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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
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第126話 激闘の果てに

第3章もいよいよラストです。

 王国同盟軍は、現在も帝国軍は放った魔導人形ゴーレム軍団と戦っている。

 アポロやエリーゼなど、有数のエースを中心に陣形を組んで戦っている。

 そのため、被害は最小限に抑えられている。

 しかし、ゴーレムの数が予想以上に多く、未だ戦線を突破できていなかった。


「チッ! 帝国はこれ程の数の魔導人形ゴーレムをすでに量産していたとは!」


 王国同盟軍は少しずつゴーレムの数を減らしているが、帝国は次々とゴーレムを投入していった。

 アポロたちは次第に疲弊しつつあった。


 その頃、帝都内部では皇女ローラが、帝都市民に避難勧告を出そうとしていた。

 護衛の兵士たちを連れて、街へ急ぐローラ。

 帝都の住民たちは、皇女が街に来たことを珍しそうに見ていた。


「皇女殿下……?」

「皆さん、大変です! 皇帝が……私の兄が強大な魔物【アシュラ】に変身しました! 兄は世界を支配することを目論んでおります。このままでは、この街ごと滅ぼしかねません! 急いで避難してください!」

「アシュラって伝説の? さすがの皇帝陛下もそこまで……」


 帝都の市民たちは最初、皇女ローラの言うことに半信半疑だった。

 平和に暮らす民が、伝説の魔物が存在するなどと微塵も思わなかった。

 しかし、民は次第にその存在を信じざるを得なくなった。

 突然の爆発音とともに、城の外壁が一部崩れ落ちた。


「お、おい、あれってまさか……」

「アシュラは実在します。今すぐ帝都の北に避難してください!」

「だとしたらヤバイぞ! に、逃げろ!!」

「うわああああああ!!」


 市民たちは危機感に駆られ、急いで逃げて行った。

 逃げ惑う帝国民たち。

 帝都中がパニックに陥った。


■■■■■


 結界バリアーのおかげで、何とかアシュラの火炎爆弾フレイムボムを防御することができた。

 しかし、玉座の間は荒れてしまった。


 アシュラは防御力が高く、武器攻撃はほぼ効かない。

 加えて、6本腕により攻守とも隙がなく、また巨体に見合わぬ素早い動きが可能だ。

 だが、先程ルナが放った氷の槍アイス・ジャベリンで腕に微かなダメージを与えることが出来た。

 魔法なら、ダメージを与えることが出来るかもしれない。

 試してみる価値はある。

 もちろん1発や2発の魔法では、ダメージは微々たるものだろう。

 しかし、攻撃を積み重ねれば、やがて大きなダメージになるだろう。


「みんな、聞いてくれ。アイツには物理攻撃はほとんど効かない。しかし、魔法や剣技ならば少しずつダメージを与えられるかもしれない」

「そうか! つまり、魔法や剣技ならばアイツを倒せるかもしれないという訳だな!?」

「ああ、そういうことだ」

「作戦会議は終わったか? 虫けら共。言っておくが、ワシを倒すことは不可能だぞ。なぜなら、ワシは人智を超えた力を手にしたのだ! 大人しくワシの力のもとにひれ伏すがよいぞ!」

