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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第4章 魔王復活~遥かなる旅へ
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第128話 魔王アガレス

 僕たちの前には、魔王アガレスが現れた。


「魔王アガレス!」

「如何にも。我が魔王アガレスだ。ファイン・セヴェンスよ、我が直々に相手をしてやろう」

「てめぇが人々の平和を脅かすクソッたれ魔王か!! このオレ、ヒューイ・サウスリー様がてめぇを直々にぶっ殺してやるぜーッ!!」

「よせ、ヒューイ!!」


 ヒューイは斧を構え、いきなり魔王に向かって突撃した。


「やめておけ、貴様如きでは到底我に敵わん」

「そんな事、やってみないと分かんねぇぜ!! おりゃあああああああッ!!!!」


 ヒューイは魔王に向かって、思いっきり斧を振り下ろした。

 ところが、魔王は左手で斧を受け止めた。


「何ッ!?」

「この程度か」

「バカなッ!? 片手だけでオレの斧を受け止めやがっただとッ!? しかも、ビクともしねぇぞ!!」

「そんな! 嘘でしょ!?」


 何てパワーだ。

 魔王が人智を超える力を誇っていることは分かっていた。

 だが、ヒューイの斧を片手で受け止める程のものとは。


「ヒューイ、一旦下がれ!!」


 僕はヒューイに後退するよう指示を出す。

 魔王は右手の手刀で反撃する。

 それに対し、ヒューイは盾を構えて防御する。

 ところが、魔王の手刀で盾は割られてしまい、ヒューイもそのままダメージを受けてしまう。


「ぐおおおおおおおおおッ!?」


 ヒューイは魔王の一撃で吹き飛ばされてしまい、全身血だらけの重傷を負ってしまった。

 素手で金属製の盾を破壊するとは、何てパワーだ。


「大丈夫か、ヒューイ!!」

「ヒューイさん、今すぐ回復します! 特級治癒エクストラヒール!」


 セレーネが回復魔法をかけると、ヒューイの傷は全回復した。


「サンキュー、助かったぜ。しかし、魔王アガレス……どうやら相当侮れねぇヤツみたいだぜ……!」

「ああ、魔王は今まで戦って来たどんな敵よりも強敵だ。気を引き締めて行かないと……!」


 魔王を前にした僕たちには、より一層の緊張感が走る。

 そんな僕たちの目の前に、魔王アガレスは悠然と立ちはだかる。


「来るがよい、勇者ども」

「行くぞ!!」


 僕たちは四人全員で魔王に立ち向かった。

 まず僕が魔王に接近し、剣で攻撃する。

 しかし、魔王は左前腕部だけで僕の攻撃を防ぐ。

 その手応えは、まるで鋼のように堅い。

 僕の後方から、ヒューイが魔王に近づく。


「さっきのリベンジだぜ!!」

 

 ヒューイはそう言うと、ジャンプして斧を振り下ろそうとした。

 魔法は右手で火球(ファイアボール)を放ち、ヒューイを迎撃した。


「ぐおおおおおおおッ!?」

「ヒューイ!!」


 ヒューイは火球(ファイアボール)の直撃を受けてしまい、そのまま吹き飛ばされてしまう。

 そして、ヒューイは火傷を負ってしまった。

 その威力は下級魔法ながら、上級魔法と遜色ないレベルだ。

 さすがは魔王なだけはあって、魔力量も尋常ではないようだ。


 魔王は僕の方を見ると、再び右手を挙げた。

 僕はすぐに後退すると、魔王は火球(ファイアボール)を放った。

 あまりの威力に地面が抉れてしまった。


 すると、ルナがいつの間にか魔王の背後に回り込んでいた。

 そして、剣で心臓を狙って刺突する。

 しかし、魔王は結界(バリアー)を張って防御する。

 魔王は振り向くと、右手から氷の槍(アイス・ジャベリン)を放つ。

 ルナは咄嗟にジャンプで回避した。


「背後からの攻撃など、我には通用せんぞ」


 ルナは一旦、僕たちと合流した。


「今度はこちらから行くぞ」


 魔王はそう言うと、右手を前に出した。


暗黒球(ダークボール)


