第124話 ディオーラン、再び
僕たちは馬に乗り、帝都へ走り出した。
帝都入口の門を強引に突破し、内部へと侵入した。
「ローラ皇女、僕たちから離れないでください!」
「はい!」
中心部にある城を目指すべく、馬をひた走らせる。
街の中は警備が手薄で、帝国の市民たちが何事かと言わんばかりにこちらを見ている。
帝都オストはかなり大きく、王都エストに匹敵する規模の街である。
目的の城はすでに見えており、離れていてもその大きさが分かる程だ。
また、外壁は灰色で邪悪な雰囲気を感じ取れる。
その大きさとも相まって、如何にもと言った感じの雰囲気だ。
そして、帝都に侵入してから約5分が経ち、城に辿り着いた。
衛兵たちを倒し、そのまま城内へと侵入する。
城の中は薄暗い。
そして、なぜか兵士は誰一人としていなかった。
「妙だな。なぜ城内に帝国兵がいないんだ? 誘われているのか……」
「きっと、ほとんどが表の戦いに出向いたんじゃないかしら?」
「行こう、みんな。最上階には皇帝が待ち構えているはずだ」
僕たちは馬を降り、城内を進むことにした。
目指すは玉座の間だ。
そこに、この戦いの元凶である、皇帝ゴスバールがいるはずだ。
皇帝を倒さない限り、この戦いは終わらない。
「ここから先へは行かせん!」
上の階では、兵士たちが通路をふさいでいた。
「ようやくお出ましか! このオレがまとめてぶっ飛ばしてやるぜ!!」
相変わらず、やる気満々のヒューイ。
しかし、奥の通路にはディオーランの姿がチラリと見えた。
「ディオーラン!」
ディオーランは奥の方へと消えていった。
僕は帝国兵を強引に突破し、ディオーランを追いかけた。
彼との決着は、ここでつけなければいけない。
ディオーランは通路の先へ逃げる。
それを僕はひたすら追いかける。
すると、曲がり角を曲がった先で、ディオーランは風斬刃を放ってきた。
僕は咄嗟にそれをかわした。
ディオーランは再び逃走する。
ディオーランは通路の先にある、大きな扉を開けて中に入った。
僕も扉を開け、ディオーランを追いかけた。
そこは、玉座の間だった。
ディオーランはそこで僕を待ち構えていた。
「ディオーラン!」
「来たか、ファイン」
「!? ルナたちがいない……?」
後ろを振り返ると、仲間たちがいないことに気が付いた。
ディオーランを追いかける事に夢中で、ルナたちが取り残されていることに気が付かなかった。
「気づくのが遅かったな、ファイン。お前だけをおびき寄せるために、仲間たちを兵士たちに足止めさせたのさ。お前の仲間は、今頃帝国の兵士たちと戦っている頃だろうさ。だが、俺の作戦は上手く行ったようだな」
「目的は何だ?」
「俺は俺を見下してきたヤツらを踏み台にし、この世界の王になるつもりだ。そのためには国王ゼフィール、そして皇帝ゴスバールをも倒す!」
「なんだって?」
「だが、その前に……」
ディオーランはそう言って、おもむろに剣を抜き出した。
「皇帝ゴスバールを倒す前に、まずは俺はここでお前との決着を付ける!」
「ああ、僕もそのつもりだ」
僕も剣を抜き、ディオーランとの決着をつけるつもりだ。
今、ディオーランとの最終決戦が始まる。
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僕とディオーランは剣を抜き、お互い睨み合っている。
お互い間合いにはまだ入っていない。
「行くぞ、ファイン!」
ディオーランはそう言うと、走って僕に近づいて来た。
僕は先制攻撃として、風斬刃を放った。
ディオーランはそれを回避し、あっという間に僕の間合いに入って来た。
「甘いな!」
そして、剣による直接攻撃を仕掛けてきた。
僕はそれを剣でガードする。
その直後、ディオーランは僕の腹に蹴りを入れてくる。
「がっ……」
防御鎧で被ダメージは軽減できたが、ディオーランは間髪入れずに剣で連撃を加えてくる。
次第に、僕は防戦一方になる。
ジャズナ王国で戦った時とは、比べものにならない程の強さだ。
前にも増して腕を上げたようだ。
僕は一旦、ディオーランから離れる。
「強くなったな、ディオーラン!」
「当然だ。俺はお前を倒す為に鍛錬を続けて来たんだ。お前に勝ち目はない!」
「もう勝った気でいるのか? 少しばかり見通しが甘いのでは?」
僕は火球を3発ほど放った。
ディオーランは、風斬刃を放って応戦した。
風斬刃は僕の火球を消し飛ばし、そのまま僕に向かって来た。
僕は結界を展開した。
風斬刃は消滅した。
その直後、ディオーランが向かって来た。
ディオーランは斬撃を放つが、結界によって防がれた。
「チッ、結界か!」
僕は再び火球を放った。
ディオーランは避け切れず、火球の直撃を受けた。
内側からの攻撃は素通りするように、魔力を調整しておいた。
間髪入れずに僕は結界を解き、剣でディオーランに直接攻撃を行う。
しかし、ディオーランはバック転で躱して後退した。
僕はディオーランに向かって走って行った。
「大地裂斬!」
ディオーランはそう言って、剣を床に突き立てた。
衝撃波が床を伝わり、僕に迫ってくる。
僕は右に回避する。
ディオーランは僕に接近してきた。
僕は剣で迎撃するが、ディオーランはしゃがんで躱す。
「隙ありッ!!」
ディオーランは、僕の脇腹を狙って斬撃を放つ。
僕は左腕に防盾を展開し、咄嗟に防御した。
「なにッ!?」
そして、ディオーランに向けて上からの斬撃を放った。
ディオーランは辛くも、僕の攻撃を躱した。
そして、僕から距離を取った。
僕はディオーランに向けて、風斬刃を3発放った。
ディオーランはかわしつつ、再び僕に近づいて来る。
僕は続けざまに、氷結剣を放った。
ディオーランは再度後退した。
僕はディオーランに近づき、剣で攻撃する。
ディオーランとの接近戦になる。
お互いの剣と剣がぶつかる。
「チッ、なかなかやるな!」
「驚くのはまだ早いぞ」
僕は一旦後退し、火炎爆弾を3発同時に作り出した。
「なにッ!? 火炎爆弾だと!? しかも、3発同時に!? 城を吹き飛ばす気かッ!?」
驚くディオーラン。
僕は構わず、ディオーランに向けて火炎爆弾を発射した。
ディオーランは回避を試みる。
しかし、爆発から逃れることはできないだろう。
「ぐおおおおおおっ!?」
案の定、爆発によりディオーランは吹き飛ばされた。
しかし、ディオーランは何とか立ち上がった。
「よ、よくもやってくれたな……ハッ!? ファインがいない!?」
ディオーランは辺りを見渡した。
「後ろだ」
「!?」
僕はディオーランの背後から剣を向けた。
爆発と同時に、僕はすでに瞬間移動していたのだ。
「いつの間に!?」
ディオーランは、慌てて後ろに振り向く。
しかし、時すでに遅し。
僕は生命創成を使った。
足元から蔦が生え、ディオーランに巻き付く。
「しまった!」
ディオーランは、あっという間に身動きが取れなくなってしまった。
僕は構わず、ディオーランに剣を向ける。
「勝負あったな、ディオーラン!」
「くっ!」
すると、突然ドアが開いた。
やってきたのは、ルナたち仲間だった。
「ファイン! それに、ディオーランも!?」