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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第4章 魔王復活~遥かなる旅へ
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第145話 悪鬼降臨

 追い詰められたグロウは、オーガに変身した。

 やはり四天王なだけはあって、一筋縄では行かない。

 まずは、鑑定で相手の能力を見極める。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


・キングオーガ(♂) LV:84


種族:悪魔


HP:8000/8000

MP:3000/3000

力4500

魔力1850

器用さ:534

素早さ:781

防御:3000

耐魔:1240


魔法:炎魔法 LV.8、闇魔法LV.7


スキル:無詠唱、状態異常無効


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 キングオーガはグロウの圧倒的な体力を引き継いだ上で、その能力をさらに伸ばしている。

 その攻撃力はすさまじく、喰らったら一撃で即死級のダメージとなることだろう。

 もちろん、生命力と防御力も非常に高く、生半可な攻撃では傷ひとつつけられないだろう。

 スキルは少ないが、まだ多くの技を隠し持っている可能性が高いので注意が必要だ。


「セレーネ、グロウがキングオーガに変身した。だが、君は引き続き結界で帝都を守れ。まだ油断はできない」

『わかりました』


 僕は念話(テレパシー)でセレーネに指示を出す。


「もし、僕たちが負けたら……セレーネ、君は全力で逃げてくれ」

『あら、ファイン様にしては随分と弱気ですね。大丈夫ですわ、私はファイン様が負けるなんて、微塵も思っていませんわ。それに、私が逃げたら、帝都バリアスの人々が危険に晒されます。ですから、私は逃げません。例え何があっても』

