第123話 帝都侵攻
王都防衛戦が終わった後、僕たちは会議室に呼ばれた。
セラフィー公爵の他、同盟軍のメンバーも集まっていた。
聖騎士エリーゼに、ロイド氏やギース氏、それにミネルバらもいた。
これから、帝国に対する反撃が行われるだろう。
そのために、帝都侵攻作戦に関する会議が行われるようだ。
ちなみに、グロリア以下帝国軍の騎士たちは、レオナルド将軍の遺体を帝国に送り返すことと、将軍の葬儀のために一足早く帝国に戻るそうだ。
そのため、今度の帝都侵攻作戦には参加しないとのことだ。
「先の防衛戦、ご苦労であった。王都を守ってくれたこと、王国を代表して感謝する。特に星の英雄たちはお手柄であった。わしを守ってくれてありがとう」
国王ゼフィールは改めて感謝の言葉を述べた。
「お気になさらず。僕たちは祖国を守るため、当然のことをしたまでです」
「そうか。ではローランド王国の為に、今後ともよろしく頼む」
「はい。陛下、僕たちは後日、帝国に立て直される前に帝都に攻め込み、皇帝ゴスバールの野望を打ち砕きます。準備が整い次第、出発するつもりです」
「ああ、頼んだぞ」
「陛下、私も王国騎士団を率いて帝都への侵攻を行います」
「お父さま、疲れているでしょう? 無理はせず、私たちに任せて!」
「何を言うのだ、ルナ。子供たちが頑張ると言うのだ。我々、大人たちも共に戦うぞ。何より、君たち4人だけでは戦力にならんだろう?」
「そうね、お父さま。ありがとう」
セラフィー公爵も軍を出してくれると言う。
「だが、王国軍はかなりの戦力を喪失してしまった。正規兵だけでは足りないだろう。そこで、他国から援軍として駆けつけてくれた同盟軍諸君の力をお借りしたい。よろしく頼む」
セラフィー公爵がそう言って頭を下げた。
「当然でしょ? そのためにわざわざ駆けつけたんだからね!」
「我々同盟国はみな、星の英雄たちによって救われた。私たちフォースター王国騎士団一同も協力する所存でございます」
「我々ジャズナ王国軍も、ローランド王国軍に協力する」
「私たちカグラ公国軍もお力添えいたします」
同盟軍のリーダーたちが、ローランド王国に協力してくれるという。
「ありがとう、諸君。私は今ここに、改めて王国同盟軍の結成を宣言する!」
セラフィー公爵が王国同盟軍を宣言した。
「では、これより帝都侵攻作戦についての作戦会議を行う。諸君らも知っての通り、先日の防衛戦は我々王国同盟軍の勝利に終わった。帝国軍は兵力を消耗し、今こそ帝国へ攻める好機だ。王国同盟軍は一気に帝都に侵攻し、皇帝ゴスバールの野望を打ち砕くのだ! 我々も消耗しているが、それ以上に帝国軍は疲弊している。今度こそ、我々王国軍は帝国軍に勝利し、王国同盟に真の平和を取り戻すのだ! 作戦の決行は3日後だ。民間人への危害は決して加えないようにするのだ。出発までに準備をしておけ。諸君らの健闘に期待する」
セラフィー公爵が敬礼すると、この場にいる全員が敬礼で返した。
そして作戦会議が終わり、解散となった。
解散後、皇女ローラが僕に話しかけてきた。
「ファインさん、私も一緒に連れて行ってください」
「どうしたんですか?」
「妹として、兄と向き合いたいのです。どうかお願いします」
「わかりました。共に行きましょう」
皇女ローラは僕たち同行し、帝都へ行くことを希望する。
そのため、僕は皇女ローラを連れて行くことにした。
■■■■■
そして、作戦会議の日から3日が経過し、出発の日を迎えた。
王国騎士団と同盟軍は集合し、いつでも出発できる状態になった。
そこに、リーダーであるセラフィー公爵がやってきた。
「全員集まったな。よし、これより我々はグランヴァル帝国帝都オストに向けて出発する。世界の平和を脅かす皇帝ゴスバールを倒し、その野望を打ち砕くのだ! そして、我々の手で世界の平和を取り戻すのだ! 全軍、出発せよ!!」
