第136話 破滅のグロウ(その1)
僕たちの前には、【破滅のグロウ】と名乗る魔王四天王の一人が現れた。
こいつは見るからに、強敵であることは分かる。
そして、先程の台詞からも分かるようにクロノス以上の実力を持っているようだ。
この敵は、今まで以上に気を引き締めて挑まないといけない。
「改めて自己紹介させてもらおう。俺は魔王四天王の一人、【破滅のグロウ】だ。星の英雄たちよ、魔王様の命により貴様らを始末させてもらうぞ!」
破滅のグロウはそう言うと、モーニングスターを構えた。
「なかなか強そうな敵が現れたな! どれ、このヒューイ・サウスリー様が相手をしてやるぜ!!」
「気を付けろヒューイ。ヤツは今まで以上の強敵だ。生半可な覚悟では勝てないぞ!」
「ヘッ、オレ様を誰だと思ってやがるんだ! そんなことは、承知の上よ!」
ヒューイは強敵を前にして、相変わらず好戦的だ。
僕はグロウを鑑定することにした。
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・グロウ・タウント LV:82
種族:魔人族(男) 320歳
加護属性:火
クラス:魔王四天王
HP:5000/5000
MP:999/999
力:3000
魔力:1099
器用さ:566
素早さ:654
防御:1200
耐魔:999
魔法:炎魔法 LV.7
スキル:身体強化、自己再生、無詠唱、
状態異常無効、???
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さすがは魔王四天王なだけはある。
破滅のグロウは、生命力や腕力などが圧倒的に高い。
一方、体力系の能力に対して、魔力は低めと言った印象だ。
それでも、人間よりは遥かに高いが。
そして、素早さと器用さでようやく人間並みの数値だ。
このように、グロウはバリバリの肉体派魔族であることは間違いない。
「みんな、ヤツは見ての通り接近戦を得意としている。できるだけ距離を取って戦うんだ」
「おう!」
「四人まとめてかかって来い!」
グロウは悠然と立ちながら、僕たちを挑発する。
すると、各々仲間たちが動き出した。
「それじゃあ、遠慮なく行くぜ!!」
ヒューイは斧と盾を構えながら、最前列を突っ走る。
ルナは光輝の剣を構え、ヒューイの後ろを付いて行く。
そして、セレーネは後方から防御鎧を全員にかける。
全員、僕の指示がなくても各自の判断で行動できるようにまで成長している。
そして、僕はルナの右側を並走する。
つまり、僕もヒューイの後ろだ。
僕は右翼、ルナは左翼から攻めるつもりだ。
まず先制攻撃として、氷の槍をグロウの頭部に向けて放つ。
グロウは左腕で防御した。
次に接近をかけていたヒューイが斧で攻撃する。
グロウは左腕で防御すると同時に、モーニングスターで反撃してきた。
ヒューイは左手の盾で、グロウの一撃を防御した。
すると、ルナがジャンプして、グロウの頭を狙って斬擊を放つ。
グロウはヒューイを吹き飛ばすと、ルナの攻撃をモーニングスターで防御した。
そして、そのままの勢いでルナの攻撃を押し返した。
その隙に僕はグロウの背後に回り込んだ。
僕は聖剣で、グロウの心臓めがけて刺突した。
ところが、グロウは振り返ると同時に、モーニングスターを振り回してきた。
僕は咄嗟にジャンプして躱した。
「愚か者め! 背後からの攻撃が通用するとでも思っていたのか!」
グロウには、僕の行動が読まれていた。
やはり、魔王四天王だけあって勘が良い。
「防御ばかりでは面白くないな。今度はこちらから行くぞ!」
グロウはモーニングスターを地面に叩きつけた。
物凄い衝撃が地面に伝わる。
それと同時に、土煙でグロウの姿が見えなくなる。
これは目くらましか。
すると、グロウは巨体に見合わぬ勢いでジャンプした。
向かった先はセレーネの方だ。
まさか、最初に回復役を潰す気か?
まずい、このままでは瞬間移動が間に合わない!
