第129話 新たなる力
魔王軍が撤退した後、女帝ローラは即位の義を受けた。
こうして、改めてグランヴァル帝国の新たなるリーダー、女帝ローラが誕生した。
その後、僕たちはローラ陛下に呼ばれた為、皇室へやってきた。
「皆さん、この度は改めてグランヴァル帝国を救っていただき、ありがとうございました」
「いえ。あれは魔王軍が突然撤退したから助かっただけです。魔族の攻撃で帝都は以前よりも酷い状態に……」
「そうですね。民間人への被害がなかったのが、不幸中の幸いでした」
「ローラ陛下。魔王は復活し、これから魔族の侵攻は本格化するでしょう。改めて軍備を整えて、魔族への対策を行うべきです」
「そうですね。ファインさんのおっしゃる通りだと思います」
魔族の攻撃により、帝都オストは王帝戦争以前よりも荒れてしまった。
所々で石畳の地面は抉られ、壊された建物も少なくはない。
街の修理には、相当な時間がかかりそうだ。
第二次人魔大戦の際、魔王アガレスの攻撃で世界各地で多くの人々が犠牲になった。
そのため、エノウ大陸各国の規定により、主要都市には地下シェルターを設けなければならないという決まりがある。
その地下シェルターのおかげで、民間人の被害はゼロだったそうだ。
「ところで、ファインさん。帝都を守っていただいたお礼に、ファインさんたちに渡しておきたいものがあります」
「なんでしょうか」
「ファインさんには【勇気の腕輪】、ルナさんには【天使の指輪】、セレーネさんには【女神の指輪】を。そして、ヒューイさんには【膂力の腕輪】をそれぞれ贈呈いたします。これらは長い間、お城の地下室に眠っていた【魔導具】です。つまらない物ですが、もしよろしければお受け取りください」
「ありがとうございます」
僕たちはローラ陛下から魔導具をいただいた。
確かに、この腕輪からは何か不思議な力を感じる。
「なあ、ファイン。『りょりょく』ってどういう意味だ?」
ヒューイからそんな質問をされる。
ヒューイらしいなとは思いつつも、僕は質問に答える。
「腕力っていう意味だよ」
「おお、そうか! オレ様にピッタリの言葉じゃねぇか!!」
ヒューイは大喜びしながら、自らの左腕に腕輪をつけた。
すると、その時だった。
「な、何だ!?」
ヒューイが身に付けた膂力の腕輪から、突如として緑色の光が発生した。
そして、その光はヒューイの身体全体を覆った。
「これは一体……!?」
「ははっ、こいつはスゲェや!! 力がみなぎってくるぜ!!」
ヒューイは何やら大喜びしている。
すると、ローラ陛下が口を開く。
「昔、聞いた事があります。力を付けた者がとある魔導具を身に付けた時、更なる力を身に付けることが出来ると……」
「つまり、この腕輪たちは【クラスチェンジアイテム】だということですか?」
「そうだと思います」
なんと、ローラ陛下からいただいたこのリング達は、クラスチェンジアイテムだと言うのだ。
もしこれが本当なら、僕たちは魔王に対抗できる力を手に入れられるかもしれない。
しばらくすると、ヒューイを覆っていた光は収まった。
ヒューイの鎧が今までは黒色だったのが、赤色に変わっていた。
それに加えて、兜とマントも着用している。
どうやら、この腕輪たちはクラスチェンジアイテムで間違いないようだ。
「ヒューイ、ステータスウィンドウを開いてみろよ」
「おう。ステータスオープン!」
ヒューイはステータスウィンドウを確認する。
「クラスはどうなった?」
「おおっー、スゲー! オレ、【守護者】になっているぜ! オレ、本当にクラスチェンジできたぜ!!」
ヒューイは膂力の腕輪を付けたことにより、護り手から守護者に昇格したようだ。
守護者の名の通りパーティーを守る要であり、その守備力は非常に優れている。
「ルナ、セレーネ、リングを嵌めるんだ」
「ええ」
「わかりました」
僕たち三人は、それぞれもらったリングを嵌めることにした。
すると、ヒューイと同様に三人とも光に覆われた。
僕の全身は青色の光に覆われる。
なるほど、確かにこの【勇気の腕輪】からは強い力を感じる。
ちなみに、ルナは赤色でセレーネは黄色の光である。
僕たちの身体は、しばらく光に覆われていた。
しばらくすると、光は解けた。
僕はいつの間にか、青色の鎧とマントを着用していた。
そして、ステータス画面を確認してみた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・ファイン・セヴェンス LV:99
種族:人間(男) 19歳
加護属性:天
クラス:勇者
HP:999/999
MP:800/800
力:999
魔力:741
器用さ:769
素早さ:850
防御:840
耐魔:724
魔法:回復・補助魔法LV.10、炎魔法LV.9、氷魔法LV.8、
風魔法LV.10、雷魔法LV.10、土魔法LV.7、
光魔法LV.5、闇魔法LV.4、空間魔法LV.10、
必殺魔法LV.10
スキル:身体強化、王国式剣技、無詠唱、消費精神力軽減、
精神力継続回復(大)、状態異常無効
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「僕が得た新たなるクラスは……【勇者】か」
僕は魔法戦士から勇者にクラスチェンジした。
もちろん、パラメーターは全体的に上昇しており、特に体力や力が伸びている。
勇者と言えば、三百年前の人魔大戦で活躍した勇者デウスが有名だろう。
それに、新たなスキルも身に付けることができた。
ルナは赤紫色の動きやすそうなトップスを着用しており、袖は天使の羽のような形状の白い半袖である。
また、白の長手袋を着用し、背中には白いマントを纏っている。
頭には、右サイドにリボンが付けられたカチューシャを装備。
ボトムスは、丈が非常に短い白のミニスカートと、白のサイハイブーツを着用している。
そして、襟やブーツにも天使の羽を模したアクセントが付けられている。
セレーネは白のローブを着用し、頭には帽子を被っている。
そして、緑色のスリット入りのロングスカートと、白のサイハイブーツも着用している。
「二人のクラスは何だった?」
「私のクラスは神聖騎士よ。今まで以上にパワーアップしているわ!」
「私は聖女ですわ」
全員、今までと同じ系統のクラスを得たようだ。
聖女は聖職者系クラスの中でも上位のもので、伝説では死者をも蘇生する魔法が使えるという。
セレーネに相応しい新クラスであり、その回復力には今後より一層の期待が持てそうだ。
そして、ルナの新クラスである【神聖騎士】は聖騎士の上位クラスと思われる。
詳細は不明だが、非常に強力なクラスであることは間違いないようだ。
「よーし、この力があれば、魔族どもを簡単にブチのめせそうだぜ!!」
僕たちはクラスチェンジを終え、新たなる力を身に付けることができた。
この力があれば、魔王アガレスに対抗するための礎となりそうだ。