「ふっ、それもそうだな」


 セレーネは何があっても、逃げ出さないつもりのようだ。

 見かけによらず、セレーネは強い子だ。

 彼女がいたからこそ、今までの戦いを乗り切ることができたのだ。

 そして、それは今回も同じだ。

 セレーネが帝都バリアスを守っているからこそ、僕たちはキングオーガとの戦いに専念できる。


 まずは自分たちに防御鎧(プロテクト)をかける。

 これで少しでもいいので、被ダメージを軽減したい。


「今までの礼だ。貴様らは決して生きては帰さん! 必ず殺す!!」

「こいつはヤバそうだな」

「ああ、気を付けろ。ヤツのモーニングスターを喰らったら即死だ」

「ああ。だが、こんな強えヤツがいるからこそ、戦いは燃えるってモンだぜ!!」

「そうだな。……いくぞ!」


 僕たちから先制攻撃を仕掛けることにした。


「ふんッ!」


 キングオーガは地面を思いっきり踏んづけた。

 周囲に土煙が発生し、相手の姿が見えなくなった。

 これは目眩ましか。

 ということは……。


 そう思った直後、土煙の中から鉄球が飛んできた。

 僕たちは散開してすぐにその場を離れる。

 キングオーガはモーニングスターを戻すと、すぐに僕へ向かってダッシュする。

 そのスピードは、巨体に見合わず結構速い。

 一方、動きは直線的だ。

 つまり、攻撃の的を絞りやすいということだ。

 そこで、僕は指先から稲妻撃(サンダーボルト)を放った。

 しかし、キングオーガはジャンプして避けた。

 そして、僕の目の前に着地する。

 僕はすぐに距離を取った。

 キングオーガの着地と同時に、衝撃波と土煙が発生した。


「なんて衝撃だ!」


 予想はしていたが、凄まじい衝撃だ。

 キングオーガは着地後、すぐさまモーニングスターを飛ばして攻撃する。

 ターゲットはルナだ。

 すると、ヒューイがルナの前に出て、盾で庇った。


「うおッ!? なんてパワーだッ!?」


 ヒューイはダメージこそ受けなかったものの、キングオーガの圧倒的パワーにより、盾のガードを崩された。

 しかし、モーニングスターの鉄球はまだキングオーガのもとには戻っていない。

 つまり、今が攻撃のクールタイムだ。

 その隙に、ルナが前に出て一気に距離を詰める。

 あまりのスピードに、キングオーガはルナに接近を許してしまう。

 その巨体ゆえに、素早い動きはあまり得意ではないようだ。


 そして、ルナはキングオーガに肉薄すると光輝の剣(シャイニング・ソード)で攻撃する。

 キングオーガは左腕で防御した。

 その皮膚は非常に硬く、かすり傷一つ付けられていない。


「なんて硬さなのっ!?」

「愚か者め!! そんなオモチャで、俺様に傷をつけられると思ったか!!」


 キングオーガはすぐに左手で反撃する。

 ルナはかわしきれずに拳を喰らってしまい、そのまま木に激突してしまった。

 しかし、ルナは攻撃を受ける瞬間に、右腕に防盾(シールド)を展開していた。

 そのため、致命傷はなんとか避けられた。


「ぬうう、小賢しい小娘が! 俺様の攻撃を咄嗟に防ぐとは! 消し飛ばしてくれるわ!」


 キングオーガはそう言うと、自らの左手を上げた。

 すると、頭上には火炎爆弾(フレイムボム)が顕現した。

 それも、六発もだ。


「おいおいおいおい、こりゃあ火炎爆弾(フレイムボム)かよ!? オレ様の盾でも六発は防ぎきれないぜ!!」

「二人とも、僕の傍に寄れ!」


 キングオーガは火炎爆弾(フレイムボム)を放った。

 僕は結界(バリアー)を展開して防御する。


 周囲では大爆発が起こった。

 なんとか防御することができたものの、大爆発により周囲の木々が燃え尽きてしまった。


「チクショー、なんて威力なんだ!! 辺り一面メチャクチャだぜ!!」

「ウオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」


 キングオーガは突然、けたたましく咆哮してきた。

 あまりのうるささに、ルナとヒューイは耳を塞いだ。

 僕はすぐに防音結界を張る。


 キングオーガは続けて、モーニングスターで攻撃する。

 巨大な鉄球が、物凄い勢いでこちらに向かって来る。

 全員、その攻撃を回避する。

 鉄球の凄まじい威力により、土煙が発生した。

 これを喰らったら、ひとたまりもない。

 もし一撃でも受けたら、終わりだ。

 そして、土煙はすぐに晴れた。


「む? あの小僧がいないぞ」


 僕は鉄球が着弾する前に、すでにキングオーガの背後に瞬間移動(テレポート)していた。

 相手の背後は今、無防備。

 今こそ好機だ。

 そして、聖剣で頭を狙って斬ろうとした。


「そう来ると思っていたぞ」


 気がついたら、鉄球が僕の方に向かっていた。

 キングオーガはすでに、モーニングスターを戻すと同時に、自分の背後へと鉄球を回していた。

 僕はヤツに誘導されていたのだ。

 そのため、もう一度瞬間移動(テレポート)して無理矢理かわした。


「やはり貴様、瞬間移動(テレポート)するようだな。あの時俺様を不意打ちしたのもそれか。二度と俺様の背後から攻撃できると思うな」


 すでに、僕の行動はバレていた。

 キングオーガはモーニングスターで攻撃する。

 僕は素早くかわし、一気に懐に潜り込んだ。

 そして、聖剣で心臓を狙い刺突しようとする。


 すると、キングオーガは飛んで行ったモーニングスターを無理矢理自分の方に引き戻した。

 鉄球が僕の方に向かってくる。


 僕は瞬間移動テレポートで背後に回り込んだ。

 そして、キングオーガの脳天めがけて聖剣を突き刺そうとした。

 ところが、鉄球はすでに僕の近くにまで飛んできていた。

 僕は防盾(シールド)で防御した。


「なんて威力だ!」


 直接のダメージこそ受けなかったものの、衝撃で後方に吹き飛されてしまった。


「言ったはずだぞ? もう背後から俺様には攻撃できん! そしてッ!」


 キングオーガはそう言うと、左手を頭上にあげる。

 すると、無数の暗黒球(ダークボール)が浮かび上がった。


暗黒星ダークスター!」


 キングオーガがその手を前に出すと、球が僕たちに向かって飛んできた。

 僕は迫って来る弾を、どうにか回避する。


「なに!?」


 ところが、振り返ると暗黒星ダークスターは軌道を変えて再び僕の方へと迫って来た。

 隙を突いてキングオーガに近づきたいが、躱すことで精一杯だ。

 そこで、僕は風斬刃ウィンドブレイドで一気に薙ぎ払う。