 魔王は暗黒の球を6つ飛ばして攻撃してきた。

 僕は辛うじてそれをかわした。

 しかし、ルナとヒューイはかわしきれず、喰らってしまった。

 セレーネは何とか結界(バリアー)を使って防御する。

 しかし、球が着弾した際に結界は割れてしまった。


「ほう、思ったよりもやるようだな。見せてやろう、我のとっておきの魔法を……」


 魔王アガレスはおもむろに右手を前に出した。


暗黒稲妻(ダークサンダー)!」


 魔王は指先から紫色の稲妻を飛ばして攻撃してきた。

 無数の稲妻が僕たちを襲う。


「「ぐわああああああッ!!!」」

「「きゃああああああっ!!!」」


 僕たちは魔王の放った魔法をモロに喰らってしまう。

 全身が痺れるような痛みに襲われた。

 何とか立ち上がったものの、ダメージは決して小さくはない。

 魔王の圧倒的な力を前に、僕たちは苦戦を強いられている。


「セレーネ、回復を……」

「はい」


 セレーネが全員に特級治癒(エクストラヒール)をかけたことで、僕たちの傷は回復した。


「この程度か。今の勇者がこの程度では、かつての英雄が泣くぞ。貴様の力はこんなものではない筈だ」

「まだだ、まだ勝負はついていないぞ!! うおおおおおおおッ!!」


 僕は再び魔王に立ち向かう。

 そして、剣で何とか魔王に一撃を与えることに成功する。

 髑髏の“仮面”が割れ、その中から人間の素顔が露わになった。

 魔王アガレスの素顔は、金髪赤目で精悍な顔立ちの青年であった。

 しかし、その顔を見て僕たちに衝撃が走った。


「あなたは……アレンさん!?」

「アレン? 違うな。まだ分からないのか? 私はアレンなどではない。私の名はアガレス・ディオス。世界を統べるに相応しい魔王だ。アレンというのは、世を忍ぶ仮の姿だ」


 魔王アガレスの素顔は……なんと、アレンさんだった。

 顔だけでなく、声もアレンさんそのものだった。

 それはまさに、青天の霹靂だった。


■■■■■


 魔王アガレスの正体は、なんとアレンさんだった。

 その事に、僕たちは衝撃を受けていた。


「アレンさんが……魔王アガレス!?」

「そんな……信じられません……!!」

「おいおいおいおい、これはどういう事だよ!? 意味分かんないぜ!!」

「まさか、僕たちを騙していたのか!?」

「フン、愚かな。騙される方が悪いのだよ」

「なぜだ? なぜあの時、僕たちに近づいた?」

「今の人間界を見て見たかった。そして、貴様たちの動向を知りたかったのだ。ただ、それだけのことだ。やはり人間どもは腐っている。ファイン・セヴェンス、貴様もそう思わないか?」

「何を……」

「人間は自分の欲望を満たす為に、平気で他人と争い傷を付け、他人の土地や所有物を奪う。そして、人間同士で忌み嫌い、憎み合い、やがてそれは新たなる争いの火種となる。やはり人間どもは、三百年前から何一つ変わっていないな。人魔大戦の時から、人間は何も学んではおらぬ。貴様たちが戦った男、皇帝ゴスバールがその最たる例だろう。ゆえに、私は皇帝ゴスバールを利用してやったのだ。私は人類を滅亡させ、この世界を滅ぼす! これ以上、このような悲劇を招かない為にな。この魔王アガレスが、この“負の連鎖”を断ち切る!」