「それはどうかな? やって見なければわからないだろう?」

「皆さんに補助魔法をかけます。出でよ、光の精霊【ウィル・オ・ウィスプ】よ」


 セレーネが光の精霊ウィル・オ・ウィスプを召喚した。


「眩き光よ、我を守る剣となり、盾となれ……マジックオーラ!」


 光の精霊ウィル・オ・ウィスプの魔法が僕たちを包み込む。


「この魔法は、私たちの魔力と耐魔能力を上げるものです。きっと、私たちの役に立つでしょう」

「ありがとう、セレーネ。今の僕たちに相応しい魔法だ。行くぞ、みんな!」


 僕たちは再びアシュラに立ち向かっていった。

 まずは、僕が先行して前に出た。

 ヒューイとディオーランも、僕の後に続く。

 アシュラは両手を使って攻撃してきた。

 僕は結界(バリアー)を張って防御する。

 その隙に、二人がアシュラの懐に潜って攻撃する。

 アシュラは応戦しようと、左右の腕を二本ずつ動かす。


「今だ、ルナ!!」

「はい!」


 僕の合図により、ルナは氷の槍(アイス・ジャベリン)を3発放った。

 氷の槍(アイス・ジャベリン)は、アシュラの胴体から頭部にかけて命中した。


「うぐぅっ!? 小癪な!!」


 何とかダメージを与えることができた。

 しかし、ダメージはまだ浅い。

 さすがは魔王の僕なだけはあり、相当頑丈なようだ。

 そのため、もっと攻撃を加えなければならない。


「たかが虫けらの分際で、調子に乗るな!!」


 アシュラは、風属性の上級魔法【竜巻トルネード】を発動した。


「「ぐあああああああッ!!」」


 僕は間一髪で回避したが、ヒューイとディオーランが巻き込まれてしまった。

 二人は吹き飛ばされてしまい、大ダメージを負ってしまった。


「ディオーラン! ヒューイ! セレーネ、すぐに回復魔法を!」

「はい!」


 セレーネが上治癒(ハイヒール)をかけると、二人はすぐに回復した。


「サンキュー。これでまた戦えそうだ!」

「小賢しい小娘め! まずは貴様から捻り潰してくれるわ!」


 アシュラは標的をセレーネに変え、ジャンプで一気に距離を詰めてきた。

 そして、アシュラは右手のパンチを放つ。


「ぬうっ!?」


 アシュラの一撃は、セレーネが展開した結界(バリアー)によって防がれた。


「私を侮らないでください。あなた如きにやられる私ではありません」

「俺たちがいることを忘れるなよ!」


 ディオーランがそう言うと、横から風斬刃(ウィンドブレイド)を放った。

 風の刃は、アシュラの目にかすった。


「ギャアアアアア!! よくもワシの目を!!」

「皇帝ゴスバール、俺は貴様を倒す者だ。貴様を倒し、真の王になる者だ!」

「貴様ァ! 初めからワシを裏切るつもりで、帝国軍に入ったのか!!」

「裏切るだと? 人々を裏切ったのは貴様の方だろう? 魔王に魂を売って化け物になり、帝国民を失望させた責任を今ここで取ってもらうぞ!」

「愚か者め! 貴様ら如きにワシを倒すことなど不可能!! せいぜい今のうちに足掻いておくが良いわ……」


 現時点では僕たちの方が優勢だ。

 しかし、皇帝は以前として余裕の表情を崩さない。

 まだ何らかの攻撃手段を隠し持っている可能性があるので、用心するべきだろう。


 僕は稲妻撃サンダーボルトをアシュラに対して放った。

 アシュラの頭上に雷雲が発生し、強力な稲妻がアシュラを直撃した。

 しかし、ダメージは浅い。

 稲妻撃サンダーボルトは通常の敵ならば致命傷になるが、アシュラに対しては1発や2発では大した効果を得られない。

 アシュラは僕に近づいて、パンチで攻撃してきた。

 僕はそれを結界(バリアー)で防ぐ。


「おりゃああああああ!!」


 その隙にヒューイが斧でアシュラを攻撃する。

 斧は頭部に命中した。

 だが、頭からは多少血が出ただけで、大したダメージにはなっていないようだ。


「クッソー、なかなか硬いヤツだぜ!」

「愚か者めが! 力押しでは、ワシには勝てん!!」


 アシュラはそう言うと、パンチでヒューイを吹き飛ばした。

 巨漢のヒューイは、あっさり吹き飛ばされてしまった。


「ぐおおおおおおっ!?」

「ヒューイ!!」

「だ、大丈夫だ……オレはそんなにヤワじゃないぜ!」


 ヒューイの心配をするが、どうやら無事なようだ。


氷の槍(アイス・ジャベリン)!」


 ルナはまた氷の槍(アイス・ジャベリン)を3発放った。


「愚かな小娘が! ワシに同じ手は何度も通用せん!」


 アシュラは3本の腕で氷の槍(アイス・ジャベリン)を掴むと、ルナに向かって投げ返した。


「ちょっ!? そんなのアリ!?」


 ルナはそう言いつつも、氷の槍(アイス・ジャベリン)を躱した。


「貴様らの力、少しは認めてやろう。だが、貴様らがいくら足掻いたところで、ワシを倒すことはできぬ! それを思い知らせてやろう!」


 アシュラはそう言うと、6本の手からそれぞれ黒い玉を生み出した。


暗黒球ダークボール!」


 アシュラは暗黒球ダークボールを6発放ってきた。

 暗黒球ダークボールとは闇属性の魔法である。

 闇魔法は習得が困難なことで知られている。

 しかし、魔王の僕たるアシュラが習得していても何ら不思議ではない。

 僕たちは何とか回避するものの、アシュラは次々に暗黒球ダークボールを放ってくる。


「「ぐああああああ!!」」