 これで、僕の付近はフリーになった。


 ルナは軌道を変える暗黒星ダークスターを上手いこと掻い潜り、キングオーガの背後へと回り込んだ。

 そして、光輝の剣(シャイニング・ソード)での斬撃を狙う。

 しかし、キングオーガには勘づかれてしまい、そのままモーニングスターで攻撃を行った。

 ルナは咄嗟に防盾(シールド)で防御する。

 しかし、あまりの威力に吹き飛されてしまう。


「がっ……!!」


 そして、ルナはそのまま木にぶつかってしまった。

 ヒューイは盾で防御するものの、軌道を変える暗黒星ダークスターに対処しきれず、被弾してしまう。

 僕は周囲の暗黒星を薙ぎ払った。


「二人とも、大丈夫か?」

「ええ、何とか」


 僕は傷ついた二人をすぐに回復する。


「フハハハハ、見たか! 四天王の俺様には、何人たりとも抗うことはできぬ! さあ、すぐに引導を渡してやろう……」


 キングオーガは、自分は誰にも負けないと言って笑っている。

 確かに、アイツに攻撃を当てる隙は少ない。

 そして、防御力が非常に高く、仮に攻撃を当てたとしてもダメージを与えることが出来ない。


「バラバラに攻撃しても意味がない。こうなったら、三人で連携してアイツに反撃の隙を与えることなく追い詰めるぞ!」

「ええ!」

「おう!」


 僕は自分たちに高速(ファスト)をかける。

 これで、今まで以上に素早く動くことが可能だ。

 それに加えて、身体強化ブーストも使い、全体的に能力を底上げする。


「行くぞ!」


 まず、ヒューイが盾を構えて前を走る。

 中列には僕で、その後ろにはルナが続く。


「ふんっ!」


 キングオーガはモーニングスターを振って攻撃する。

 ヒューイが構えていた盾で防御した。

 身体強化ブーストで腕力などが底上げされているため、ヒューイは鉄球を難なく受け止める。

 さすがはパーティーの守護者ガーディアンだ。


 ヒューイが攻撃を受け止めている隙に、僕とルナでキングオーガの左右に回り込む。

 しかし、相手がこの状況をただ黙って見ているほど優しくはない。

 キングオーガはすぐにモーニングスターを振り回して攻撃する。


 僕とルナは上手くジャンプで躱し、懐に潜り込む。

 スピードはこちらの方が上回っている為、接近すること自体は容易だ。

 そして、キングオーガに肉薄し、それぞれ剣で攻撃する。

 ちなみに、僕たちの武器には既に強化魔法エンチャントをかけておいた。

 そのため、キングオーガの身体には小さいながらも傷を付けることが出来た。


「ぬうう……小童どもが、小癪な……! 俺様の身体に傷を付けるとは!」


 キングオーガは、僕に向かってモーニングスターを振り下ろして攻撃する。

 しかし、動きが大振り且つ単調である。

 そのため、回避自体は容易だ。

 僕たちは引き続き、キングオーガに対して絶え間なく攻撃を行う。


「図に乗るなよ、暗黒星ダークスター!」


 キングオーガは、再びあの闇魔法を使って来た。

 僕は風魔法【竜巻トルネード】を複数発動し、キングオーガの魔法を相殺する。


「なにぃ!?」


 キングオーガは予想外の出来事に驚愕している。

 だが、僕はかつて世界を救った【大賢者ユリウス】である。

 つまり、この程度の魔法を消すことなど訳ないのだ。


 そして、僕は敢えて正面からキングオーガに走って近づく。

 すると、予想通りキングオーガはモーニングスターを振り下ろした。

 僕は瞬間移動テレポートで背後に回り込んだ。


 キングオーガは当然、後ろに振り返る。

 しかし、背後に僕はいない。


 僕はキングオーガの前方に再び瞬間移動テレポートしていた。

 そう、背後に回り込んだのはフェイントである。

 そして、頭上から赤熱剣ヒートソードでキングオーガの脳天を貫いた。


「ギャアアアアアアアアッ!!」


 キングオーガはけたたましい悲鳴を上げる。

 僕は聖剣を刺したまま、一旦離脱する。

 だが、これで終わりではない。

 キングオーガはまだ生きているのだ。

 そのため、次の攻撃で確実にとどめを刺す。


「今だ、ルナ! ありったけの魔法をブチ込めッ!!」

「ええ!」


 ルナが剣を納め、左手を天高く掲げた。

 そう、稲妻斬撃サンダースラッシュを使うのだ。

 以前にも話したが、対魔族用の必殺魔法。

 つまり、四天王たるキングオーガにも有効なはずだ。


稲妻斬撃サンダースラッシュ!」


 上空に現れた暗雲から無数の雷と、稲妻の剣がキングオーガを貫いた。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 キングオーガは断末魔の悲鳴を上げ、真っ二つに切り裂かれた。


「俺様を倒すとは……貴様らは一体、何者なんだ……?」


 キングオーガはそう言い残すと、絶命した。

 これで、魔王四天王の一人である【破滅のグロウ】をようやく倒すことができた。

 しかし、まだ戦いは終わりではない。

 グロウ達をここまで運んで来た、あの飛空艇がまだ残っている。

 飛空艇はグロウの敗北を悟ると、反転して西へ向かおうとしている。

 魔王城に逃げるつもりのようだが、逃がす訳には行かない。

 しかし、ここから上空に攻撃することは容易ではない。


「出でよ、火の精霊サラマンダー」


 そこで僕は、サラマンダーを召喚することにした。

 真っ赤な炎のオーラと共に、サラマンダーは姿を現した。

 火の精霊は、六大精霊の中でも特に火力に優れた魔法を扱うことが出来る。

 そのため、あの大きな飛空艇を撃ち落すには最適だと言える。


火炎爆弾フレイムボム!」


 僕が魔法を唱えると、サラマンダーは右手から巨大な火の玉を発射した。

 普段、僕たちが使っている火炎爆弾フレイムボムよりも一回り大きい。

 当然、精霊が使う一般魔法は、人間のものよりも高威力なのだ。


 火炎爆弾フレイムボムは、高速で飛空艇へと向かって行った。

 そして、着弾と同時に大爆発を起こした。

 この大爆発により、飛空艇は海の方へと落下していった。

 これで、ようやく一つの戦いを終わらせることが出来た。


 しかし、のんびりしている暇はない。

 この後は、皇帝ロバートに最低限の報告だけ済ませる。

 そして、船でドラグーン大陸へと向かい、三ヶ月以内に紅蓮の宝玉を探しに行く。

 ローランド王国の人々の命運がかかっているのだ。

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