セラフィー公爵の号令で、王国同盟軍は帝都オストに向けて出発した。
国境を通りグランヴァル帝国に入ったが、ここに至るまで帝国兵は一人としていなかった。
やはり、この前の防衛戦で帝国軍は相当な兵力を喪失しており、国境防衛もままならないようだ。
そして、王都エストを出発してから約3週間が経過し、僕たちは帝都のすぐ近くまで来ていた。
この時点で、第二次王帝戦争の開戦から半年が経っていた。
この戦いで、人々はすでに疲弊している。
皇帝ゴスバールを倒し、一刻も早くこの戦争を終わらせなければならない。
帝都の南側では、帝国軍の防衛部隊が待ち構えていた。
王都に侵攻してきた時と比べると少ないが、それでもかなりの多くの兵力が残っている。
こちらの兵力も決して多くはないが、数名のエースたちが集まっている。
きっと勝つことが出来るだろう。
「全軍、止まれ!!」
セラフィー公爵が突然、王国軍に停止命令を出した。
「帝国軍に降伏勧告を出す。使者を送れ。文面は『全軍降伏し、武装解除せよ。そして、皇帝ゴスバールを王国軍に差し出せ。そうすれば、兵士たちの命を保証はする。ただし、断れば貴様たちに対し、全面攻勢をかける』だ」
「ハッ」
セラフィー公爵の命令で、帝国軍に対して使者が出された。
「ちょっと! どういうつもりなの!? 降伏勧告って、あなたは皇帝を倒しに来たんじゃないの? 手筈と違うじゃない!」
「エリシア、落ち着きなさい。セラフィー将軍に失礼よ」
「私は無益な戦いを好まない。あくまでも平和的手段で解決するつもりだ。まずは、皇帝の身柄を拘束する」
セラフィー公爵は、平和的手段で戦いを終わらたいと言う。
それに対し、エリシアさんは批判的な意見を出す。
「僕も納得行きません。責めて皇帝の首だけでも討ち取るべきです」
「ダメだ、これは命令だ! 帝国は先の戦いで疲れ切っている。敵とは言え、これ以上多くの命を奪いたくはない」
「それこそ、今すぐにでも皇帝を殺さないと、もっと多くの命が奪われかねません! これは僕の勘ですが、皇帝は僕たちの想像以上に危険な気がします」
「……なぜ、そう言えるのだ?」
「帝国の……いや、皇帝の背後には、きっと僕たちの想像を超える“何か”が関わっている」
「皇帝の背後に、我々の想像を超える何かがいるだと? 君は一体、何を言っているのだ?」
「ファイン、落ち着いて。お父さまは、平和的な手段で戦いを終わらせようとしているのよ」
セラフィー公爵と口論をしていると、ルナが僕をなだめる。
すると、帝国陣営から使者が戻って来た。
「報告いたします。帝国軍に対して降伏勧告を出しました。しかし、帝国軍はこれを拒否。『我々帝国軍は、王国軍に対して全面攻勢に出る。すべては皇帝陛下のため』とのことです!」
「なんだと!? 残りの兵力は少ないと言うのに、なぜ皇帝はこれ程の余裕を見せるのだ?」
「おそらく皇帝は、魔王から力を与えられているんです。いや、むしろ魔王に利用されていると見た方がいいかもしれません」
「バカな!? なぜ魔王がこの戦いに関与しているのだ!?」
「セラフィー公爵、時間がありません。帝国軍が迫ってきています!」
帝国軍が武器を構えてこちらに向かってきている。
「どうして、そこまでして戦いを続けるの……?」
「どうやら、やる気みてぇだな! オレ様が相手してやるぜ!!」
「仕方がありません。参ります」
「チッ、やむを得ん。こうなったら、応戦する。全軍構えろ! これより帝国軍と戦闘を行う! 私に続けーーッ!!」
「「「おおおおおおおッ!!!」」」
結局、王国同盟軍と帝国軍は、再び激しい戦いを迎えるのであった。
■■■■■
ついに王国同盟軍は、帝国軍との最終決戦を迎える。
両軍は全力でぶつかる。
帝国軍は、お馴染みの魔鎧騎兵部隊を前面に出す。
魔鎧騎兵は隊列を組んでこちらに向かってくる。