 ヒューイとディオーランがかわしきれずに、何発か喰らってしまう。

 アシュラは次に、頭上に暗雲を発生させた。


「まずいッ、来るぞ!!」


 セレーネが結界(バリアー)を張った。


稲妻撃(サンダーボルト)!」


 アシュラの掛け声と共に、暗雲から無数の稲妻が降り注いだ。

 稲妻撃(サンダーボルト)の攻撃が終わると同時に、結界(バリアー)はガラスが割れるような音を立てて崩れ落ちた。

 何とか防ぎきることができたが、あの数の稲妻は結界(バリアー)がなければ防げなかっただろう。


 だが、僕たちはこれまでの戦いで、相当魔力を消費している。

 これ以上戦闘を長引かせると、こちらが不利だ。


「ここは一気に決めるぞ! セレーネ、アシュラの周囲に内向きの結界を張ってくれ。ただし、外からの攻撃は素通りするように魔力を調整してくれ。できるか?」

「はい」


 セレーネは僕の指示通りに、結界(バリアー)でアシュラを囲んだ。


「なんのマネだ? こんな物で、ワシを閉じ込めたつもりか!」


 アシュラは結界(バリアー)に向かってパンチする。

 結界(バリアー)が壊れないように、セレーネは魔力を維持する。


 僕は剣を頭上に掲げた。

 玉座の間を暗雲が覆った。


稲妻斬撃サンダースラッシュ!」


 無数の稲妻と共に、光の剣がアシュラを直撃する。


「グオオオオオオオオッ!!」


 アシュラは悲鳴を上げる。

 今の悲鳴から察するに、今までよりも大きなダメージを与えることができたようだ。

 しかし、アシュラは依然として生きている。

 アシュラを完全に倒すには、まだダメージが足りないようだ。

 そう思った時だった。


「まだよっ!!」


 突然、ルナが左手を頭上に挙げた。

 頭上には暗雲が発生し、その中を稲妻が走る。

 まさか、これは……。

 暗雲はどんどん大きくなっていく。


稲妻斬撃サンダースラッシューっ!!」


 そして、ルナは掛け声と共に左手を振り下ろした。

 再び稲妻と、光の剣がアシュラを貫いた。


「ギャアアアアアアアアア!!!」


 アシュラはけたたましい断末魔の声をあげた。

 魔王の僕と言えども、S級魔力の攻撃は相当こたえたようだ。

 アシュラはその場に倒れ、皇帝ゴスバールの姿に戻った。


「見事……貴様たちの勝ちだ……」


 皇帝ゴスバールは力尽きた。

 アシュラは今まで以上の強敵だったため、長期戦となってしまった。

 しかし、僕たちは何とか勝利することに成功した。


 その一方で、僕は少し不可解に思ったことがある。

 ルナは今、屋内且つ剣を持たずに稲妻斬撃サンダースラッシュを発動した。

 かつてルナは、僕以外の者は屋外且つ剣装備時でなければ、稲妻斬撃サンダースラッシュを発動できないと言っていた。

 一体、どういうことだ……?

 とりあえず、この疑問は僕の心の中にしまっておこう。

 それよりも、まずは皇女ローラに危機が去ったことを報告しよう。


■■■■■


 城を出て、帝都の街にやって来た。

 丁度皇女ローラを発見したので、合流することにした。


「皆さん! 無事だったのですか! アシュラはどうしたのですか?」

「無事倒すことが出来ました。もう安全です」

「本当ですか!? 帝国を……いえ、世界を救っていただいたことを国民を代表してお礼を申し上げます。ありがとうございました」


 皇女ローラは感謝の言葉を述べた。

 その後、皇女ローラは帝都の民を集めた。


「ローラ殿下、それに、ディーン将軍じゃないか……」

「あれは、星の英雄たち(スター・ヒーローズ)!? どうして彼らがここに……」


 帝国の民は僕たちを見て驚く。

 帝都中に僕たちの似顔絵でも貼られていたのか、既に顔は知っているようだ。

 皇女ローラが帝都の民に話を始めた。


「帝国国民よ、この方々がアシュラを倒してくれました。帝都はもう安全です。兄は死に、世界に平和が戻りました」

「やったぞ、ディーン将軍と星の英雄たち(スター・ヒーローズ)が我々を救ってくれたんだ!」

「ついに戦争は終わったんだ! 彼らは【英雄】だ!!」

「ありがとう!!」


 皇女ローラが戦争終結を宣言すると、帝国国民たちは歓喜の声をあげた。


「しかし、皇帝陛下が……」

「殿下、これからの帝国は一体どうなるのでしょう……?」


 皇帝の死を知らされた、民は不安の声を口々に語る。


「心配いりません。私が兄に代わって、一国を率いるリーダーとなって見せましょう」

「本当ですか!? ローラ殿下……いや、ローラ“陛下”が帝国のリーダーならば安心だ!」


 皇女ローラ改め、新女帝ローラはグランヴァル帝国の新たなるリーダーになることを誓った。

 その後、外で戦っていた帝国軍は敗北を悟り、王国同盟軍に全面降伏したという。

 こうして皇帝の死と共に、長かった第二次王帝戦争は無事終結を迎えた。

 しかし、まだ全てが終わったわけではない。

 戦争によってエノウ大陸各地は荒れ、失ったものも少なくはない。

 復興のため、国々はより一層努力をしなければならない。

 ある意味、これからが本当の戦いとなるだろう。

第3章はこれにて終了となります。

長い間ご覧いただき、誠にありがとうございました。

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