて、怖かったよね?」
「ううん、気にしないで! それよりも私を助けるために、こうして寮の前まで転移したんだよね?ありがとう」
僕はルナに謝罪したが、ルナは許してくれた。
「じゃ、行きましょうか」
ルナは僕を商店街まで連れて行ってくれた。
異性とこうして出かけるのは初めてなので、僕は内心ドキドキしていた。
■■■■■
僕とルナは王都の商店街に到着した。
そう言えば、今日は人魔大戦の戦勝記念日だった。
そういうこともあってか、多くの人で賑わっていた。
中には、ルナに声をかける人も何人かいた。
どうやら、ルナは王都では人気者のようだ。
ルナが最初に立ち寄ったのは、八百屋だった。
「こんにちは!」
「こんにちは。おや、ルナちゃんじゃないか。その人は恋人さんかい?」
「そそそ、そんなんじゃないからっ!!」
店主の発言に、ルナは顔を赤くしていた。
かく言う僕も、内心ドキッとした。
八百屋でルナはリンゴやイチゴといった果物をいくつか買った。
ルナは果物が好きなのか、嬉しそうにしていた。
「荷物持ってあげるよ」
「いいの? ありがとう」
僕はルナの荷物を持ってあげることにした。
今度は衣料品店に寄った。
ルナは店内にあるファッションを片っ端から見て回った。
生憎、僕は衣類のことは詳しくはないが。
すると、ルナは一つの白いワンピースを見つけた。
「あっ、これこれ!」
ルナはワンピースと手に取り、そのまま試着室へと向かった。
「今から着替えるけど、覗いちゃダメよ?」
「の、覗かないよ!」
ルナの突然の発言に、僕はドキッとした。
数分後、ルナがワンピースを試着して出てきた。
「えへへっ、どうかな?」
「……!」
僕は不覚にも、目を奪われてしまった。
何だろう、この気持ちは……。
ルナのワンピース姿は予想以上に良く似合っていた。
派手な物ではなく、シンプルな白だからこそ似合っているのだ。
これほどの美人が他にいるだろうか?
もっとも、僕みたいな陰キャをルナが本気で相手にすることはないだろうけど。
「に、似合っていると思うよ」
「もうっ、ファイン君ったら……他に感想はないの?」
ルナはそう言って苦笑いしていた。
「そういえば、ファイン君は服買わないの?」
「そうだね、欲しい服とかはないし」
「じゃあ、ファイン君にはこれ買ってあげるね!」
そう言うと、ルナは僕に黒いロングコートを着せてくれた。
「うん! すごく似合っているわ!」
「ありがとう。お金は自分で払うよ」
「いいの、いいの! 私からのプレゼントってことで!」
僕はルナにコートを買ってもらうことになった。
その後、僕たちは衣料品店を後にした。
「お腹すいたね。ご飯にしましょう」
僕はルナと飲食店に入った。
僕はカレーライス、ルナはオムライスとパフェを注文した。
「いただきまーす。あむっ、もぐもぐ……。んー! 美味しい!」
ルナがおいしそうにオムライスを頬張っている。
ルナはオムライスをあっという間に完食した。
そして、先程の決闘について話し出した。
「私ね、剣の腕前には自信があったの。だって、今までお父様以外に負けたことがないもの。でもファイン君との決闘に負けたことでわかったの。私ってまだまだ未熟だってことを。特に、精神的にはね」
すると、ルナは続けてとんでもないことを言い出した。
「そこで……あなたに【剣術】の稽古をつけて欲しいの!」
「ちょっと待て。僕は【魔法使い】だぞ。魔法専門の人間に剣術修行をつけてもらおうだなんて、前代未聞だよ?」
「わかっているわ。でもファイン君は私に勝ったのだから、ファイン君なりの剣の使い方があると思うの」
そう言われても、僕は【魔法使い】だし。剣術はあまり得意ではないんだよなぁ。
さすがに断ろうかと思った。
しかし、ルナの可愛らしいお願いの仕方に、断れなくなった。
「ねえ、お願い! 一生のお願いよ! 私、もっと強くなって、いつかはお父様を超える騎士になりたいの!」
「……わかった。ただし、僕は【魔法使い】だから、剣のことよりは戦い方についての訓練になると思うけど、それでもいいかい?」
「ありがとう! それでいいわ」
その後、僕とルナは料理を食べた後、代金を払って退店した。