第13話 決闘
僕はルナに決闘を申し込まれた。
翌日、学園内の闘技場で勝負を行うことになった。
今日は土曜日なので授業はないが、多くのクラスメイトたちが観に来た。
僕とルナは対面した。そして、審判役としてレナ先生が来た。
「今から決闘のルール説明を行います。今回の決闘は、ルナさんの希望により【剣術】での勝負となります。そのため、攻撃・回復魔法の使用は禁止です。ただし、スキルや一部の補助魔法、剣技の使用は認められます。制限時間は15分。その間に攻撃を多く当てた方の勝ちです。敗北に関してですが、剣を落とされたり、場外に突き飛ばされたら『負け』です。また、降参を認めた場合でも『負け』となります。ちなみに、この闘技場には高度な【結界魔法】が張られています。そのため、いくら攻撃しても怪我をする心配はありません。最後に何か質問はありますか?」
「ないです」
今の説明でルールは理解できた。
ルナは【剣士】で、高い攻撃力やスピードを誇っている。
もちろん、剣術の腕も非常に優れており、【剣技】による非常に強力な攻撃が可能である。
ただ、ルナはまだ何か隠しているかもしれないので、用心して挑もうと思う。
一方、僕は【魔法使い】であるが、ある程度であれば剣を扱える。
とは言え、本業の剣士相手に剣術勝負は不利である。
「行けー、ルナ様!! 平民なんかやっつけちゃってください!!」
「ファインも頑張れー!!」
アッカスとディオーランが応援していた。
「二人とも、準備はいいですか? レディー……ゴー!!」
審判の合図とともに、ルナが僕に猛スピードで肉薄し、下から斬撃してきた。
「は、速い!」
僕は咄嗟にルナの攻撃を、剣でガードした。
右手に強い力が加わっているのを感じるため、刃に左手を添えた。
観客席からも歓声が上がった。
「思った通り、なかなかやるわね。今までの対戦者の多くはこの攻撃で脱落していったわ」
僕は動体視力が少しだけ優れているので、何とかルナのスピードに反応できた。
今の発言からも分かるが、やはりルナは只者ではないらしい。
「でも、これなら……どうかしら?」
そう言うと、ルナは突然僕の左側から背後に回り込んできた。
まずい、このままではガードが間に合わない。
そのため、僕は一旦ルナから距離を取った。
「距離を取ったからといって、安全だと思って?」
ルナは剣を高く上げた。すると、ルナは周囲に冷気を纏った。
「剣技【氷結剣】!」
ルナが剣を振り下ろすと、僕の足元に冷気が発生した。
危険を感じた僕はすぐに右へ避けた。
その直後、巨大な氷の刃が現れた。
僕は避けたので攻撃はくらわなかったが、ルナはすかさず僕に肉薄した。
しまった。今の剣技は囮だったのか。
「甘いわね!」
僕はすぐさまルナに対して斬撃した。
しかし、ルナにジャンプで躱され、あっさり上を取られてしまった。
僕は上を見上げた。
あっ。
一瞬だけだが、ルナのスカートの中が見えてしまった。
いやいや、見ようと思っていたわけじゃない。
危うく気を取られるところだったが、僕は何とかルナの攻撃を回避した。
まさか、今のもルナの作戦か?いや、さすがにそんな訳はないか。
その後もルナは、僕に対して執拗に攻撃してきた。
しかし、ルナの戦闘スタイルがわかってきた。
ルナは『攻撃重視』のスタイルだ。
そのため、僕が離れるとルナは接近してくる。
一見強そうだが、防御面が疎かになってしまっている。
対して、僕は『生存重視』の立ち回りを心掛けている。
攻撃時以外は、相手と付かず離れずの距離を保つようにしているのだ。
しばらくは最小限の動きで、ルナの攻撃を受け流すことにする。
ルナはまた僕に近づいて攻撃した。
「防御してばかりでは、面白くないわね」
そう言うと、ルナはなぜか僕から距離を取った。
「見せてあげるわ。お母様直伝の技を……」
ルナは剣を構えた。
何をする気だ?
そう思った矢先のことだった。
「【剣の舞】!」
「なっ、分身した!?」
否、それは残像だった。
ルナがあまりに速く動くため、残像が発生したのだ。
そして、凄まじいスピードでルナは僕に剣戟を浴びせてきた。
だが……。
「そんな!? 剣の舞を凌ぎ切るなんて……!!」
ルナは自慢の必殺技を僕に防がれたことで、動揺を隠せなかった。
「くっ、でもまだ勝負はついてないわ!」
ルナは再度僕に立ち向かってきた。
しかし、剣の舞で激しい動きをしたからか、先程よりも動きが少し鈍い。
今だ!
「きゃあっ!」
「おおおおおっ……!?」
僕は隙を突いて、ルナに一撃入れることが出来た。
観客席からも動揺の声が聞こえた。
「まず一撃目」
「くっ、何ですって……!? さっきまで防戦一方だったのに……。でも今のはまぐれよ。まぐれは二度もないわ!」
ルナは焦って僕に突撃してきた。
しかし、僕はルナの攻撃を躱し、反撃を入れた。
「痛っ!」
ルナはお腹を押さえ、俯いた。
そんなに痛そうにされたら、攻撃しづらくなるじゃないか。
とはいえ、真剣勝負の場だ。手加減はしない。
僕はルナに立ち向かった。
「今度は僕の番だ」
すると、ルナは俯いたままニヤリと嗤った。
一瞬ゾッとした気分になったが、僕は構わずルナに攻撃した。
しかし、ルナに猛スピードで回避されてしまった。
「なにっ!?」
ルナは【身体強化】を使っていた。
その直後、ルナは肉薄した。
「ううっ!? な、なにぃ……?」
僕はルナの剣戟を受けてしまった。見切れなかった。
身体強化したルナがこれほど速いとは……。
「うふふっ、あっという間に逆転しちゃうよ?」
ルナは得意げに挑発した。
そして、ルナは再び僕に急接近した。
僕はルナを迎撃するが、あっさりと背後に回り込まれ、剣戟をくらった。
「ぐわっ!」
ルナは一旦距離を取り、剣を構えた。
「これでとどめよ!【剣の舞】!!」
ルナは再び剣の舞を発動した。
先程よりもさらにスピードも剣戟も速い。
何とかガードしようと剣を構える。
しかし、その攻撃の全てを防ぐことはできず、何発か喰らってしまった。
そして……。
「しまった!!」
まずいっ!
僕の剣は頭上に弾き飛ばされ、そのまま宙を舞ってしまった。