第130話 聖剣エクスカリバー
僕たちはクラスチェンジを経たことによって、今まで以上にパワーアップすることができた。
そんな僕たちに、ローラ陛下は改めて話しかける。
「ファインさん、グランヴァル帝国には【聖剣エクスカリバー】が封印されています」
「聖剣エクスカリバーが?」
聖剣エクスカリバーは、かつて三百年前の人魔大戦の時に、勇者が魔王と戦った際に用いられたとされる強力な武器だ。
その効果は、通常の武器や魔法では致命傷を与えづらい魔族に対して、大ダメージを与えるというもの。
その聖剣があれば、魔族に対して互角以上に戦うことができるだろう。
僕は、ローラ陛下に聖剣が封印されている場所を聞くことにした。
「その聖剣が封印されている場所はどこですか?」
「帝都の北にある森の中の遺跡にあるそうです。ここから歩いて約一時間はかかると言われています。ですが、一つ問題が……」
「その問題と言うのは?」
「遺跡の入口には、侵入者避けの結界が張られていると聞きます。その結界を解かない限り、中に入れないでしょう」
「わかりました。有力な情報、ありがとうございます」
僕たちは早速、その遺跡に向かうことにした。
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帝都を出た僕たちは、馬に乗って北に進む。
辺り一面はひたすら草原が広がっており、遠くには山も見える。
出発からおよそ三十分が経過し、森の中へと入る。
この森に例の遺跡があるそうだ。
そして、森の中に遺跡の入口を発見した。
「ここがローラ陛下の言っていた遺跡の入口か」
「そうみたいね」
「ですが、強い魔力を感じます」
セレーネの言う通り、遺跡の入口からは強い魔力を感じる。
僕は近くにあった小石を投げつけた。
すると、小石は空中で弾かれてしまった。
ローラ陛下の言う通り、入口には結界が張られているようだ。
これを解除するか破壊しない限り、中に入ることはできない。
辺りも見渡してみたが、当然スイッチらしき物は見当たらない。
そこで、一か八か結界を破壊することを試みる。
僕は右手を天高く掲げた。
空には雷雲がかかった。
「稲妻斬撃!」
暗雲からは、巨大な稲妻の剣が結界めがけて降り注いだ。
しかし、案の定結界は壊れなかった。
ダメだと思った直後、突然結界はまるでガラスが割れるかのように壊れた。
「さっすがファインだぜ! 結界をブチ壊しちまうなんてよぉ!」
予想以上に簡単に結界を破壊できた為、僕は拍子抜けしていた。
そんなことはさておき、僕たちは遺跡の中へと入って行った。
遺跡に入り、ひたすら階段を下る。
しばらく進むと、広い空間に出た。
周囲には、複数の篝火が設置されている。
そして、その中心の台には一本の剣が刺さっていた。
石碑には、確かに【聖剣エクスカリバー】と書かれている。
「これが聖剣か。見た目は何の変哲もない普通の剣じゃねーか」
聖剣エクスカリバーの刀身は長めで、色は白銀である。
柄は金色で、鍔には赤色の宝石がはめ込まれていた。
ヒューイの言う通り、見た目は少し豪華な剣といった印象で、聖剣という割には何か特別な力を感じるということは一切ない。
第一次人魔大戦にて、デウスは人前から忽然と姿を消してしまったが、不思議と聖剣だけは見つかったらしい。
それを大賢者ユリウスが、元あったこの遺跡に戻したようだ。
ユリウスの日記にもそう書かれていた。
「どれ、オレ様が引っこ抜いてやるぜ!!」
「ヒューイ、あなた剣士じゃないでしょ」
「そうかてぇこと言うなって!」
ヒューイは聖剣を抜こうとした。
「んぎぎぎぎっ!? 一体どうなってやがるんだ!? 全然引っこ抜けねぇぞ!!」
ところが、聖剣はびくともしなかった。
「ヒューイ、ふざけている場合?」
「そんな訳ねぇだろ!? 本当に引っこ抜けないんだよ!!」
「私に代わって。聖剣と言ったら、私が相応しいわよね」
そう言って、今度はルナが聖剣を抜こうとした。
「んんんんーーっ!? おかしいわね、本当に抜けないわ」
しかし、ルナも聖剣を抜くことはできなかった。
すると、ルナとヒューイはなぜか揃ってセレーネの方を見た。
後衛のセレーネに聖剣を抜けと……?
