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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第4章 魔王復活~遥かなる旅へ
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第146話 旅を急ぐ者たち

 キングオーガを撃破した後、僕たちは帝都に戻る。

 そして城へ行き、玉座の間にいる皇帝ロバートに、キングオーガを倒したことを報告した。


「報告いたします。先程、キングオーガに変身した魔王四天王の一人、破滅のグロウを倒しました」

「そうか、でかしたぞ!」

「はい。これでガルシア帝国はひとまず安全かと思います」

「そうか。ガルシア帝国の危機を救ってくれたことを、国を代表して礼を言うぞ。国を救ってくれた貴公らには大いに報いたい。そこで、今夜は城で宴を行いたい」


 皇帝は、僕たちのために宴を開きたいという。

 しかし、これからドラグーン大陸に行き、後三ヶ月以内に紅蓮の宝玉を見つけ出さなくてはいけない。

 そして、それを魔王に渡さなくてはローランド王国の民が危険なのだ。

 そのため、僕たちはのんびりしている暇はないのだ。


「お気持ちはありがたいですが、僕たちは事情があって急いでドラグーン大陸に向かわなければ行けません」

「もう帝国を出ていくというのか? そうか。残念だが、急いでいるのならば仕方あるまい。ならば、せめてもの報いとして軍資金をやろう」

「軍資金ですか?」

「貴公らはドラグーン大陸へ行くと言ったな? 一億ゴールドやろう。それだけあれば足りるか?」

「十分過ぎるくらいです。ありがたくいただきます」


 僕たちは褒賞金として、一億ゴールドをもらった。

 それから、僕たちは街で馬車を売却した。

 これ以降の旅には、もう必要ないからだ。


 その後、僕たちは転移門(ゲート)で港町タキアへと向かった。

 一度行った場所へはすぐに行けるため、この魔法は何かと便利だ。


 そして、港でドラグーン大陸行きの船を探すことにした。

 すると、運がいいことに、一日にたった一本だけドラグーン大陸行きの便があるようだ。

 運賃は大人ひとりにつき十万ゴールドであり、距離にしては安いようだ。

 すぐにチケットを買い、船に乗ることにした。


 ドラグーン大陸行きの船は、大型客船であった。

 僕たちは、早速乗船した。

 中はかなり広々としている。

 そして、何日も海を旅するため、当然ベッドを備えた客室も完備されている。

 十分に、寛ぐことができそうだ。

 出航時刻を迎え、ドラグーン大陸行きの船はいよいよ港を出る。


■■■■■


 魔王アガレスは今、ローランド王国のとある場所にいた。

 今は夜。

 魔王は自身の弱点となる太陽を避けるために、夜を待ってから行動を開始した。

 時折雲に隠れながらも、空には三日月が浮かんでいた。


「グロウめ、敗れたか。まあよい、奴は四天王の中でも(・・・・・・・・・)最弱(・・)! 勇者どもに敗れて当然の結果だ。そして、ルナ・セラフィーも順調に育っているようだな」


 魔王は一人つぶやく。

 アガレスには何か目論みがあるようだ。


 魔王は、唐突に魔王城の通信室へ交信(コール)した。

 しばらくして、カミラが通話に出た。

 目の前には、カミラの映像が浮かび上がる。


『魔王様、お呼びでしょうか』

「カミラか。ジャークを呼べ」

『畏まりました』


 それから、しばらくして四天王の一人【激怒のジャーク】が通信室に現れた。

 ジャークはなぜか怒った様子で通信に出た。


『おい、誰だ!? このオレを呼ぶヤツはよォ!! こちとらヒマじゃねぇんだぞ!! これから玉座の間へ行き、魔王様に報告しなくちゃあ……』

「私だ」

『エッ!? こ、こ、こ、これはこれは魔王様、大変失礼いたしました!!』


 ジャークは、まさか通話相手が魔王だとは思わず、動揺を隠せなかった。

 そして、無礼を働いたことを謝罪する。


(カミラの奴、私が呼んでいることをきちんと伝えたのか?)

「まあよい。それよりもジャークよ、ドラグーン大陸攻略の状況はどうなっている?」

『はっ、申し訳ありません。ドラグーン大陸侵攻中に、大陸中央部の森林地帯にて【謎の小娘】に遭いました』

「謎の小娘?」

『はい。その小娘は異常なまでに強く、我々の知らない数々の強大な魔法を使いました。その小娘に全く歯が立たず、我が軍は甚大な被害を被りました。よって、撤退を余儀なくされました』

「それで、ジャークよ。その娘の外観的な特徴は憶えているか?」

『はっ。そいつは小柄なヤツでしたが、角と翼が(・・・・)生えていました(・・・・・・・)

(角と翼だと? なるほど。どうやら、その娘は只者ではないようだ)


 どうやら、魔王にはその娘について心当たりがあるようだ。


『魔王様、今一度オレに兵を与えてください! 今度こそ、このオレにあの小娘を討たせてください!!』


 ジャークは右手を握りながら言う。

 歯も食いしばらせており、負けたことが余程悔しいようだ。


「ジャークよ、私怨に駆られるな。その娘はお前が(・・・)逆立ちしたとて(・・・・・・・)抗える相手ではない(・・・・・・・・・)

『はっ、申し訳ありません……』

「まあよい。ジャークよ、お前には別の仕事を与える。お前はもう一度ドラグーン大陸へ行け。そして、ギグマン帝国の帝都外れにある遺跡へ行くのだ。そこで星の英雄たち(スター・ヒーローズ)を迎え撃つのだ。ヤツらはおそらくそこへ来るはずだ。兵を何人か連れて行って構わん」

『はっ、ありがたき幸せ! 勇者どもは、この【激怒のジャーク】が必ず討ち取って御覧に入れましょう。では、失礼いたします』


 魔王から勇者討伐を任され、ジャークは意気揚々としていた。

 そして、通信を切ろうとした。


「待て、ジャーク」

『なんでしょうか?』

「ルナ・セラフィーという女騎士だけは殺さず、生け捕りにしろ。そして、魔王城へと連れて帰れ。他の者は殺して構わん。上手く行ったらまた報告せよ」

『はっ、仰せのままに』

「準備が出来次第、すぐに出発しろ」

『はっ』


 魔王は、ジャークとの通信を切った。


「フン、相変わらず攻撃的な性格だ。もっとも、戦闘面では非常に頼りになるのだがな。そんな事よりも、俺は俺で青天の宝玉を探すとしよう。見つけるには、まだまだ時間がかかりそうだが、時間はいくらでもある。ゆっくり探すとしよう」


 魔王はエノウ大陸での旅路を再開する。

 全ては人類滅亡のために……。

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