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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
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第120話 戦場の天使

【ルナ視点】


 王都東を指揮するお父さまの部隊が、苦戦しているとの報告が入った。

 東の部隊から、他の部隊への救援を要請される。

 東から侵攻してくる帝国の部隊は、水のエキドナが指揮を執っているのだそう。

 私はファインの指示により、お父さまの救援に向かうことにした。


 そして、私は馬に乗って王都東へと駆けつけた。

 お父様とお兄様たちはまだ無事みたい。良かった。

 私は敵を切りつけ、すぐさまお父様たちと合流した。


「お父さま! お兄さま!」

「ルナ!」

「どうしてここに……!?」

「お父さまたちがピンチだって聞いて、助けに来たわよ!」

「それは助かるが、ファイン君は大丈夫か? まだそっちも敵の数は多いのだろう?」

「ファインなら大丈夫よ。お父さまだって、彼の強さは分かっているでしょう?」

「それもそうだな。ルナ、助けに来てくれてありがとう」

「お前がいれば、もう安心だ。ありがとう、ルナ」

「ルナがいれば心強いぜ!」

「それじゃあ、早いところ帝国軍を追い払いましょう!」


 私はお父さまたちの部隊に加勢した。

 敵の兵士たちがこちらに向かってきた。


氷結剣(アイスブランド)!」


 私は剣を振りかざし、氷結剣(アイスブランド)を放った。


「ぐわあああああっ!!」


 敵兵たちは勢いよく吹き飛ばされた。


「怯むな! まだこちらの方が数は多い!」


 敵も負けじと束になってかかって来た。

 近づいて来る帝国兵たちを、私は剣で切り刻んでいく。

 一人一人の強さは大したことはなかった。


 そこに、魔鎧騎兵トルーパー部隊が現れた。

 防御力が高く、生半可な攻撃を寄せ付けない。

 しかし、彼らの弱点は動きが遅いこと。

 そのため、近づかれる前に倒せば良い。

 私は風斬刃ウィンドブレイドを飛ばして攻撃した。

 魔鎧騎兵トルーパーの集団は真っ二つになった。

 その後方には、魔導弓シューターを構えた兵士たちがいた。


魔導弓シューター部隊、撃ち方始めッ!!」


 軍師らしき女性の号令で、敵兵たちは一斉に魔導弓シューターを撃ち始めた。

 私は先陣を切ってダッシュした。

 赤いビームの弾幕がこちらに向かって飛んで来た。

 私は氷結剣アイスブランドを応用して、目の前に障壁を作った。

 ビームが氷の壁により、遮断された。

 そして、私は魔導弓シューター部隊に一気に近づき、剣で切り刻んだ。


 私が来たことで、王国軍の東部防衛部隊は優勢になっていった。

 でも、それを見て敵が黙っているはずがない。


「ルナ・セラフィーを狙え! あの小娘を倒さない限り、こちらに勝利はないよ!」

「ハッ!」


 水のエキドナの指示により、帝国軍の兵士たちが私に対して一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 私は単騎で敵に突っ込んでいたのを忘れており、気がついたら孤立していた。