「二人に抜けないのに、私に抜けるはずありませんわ」
「そ、そうだよね。ごめん」
「今度は僕が試してみるよ」
僕はエクスカリバーを抜くべく手をかけた。
すると、聖剣エクスカリバーはあっさりと抜けてしまった。
「拍子抜けするくらいあっさり抜けてしまった」
有力者であるルナとヒューイには聖剣が抜けなかった。
それを、僕にはあっさりと抜くことができた。
つまり、僕が『聖剣に選ばれし者』と言うことか。
すると、突然聖剣から眩しい光が発生した。
「「きゃっ!?」」
「うわっ!?」
「な、何だ!?」
目の前が真っ白になった。
しばらくして、僕の頭の中に映像が流れて来た。
そこには、三名の男女がいた。
しかし、この光景はどこかで……。
そうだ、思い出した。
僕の前世は、あの【大賢者ユリウス】だったのだ。
もう一度言う。僕はユリウス・ヴァン・ローランドの生まれ変わりだ。
この映像は、仲間と共に旅をした思い出だった。
ユリウスの仲間は女武闘家と女魔法使い、そして一人の勇者……すなわちデウスのようだ。
しかし、デウスを含めた仲間たちの顔は思い出せず、映像ではのっぺらぼうのように再生された。
勇者デウスは三百年前の第一次人魔大戦で、この聖剣エクスカリバーを用いて魔王アガレスと戦った。
デウスがいなくなった後、ユリウスがエクスカリバーを発見し、この遺跡に戻したのだ。
そして、今の僕がエクスカリバーに触れたことによって、ユリウスの記憶の一部が蘇ったようだ。
道理でイナ村の地下書庫での親和性が高い訳だ。
余談だが、ユリウスの一人称は『俺』であった。
やがて、映像は消えていった……。
「ファイン、どうして泣いているの……?」
「大丈夫ですか? ファイン様……」
「な、何でもないよ! ……僕は大丈夫だ」
いつの間にか、僕は涙を流していたようだ。
そのことにルナとセレーネも、心配そうな眼差しを送る。
僕は、自分のステータスをもう一度確認してみることにした。
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・ファイン・セヴェンス LV:99
種族:人間(男) 19歳
加護属性:天
クラス:勇者
HP:999/999
MP:800/800
力:999
魔力:741
器用さ:769
素早さ:850
防御:840
耐魔:724
魔法:回復・補助魔法LV.10、炎魔法LV.10、氷魔法LV.10、
風魔法LV.10、雷魔法LV.10、土魔法LV.10、
光魔法LV.8、闇魔法LV.7、空間魔法LV.10、
必殺魔法LV.10、至高魔法LV.6
スキル:身体強化、王国式剣技、鑑定、無詠唱、
消費精神力軽減、精神力継続回復(大)、状態異常無効
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ユリウスの記憶を取り戻したためか、各魔法のレベルが若干向上していた。
そう言えば、ユリウス時代の僕は【稲妻斬撃】以外にも、強力な魔法を開発していたはずだ。
よく見ると、新しい魔法が使えるようになっていた。
いや、正確には僕がユリウスだった頃の力を取り戻したともいうべきか。
まずは、あらゆるアイテムや、敵の状態や弱点を知ることができる【鑑定】スキル。
そして、前世の僕自身が作り出したオリジナルの魔法である【至高魔法】を思い出した。
その中でも、【至高治癒】はどんな怪我や病気もたちまち完治させることができる、万能な回復魔法だ。
しかも、複数人を対象に回復することも可能だ。
消費精神力は特級治癒の2割増だが、性能を考えるとむしろ低燃費と言える。
そうだ、鑑定を使ってみよう。
僕は早速、手に入れた聖剣エクスカリバーを鑑定してみることにした。
『エクスカリバー……攻撃力120。ファイン専用。正式名称【聖剣エクスカリバー】。アンデッド、悪魔、魔族に特効。使用すると、稲妻矢を放つ』
聖剣はアンデッドや悪魔、そして魔族に対して有効なようだ。
魔族は、通常の武器や魔法は効かない程の強靭さを誇る。
仮にダメージを与えたとしても、脳や心臓と言った急所を突かなければ、再生されてしまうといった厄介な特性を持っているのだ。
そんな魔族に対し、エクスカリバーは再生能力を無視して大ダメージを与えられると言うので、これは助かる。
ただし、今は力も失われており、三百年前ほどの力は残っていないようだ。
そのため、今は少し強い武器と言った程度の強さのようだ。
僕は仲間のステータスが気になったので、【鑑定】スキルで仲間たちのステータスを見てみることにした。
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・ルナ・セラフィー LV:77
種族:人間/天使(女) 19歳
加護属性:水
クラス:神聖騎士
HP:777/777
MP:1475/1475
力:777
魔力:1695
器用さ:724
素早さ:1400
防御:650
耐魔:1200
魔法:回復・補助魔法LV.9、炎魔法LV.7、氷魔法LV.8、
風魔法LV.5、雷魔法LV.5、土魔法LV.4、
光魔法LV.5、必殺魔法LV.5
スキル:身体強化、王国式剣技、無詠唱、状態異常無効
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まずはルナ。
ルナは精神力や魔力、そして素早さなどが非常に高い。
中でも、魔力は最高の数値である。
さすがはS級魔力の持ち主だ。
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・セレーネ・ホープ LV:70
種族:ハーフエルフ(女) 19歳
加護属性:地
クラス:聖女
HP:540/540
MP:1400/1400
力:321
魔力:1300
器用さ:631
素早さ:700
防御:400
耐魔:1100
魔法:回復・補助魔法LV.10、光魔法LV.7、神聖魔法LV.1
スキル:無詠唱、回復魔力+20%、回復魔法消費MP半減
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続いてセレーネ。
セレーネは力や防御力が弱く、物理攻撃能力が低い。
しかし、精神力や魔力がルナに次いで高い。
特に、回復魔法に関するパッシブスキルを多く持っているようだ。
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・ヒューイ・サウスリー LV:81
種族:半獣人(男) 20歳
加護属性:火
クラス:守護者
HP:1500/1500
MP:420/420
力:1200
魔力:233
器用さ:500
素早さ:630
防御:1350
耐魔:800
魔法:なし
スキル:身体強化、聖盾、頑丈
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最後にヒューイ。
彼は獣人族とのハーフということで、ルナやセレーネとは逆に魔法が使えない。
一方、生命力や腕力それに防御力が非常に高い。
そして、パーティーのタンクということもあってか、魔法への耐性も高くなっている。
「っしゃー、ファインが聖剣エクスカリバーを手に入れたぜ! これがあれば、鬼にこん棒だぜ!」
「鬼に金棒な」
聖剣エクスカリバーを無事手に入れることができた為、僕たちはとりあえず帝都に戻ることにした。