「そんな事はさせない、魔王アガレス!! 貴様の野望は、今僕たちが阻止する! これ以上、貴様の好きにはさせない!!」

「フン、やれるものならやって見せろ」


 僕たちは、再び剣を構え直した。


「出でよ、魔剣レーヴァティン」


 魔王はどこからか魔剣を召喚し、自身の右手に構えた。

 その魔剣は漆黒で禍々しく、まさしく魔王の邪悪さを体現したかのようだ。


「来い、勇者ファイン」

「行くぞ!!」


 僕たちは剣を構え、魔王アガレスに立ち向かった。

 そして、魔王に向かって思いっきり剣を振り下ろした。

 しかし、僕の剣戟は容易く受け止められた。


「くっ……!」

「フン、なかなかの太刀筋だな。一度はエノウ大陸を救った“英雄”なだけのことはある。しかし、私を倒すにはまだまだ……未熟ッ!!」


 魔王はそう言うと、僕の剣戟を弾き返した。

 すると、その隙にルナが魔王の背後に回り込み、首めがけて橫薙ぎを放った。

 しかし、魔王はそれに気づき、自身の魔剣で防御した。


「言ったはずだぞ? 背後からの攻撃は通用せんと!」


 魔王は魔剣でルナに反撃した。

 一方、ルナも素早い動きで魔王の剣戟を躱す。


「喰らいなさい、魔王……神聖(ホーリー)!」


 セレーネは魔王に対して神聖ホーリーを放った。

 しかし、魔王は結界(バリアー)を張って防御した。


「光魔法か。なるほど、確かに光魔法は我ら魔族の弱点だ。だが、それで私を倒せると思ったか?」


 魔王はセレーネに狙いを定め、魔剣を振り下ろした。

 すると、ヒューイがセレーネの前に立ちはだかり、斧で防御する。


「ぐっ、何て馬鹿力だッ!! ぬおおおおおおおおおおッ!!!」

「その程度か。ヒューイ・サウスリーとやら、貴様の力はその程度か?」


 ヒューイは押されているため、両手に斧を構えた。

 対して、魔王は右手だけで魔剣を持っている。

 にもかかわらず、ヒューイは魔王アガレスに押されている。

 そして、隙を突かれたヒューイは斧を弾かれ、魔剣で切り刻まれてしまう。


「ぐおおおおおおおッ!?」


 ヒューイは重傷を負ってしまった。

 半獣人のヒューイでも、魔王の怪力には歯が立たない。


「フン、魔剣の一撃を受けて死なぬとは。外見に違わず頑丈なようだな」


 その直後、セレーネがヒューイの傷を回復した。


 僕は魔王に立ち向かい、剣を振り下ろした。

 魔王も魔剣を橫に薙ぎ、反撃を行った。

 魔剣の一撃により、僕の剣はあっさり折られてしまった。


「なにッ!?」

「そんななまくらでは、私には勝てん!」

 

 魔王が反撃してきた為、僕はすぐにかわす。

 確かに、普通の剣は魔王の前ではなまくらに過ぎないか。

 僕は一刻も早く戦いを終わらせるため、必殺魔法を使うことにした。


稲妻斬撃サンダースラッシュ!!」


 しかし、稲妻斬撃サンダースラッシュは発動しなかった。


稲妻斬撃サンダースラッシュ!! ……なぜ発動しない!?」

「愚か者め、まだ気づかないのか? 私が貴様たちに魔封じ(ディスペル)を施しておいたのだ。したがって、貴様たちは一切の魔法、及びスキルを発動できん!」

「いつの間に!?」

「さあ、ここらで終わりにしてやろう。勇者ファイン、我が奥義をとくと味わうが良い……!!」


 魔王はそう言って魔剣を地面に突き刺した。


支配者の空間ドミナンス・ディメンション!!」


 魔王の魔剣から、薄暗い灰色の空間が発生した。

 そして、その空間は魔剣を中心にして球状に広がって行った。


(う、動けない!! これは一体……!?)


「これが……【支配者の空間ドミナンス・ディメンション】だ。この魔法に包まれたあらゆる生物や物体は我によって支配され、時間の流れは止まる。よって、貴様たちは身動き一つ取ることが出来ん! だが、特別に意識だけは残してある。どんな気分だ? 全く動けない恐怖を味わうと言うのは……」


 灰色の空間に包まれた僕たちは、動けなくなってしまった。

 視覚や聴覚などの感覚はあるが、全く身動きが取れない。

 会話や瞬き、呼吸すらもできない。

 心臓や血流も止まっているようだ。

 そのため、息苦しいと錯覚してしまう程だ。

 しかし、意識はあるので死んではいないようだ。

 魔王の言う通り、僕たちの時間の流れが止められているだけのようだ。

 魔王アガレスは、そんな僕たちにトドメを刺そうと右手の魔剣を天高く掲げる。


「終わらせてやろう」


 絶対絶命のピンチ。

 すると、そのときだった。

 突然、氷の刃が魔王を襲う。


「なにっ?」


 魔王はすんでのところで躱した。

 どうやら、ルナが魔王アガレスに対して氷結剣アイスブランドを放っていたようだ。


「女、貴様なぜ動ける? しかも今、剣技を使ったな。魔封じ(ディスペル)でスキルは使えぬ筈なのに」

「私は仲間のために、あなたを倒す。魔王アガレス、覚悟っ! はああああああああああっ!!」

「もしや、貴様……」


 ルナは剣を構えて魔王アガレスに立ち向かった。


「なるほど、【状態異常無効】か。道理で支配者の空間ドミナンス・ディメンションが効かぬ訳だ。それに、この力強い魔力の波動……どうやら、貴様は特別なようだな。面白い、私が直々に相手をしてやろう!」