しかし、ここまで来れば、その防御力の高さはすでに対策済み。
接近される前に、風斬刃で切り刻んだ。
そして走って一気に近づき、剣で首を切断した。
堅さという長所よりも、遅さという短所が目立った。
魔鎧騎兵の後方には、魔導弓部隊が構えていた。
敵は一斉に魔導弓を発射した。
「セレーネ、結界だ」
「はい」
魔導弓から放たれた光線弾は、結界によって打ち消された。
その隙に僕は稲妻撃を放った。
魔導弓部隊は壊滅した。
そして、王国軍には数多くのエース格がいるため、徐々に優勢になりはじめる。
帝国は大半の六大帝将を失ったため、十分な戦力が残っていないようだ。
次第に敵の数は減り始める。
「クソーッ、こうなったら、例のモノを出せ!!」
「はっ!」
敵の司令官らしき人物が部下に指示を出す。
すると、敵陣の後方から大きな足音のような地響きが聞こえてきた。
いや、それは足音そのものだった。
やがて、足音の持ち主は少しずつ姿を現した。
「あれは、魔導人形!?」
帝国は魔導人形を放ってきた。
しかも、十数体もいる。
どうやら、ついに実用化を開始したようだ。
魔導人形は、ゆっくりとこちらに向かって来た。
そして、目元から光を発した。
「まずい、来るぞ! セレーネ、結界だ!」
「はい!」
僕の指示で、セレーネは結界を張った。
すると、魔導人形は目からレーザーを放ってきた。
辺り一面が焼け野原と化した。
結界を張ったセレーネの周囲は無事だったが、今の攻撃で王国軍にも少なからず被害が出た。
この前の戦いで、王国軍はすでに多くの兵力を失っている。
そのため、これ以上被害を大きくする訳には行かない。
「行くぞ、みんな! あの魔導人形たちを止めるんだ!」
「おう!」
「ええ!」
「わかりました」
僕の指示で仲間たちが動き出し、魔導人形に向かって走り出した。
ゴーレムは、背中や胸からミサイルを放ち迎撃してきた。
僕とルナはジャンプで回避し、セレーネとヒューイは結界で防御した。
そして、最初は100mはあったであろう距離も、あっという間に近づいてきた。
どうやら、レーザーは連続で発射できないようだ。
僕は接近しつつ、風斬刃を何発かゴーレムに向けて放った。
すると、3体のゴーレムが上下真っ二つに切れた。
この隙に、ルナとヒューイが僕を追い抜かし、一気にゴーレムに接近をかける。
ルナはものすごい勢いでゴーレムに肉薄すると、比較的脆い首を剣で斬った。
ヒューイは斧でゴーレムを叩き斬り、ゴーレムは一撃で粉砕された。
僕はゴーレムに接近すると、剣に強化魔法を付与し、首を狙って斬撃した。
ゴーレムの首が切断された。
しかし、まだかなりの数のゴーレムが生き残っている。
「みんな、下がれ! ここは敵を一掃する! 出よ、闇の精霊シェイド」
僕は闇の精霊シェイドを召喚した。
「ブラックホール!」
空間に大きなブラックホールが現れ、ゴーレムたちは次々に飲み込まれて行く。
強靭な魔導具でも、精霊の力に耐えることはできない。
何とか魔導人形を倒すことができた。
しかし、安心したのも束の間。
帝国はさらに魔導人形を用意してきた。
「まだこんなに魔導人形がいるのか!?」
「ファイン君たちは先に行け! 魔導人形たちを突破し、帝都に突入しろ!」
「セラフィー公爵!? しかし……」
「行ってください、ファインさん!」
「アンタはあたし達の希望なんだから、早く行きなさい!」
「残りは、私たち同盟軍が食い止める!」
「ここは俺たちに任せな!」
「みんな……」
「さあ行け、君たちは一刻も早く皇帝を倒すのだ!」
「わかりました! 行きましょう、ローラ皇女!」
「はい!」
仲間たちの言葉に従い、戦場は王国同盟軍に任せることにした。
馬に乗ってゴーレム軍団を突破し、皇女ローラと共に帝都を目指す。
僕たちは皇帝を倒しに行くことにした。