「うおおおおおおおお!!!」


 お父さまが雄叫びをあげながら、馬で駆けつけてきた。


「お父さま!」

「一人で敵陣に突っ込むな、ルナ!」

「ごめんなさい」

「さあ、敵を蹴散らすぞ!」

「はい!」


 私はお父さまと協力して、敵を蹴散らすことにした。

 数こそ多いが、一人一人はそれ程強くはない。

 お父さまと二人で協力すれば、敵の数を減らせるはず。


「隙だらけだよ!」

「しまった!」


 私に氷の槍(アイス・ジャベリン)が三発飛んできた。

 放ったのは、敵の将軍である水のエキドナだった。

 しかし、お父さまが私の前に出てきた。


「ぐはっ!?」

「お、お父さま!?」

「ぬうぅ……」


 お父さまは私を庇い、氷の槍(アイス・ジャベリン)を受けてしまった。

 お父さまは血を吐き、その場に倒れてしまった。

 エキドナの狙いはこれだったのか。

 私はすぐに魔法でお父さまを回復しようと試みる。


「そうはさせないよ! 兵士たち、やっておしまい!!」


 エキドナは配下の兵士たちに攻撃の指示を出した。

 絶体絶命。

 しかし、次の瞬間。

 後方から敵めがけてビームが飛んできた。


「なにぃ!?」


 後ろを振り返ると、王国兵たちが魔導弓シューターを撃っていた。

 もともと、帝国軍だけが持っている魔導具だったが、レオナルド将軍が王国に協力する時の手土産として持ってきた物だった。


「撃て撃てぇーッ!! セラフィー将軍たちをお助けするのだ!!」


 ビームの弾幕により、次々と敵が倒れて行く。

 その光景を見たエキドナも驚いていた。

 その後、サンお兄様とフレアお兄様が騎士たちを連れて駆けつけた。


「父上!?」

「お兄様、お父さまが!」

「父上!!」

「わ、私は大丈夫だ……」

「ルナ、早く回復を!」

特級治癒エクストラヒール!」


 お父さまは重傷だったが、まだ意識はある。

 私はすぐに特級治癒エクストラヒールでお父さまを治療した。

 お父さまの傷はすぐに良くなった。


「ありがとう、ルナ。おかげで楽になったよ」

「みんなは下がってて!」

「どこへ……!?」


 私は立ち上がり、単騎で前へ出た。


「おや、お嬢ちゃん、アンタがアタシの相手をしてくれるのかい?」

「ええ。これ以上被害を出さないためにも、私が相手をするわ!」

「勇敢だねぇ。でもアンタ一人で勝てる程、戦は甘くはないよ」

「私を甘く見ない方がいいわよ」


 私は水のエキドナに戦いを挑む。

 これ以上、家族や仲間を傷つけさせるわけには行かない。


「お前たち、あの小娘が一人でやってきた! 今がチャンスだ、やっておしまい!」


 敵兵たちが一斉に私へと向かってきた。

 これ以上、戦闘を長引かせる訳には行かない。

 ここは一気に決める。


 私は剣を天高く掲げた。

 すると、空一面を暗雲が覆う。

 帝国兵たちも思わず足を止めてしまう。


「な、なんだ、これは……?」

「まずい! アレが来る! 結界バリアーを展開するよ!」


 水のエキドナはそう言うと、 自分たちの頭上に大きな結界バリアーを展開した。

 結界バリアーを張ったエキドナは、安堵の表情を浮かべていた。

 やがて、暗雲はさらに大きくなり、稲妻が走った。


稲妻斬撃サンダースラッシュ!!」


 私は全身全霊を込めて、剣を振り下ろした。

 無数の稲妻が帝国軍を襲った。

 帝国軍はエキドナが張った結界バリアーによって守られている。

 しかし、次の瞬間……。


「ギャアアアアアアアアア!!!」

「「「ぐわあああああああああッ!!」」」


 私の放った稲妻斬撃サンダースラッシュは、結界バリアーをあっさりと打ち砕き、敵陣営に甚大な被害をもたらした。

 水のエキドナはけたたましい断末魔の声を上げて、その場に倒れた。


「す、すごい威力だ……」


 お父さまたちも驚いていた。

 空を覆っていた雷雲を消え、青空が戻った。


「な、なんて魔力なんだ……騎士のくせに……」


 エキドナはそう言い残して力尽きた。

 今の攻撃で、敵の3割くらいは壊滅した。


「だから言ったでしょ、私を甘く見るなって」


 エキドナにはもうそんな事聞こえないと思うが、一応言っておく。


「くっ、怯むな! まだこちらの方が数は多い!」


 先程から帝国軍を指揮している、女性軍師が兵士たちに指示を出してきた。

 しかし、エキドナを失った帝国軍の士気はすでに下がっている。

 私は敵兵を突破し、軍師のもとへ肉薄した。

 そして、軍師に剣を突き付けた。


「退きなさい、もうあなた達に勝ち目はないわ。それとも、まだやるつもり?」

「くっ……覚えていなさい!」


 女性軍師はそう言うと、兵士たちに撤退命令を出した。

 今日は、魔力をいつもより多く消費したためか疲れた。

 そのため、私は安心すると共に地面に座り込んでしまった。


「ルナ、大丈夫か!? どこか怪我でも……」

「ううん、大丈夫よ。ちょっと疲れただけ」


 優しいサンお兄さまが私を心配して声をかけてくれた。


「ルナ、助けに来てくれてありがとう」

「やっぱルナはすげぇや! たった一撃で敵を撃退しちまうんだから!」


 お父さまが感謝の言葉を述べた。

 フレアお兄さまは私のこと褒め称え、頭を撫でる。

 ちょっと照れくさいな。

 私自身も家族を救えて良かったと思う。

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