 魔王アガレスも魔剣を構え、ルナを迎撃しようとしていた。


 ルナは持ち前の素早い動きを駆使して、魔王の左右から攻撃を仕掛ける。

 一方、魔王はその場から一歩も動かず、魔剣を巧みに操って応戦している。

 魔王には一切隙がなかった。

 ルナは何とか一瞬の隙を突いて、魔王に一撃を与えることを試みた。

 しかし、魔王にルナの攻撃は防がれてしまった。

 そして、魔王は魔剣で反撃し、ルナのディフェンダーをへし折ってしまった。


「しまった!! 剣がっ!!」


 そして、魔王は左手でルナの首根っこを掴んで持ち上げた。


「ああああああああっ!?」


 ルナは涙目になり、苦痛のあまり悲鳴をあげてしまう。


「やめろーッ!! ルナを離せッー!!」


 僕はルナを助けるべく、魔王に立ち向かう。


「引っ込んでいろ、小童が」


 魔王が魔剣を振ると、衝撃波によって僕は吹き飛ばされてしまった。


「終わりだ」


 魔王の左手から爆発が発生した。

 ルナは空中に吹き飛ばされ、そのまま地面に墜落した。


「む、まだ生きておるのか。軟弱そうな見た目に反して、随分と頑丈なものよ。やはりこの娘は特別なようだな」


 ルナは痙攣していた。

 そんな彼女に対し、魔王はとどめを刺そうと魔剣を掲げる。

 何とかして、彼女を助けなくては。


「ファイン君!!」


 すると、セラフィー公爵たちが応援に駆け付けた。


「む、援軍か。戦力差は我が軍が不利。何より、私も復活したばかりゆえに、まだ完全に力を取り戻したとは言えぬ。ゆえに、今回は見逃してやろう。ファイン・セヴェンスよ、せいぜい怯えて待っているがよい……!」


 魔王アガレスはそう言うと、転移門ゲートの向こうへと消えていった。

 それと同時に、魔王軍も撤退していった。


「逃げた……?」

「大丈夫か、ファイン君! ……ハッ、ルナ!!」


 セラフィー公爵はルナが倒れていることに気がつき、声を荒げた。

 二人の兄も、ルナの事を心配する。


「「ルナ!!」」

「うっ……」

「大丈夫。傷付いてはいますが、命に別状はありません。ルナが頑丈だったのが不幸中の幸いと言うべきか……」


 僕の言葉を聞いた公爵たちは、ホッと胸をなで下ろした。

 魔王軍が撤退したことで、何とか助かったか。

 しかし、魔王軍の襲撃により、王国同盟軍にはさらなる被害が出てしまった。

 のちの報告によると、全兵力の約三割を喪失したとのことだった。


■■■■■


 魔王アガレスは自らの居城である魔王城に帰還した。

 そして、玉座の間に着くとカミラが出迎えた。


「おかえりなさいませ、魔王様」

「うむ」

「勇者たちはどうなさったのですか?」

「見逃してやったよ。奴らはまだ未熟だ。このアガレス・ディオスが相手してやる程の価値もない」

「お優しいのですね、魔王様は」

「勘違いするな、カミラよ。私はただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。弱い勇者など、殺す価値もない」


 魔王アガレスは自分の思想を語る。


「ところで、あの女騎士……確かルナ・セラフィーと言ったか。あやつはなかなか興味深い者だったぞ」

「ほう、どのようにですか?」

「あの娘は私の支配者の空間ドミナンス・ディメンションが効かなかった。それに、強い魔力の波動をも感じ取れたぞ。ルナ・セラフィー……彼女はおそらく、伝承で聞いた【召喚されし天使(サモネド・エンジェル)】で間違いないだろう。神々め、なかなか厄介な代物を用意してくれる。この魔王アガレスをとことん追い詰める気か」


 魔王アガレスは意味深な事を話す。

 そこへ、カミラが自らの疑問を魔王に投げかける。


「でしたら、なぜその娘を捕らえなかったのですか? すぐにでも捕まえて、魔王城に連れ帰れば……」

「言ったはずだぞ、カミラ? 奴らはまだまだ未熟だと。娘には、勇者のもとで強くなってもらわねば困る。娘を料理するのはその後だ」


 魔王たちは、何やら不穏な会話を繰り広げていた。

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