グロウは着地すると、セレーネに対してモーニングスターを振り下ろした。
しかし、ヒューイがすぐに駆け付け、盾でセレーネを守った。
「うおおおおっ、何てパワーだッ!」
「フン、小童がッ! その程度の盾で、わしの攻撃を防ぎきれると思っていたのか!!」
グロウはモーニングスターで、ヒューイを弾き飛ばす。
一方のヒューイも、盾を上手く使ってダメージを最小限に抑えた。
今度は、僕とルナがそれぞれ別方向からグロウに接近する。
僕は走りながら、風斬刃を放つ。
「ふんっ!」
グロウはモーニングスターを振り、風斬刃を弾き飛ばす。
その間に、僕とルナのグロウに対する距離は縮まる。
しかし、グロウもただ黙って見ている訳ではなかった。
グロウは自身の身体ごとあり得ない速さで回転しながら、モーニングスターをぶん回した。
グロウの周囲には凄まじい風が発生し、近づくことすら困難になった。
すると、グロウは次に自身から最も近いルナに狙いを定めた。
グロウは跳躍して一気にルナへと距離を詰め、右足でルナを踏み潰そうとした。
「むっ?」
しかし、ルナはいつの間にかグロウの攻撃を避けていた。
回避する瞬間が土煙で見えなかった。
今度はヒューイがグロウに向かって走る。
ヒューイは跳躍すると、斧でグロウの頭部を狙った。
「おりゃああああああっ!!」
「甘いわッ!! 火炎弾!!」
グロウは火炎弾をヒューイに放った。
「ぐおおおおおおおおッ!?」
ヒューイは空中にいたため、回避できずに喰らってしまう。
そして、ヒューイは全身血だらけとなり、瀕死の重傷を負ってしまった。
「大丈夫ですか、ヒューイさん!? 特級治癒!」
セレーネの回復魔法により、ヒューイの傷は全回復した。
「サンキュー、セレーネ。助かったぜ」
「相手は魔王四天王なのですよ。魔力は私達人類よりも高いですから、当然魔法にも警戒しなければなりません。特にヒューイさんは前衛職ですので、耐魔は低いはずですから、尚更魔法には気をつけなければなりません」
「お、おう。そうだな」
「やはり、ヒーラーは厄介だな。戦いにおいて、やはりヒーラーは真っ先に潰しておかねばならん!」
グロウはそう言うと、セレーネに向かって突撃する。
「オレがいることを忘れてもらっちゃあ困るぜ!!」
ヒューイはそう言うと、盾を構えてグロウの前に立ちはだかる。
「よかろう、まずは貴様からだ!」
グロウは立ちはだかるヒューイに対して、モーニングスターを振り下ろした。
ヒューイは盾でグロウの一撃をガードした。
「出でよ、水の精霊ウンディーネ」
その隙に、セレーネは水の精霊ウンディーネを呼び出した。
「氷の槍!」
セレーネはウンディーネの力を借り、氷の槍を三発撃った。
ウンディーネは水を司る精霊なので、当然ながら通常魔法を使うことも可能だ。
そして、グロウの頭部に氷の槍が直撃した。
ところが、頭から少し血が出てきただけで、グロウは大ダメージを受けた素振りを見せていない。
「くっ……!」
「愚か者め! その程度の魔法が俺に効くとでも思っていたのか!」
グロウは目の前のヒューイを弾き飛ばした。
「こっちだ!」
僕はグロウの注意を引く。
そして、僕は剣を縦に振り、氷結剣を放つ。
グロウはモーニングスターを横に薙ぎ、アイスブランドを砕いた。
グロウが動きを止めている隙に、僕は走って接近する。
すると、グロウはモーニングスターを振り下ろし、僕を迎撃した。
僕は一歩左へ、最小限の動きで躱した。
今度は、入れ替わりでルナが前に出てきた。
ルナはモーニングスターの棒の上に乗ると、そのまま走ってグロウへと肉薄する。
そして、光輝の剣をレイピア状にして、グロウの右目へと突き刺した。
「グオオオオオオオオッ!?」
グロウは苦悶の叫び声をあげる。
いくら頑丈とはいえ、目を刺されればひとたまりもないだろう。
ルナはレイピアを軸にし、そのままの勢いで宙返りしてグロウの背後に着地した。
「よくもおれに傷を……!!」
グロウは左手で、自身の右目を押さえた。
その隙に僕は、グロウの右側に回り込んだ。
そして、ジャンプして頭部に聖剣の一撃を与えようとした。
しかし、グロウは僕の動きを察知し、モーニングスターで迎撃してきた。
僕はグロウの一撃を、右に動くことで回避した。
これに伴い、聖剣の間合いから離れてしまった。
そのため、僕は風斬刃をグロウに向けて放った。
風の刃はグロウの胴体に命中し、傷口からは血が出てきた。
しかし、与えられたダメージは浅いようだ。
さすがは魔王四天王と言うべきか、その防御力は非常に高い。
そして、右目の傷はすでに回復していた。
「その程度の攻撃で、俺を倒せると思っていたのか!」
グロウはまだかなり余裕があるようだ。
さすがは魔王四天王である。
いくら聖剣の一撃でも、かすり傷では致命傷にはならないようだ。
「とは言え、さすがは魔王様が危険視する勇者パーティーなだけのことはある。認めよう、貴様らの力を」
グロウはそう言って、再びモーニングスターを構えた。