第119話 援軍
闇のクロノス、天のジェノスといった六大帝将を倒すことに成功した。
しかし、相変わらず王国軍は帝国軍に対して劣勢だった。
六大帝将以外にも、有能な将軍が敵の中にいるようだ。
次々送られる敵の援軍に対し、王国軍は戦力を消耗しつつあった。
「おいおい、これはヤバいぜ! さっきよりも敵が増えてるんじゃねぇか!?」
ヒューイとセレーネもすでに消耗している。
ディオーランがいるであろう、西の部隊に援軍として駆けつけたいが、そんな状況ではない。
こちらも敵が多く、すでに手一杯だった。
体力には自信のある僕でも、さすがにこの数はきつい。
あまりの敵の多さに、次第に僕たちも消耗しつつあった。
「魔戦士ファインさえ倒せば、我が軍が圧倒的に有利になる!!」
敵の兵士たちが僕に向かってきた。
すると、複数の矢が飛んできて、敵兵たちを精確に射抜いた。
「大丈夫ですか? ファインさん」
殺伐とした戦場で、女神のような穏やかな声が聞こえてきた。
だが、その声には聞き覚えがあった。
振り返ると、そこにはアリシアさんがいた。
「お久しぶりです。ファインさん」
「アリシアさん!? どうしてここに?」
「お姉ちゃんだけじゃないわ。あたしもいるわよ!」
「ボクも!」
「ニャ!」
よく見ると、冒険者パーティー【ミネルバ】のメンバーが集まっていた。
エルフィード姉妹、それにミーナとフランといった懐かしい面々が集った。
「援軍か? しかし、たかだか4人だけで、我ら帝国に勝てると思うな!!」
そう言うと、数人の帝国兵たちが一斉に向かってきた。
しかし、その帝国兵たちは突然現れた何者かによって切り刻まれた。
「ファイン殿、義によって助太刀いたす」
それは、フォースター王国の聖騎士であるエリーゼさんだった。
エリーゼさんは複数の騎士たちを率いていた。
「エリーゼ!? なぜここに……」
「遅れて申し訳ありません、セレーネティア殿下。まさか、帝国軍のローランド侵攻がこれ程早いとは思いませんでした」
「それはいいですが、なぜ……?」
「フォースター王国とローランド王国は同盟を結んだ。その同盟国が危機ならば、駆けつけるのは当然だろう? 何よりファイン殿、あなた方がフォースター王国を蛇大臣から救ってくれたことをお忘れか? これはその恩返しだ。我々フォースター王国騎士団は盟約に従い、これよりローランド王国軍に加勢する!」
「あ、ありがとうございます!」
「ありがとう、エリーゼ」
フォースター王国から来た仲間たちが加わった。
「ファイン殿、我々カグラ公国騎士団も協力しよう」
「ロイドさん!」
ロイド殿がカグラ公国から騎士団を連れて来た。
「私たちも協力しよう」
「俺たちも来てやったぜ、ファイン!」
「我々、ジャズナ王国軍は女王陛下の命に従い、同盟国ローランド王国に協力する」
ギースさん率いるジャズナ王国騎士団、そしてガレットの砂漠のサソリも駆けつけた。
「兄貴じゃねぇか!? 来てくれて嬉しいぜ!」
「久しぶりだな、ヒューイ。元気にしてたか?」
「もちろんだぜ! それがオレの取り柄だからな!」
「それは何よりだ。では、目の前の敵を片付けるとするか!」
「おう!」
ここに来て、次々と強力な仲間たちが集まった。
それはかつて、各国を旅した時に何らかの形で助けた人たちだった。
今回、その恩返しとしてローランドへ救援に駆けつけたという。
やはり人々の心は温かい。
人助けをして良かったと改めて思う。
「みんな、ありがとう。しかし、東西の敵もまだ多いはずです。来ていただいて早々ですが、フォースター王国軍と、ミネルバのメンバーには東への援軍を任せます」
「わかった」
僕の指示により、エリーゼさんが率いるフォースター王国軍は東へ移動した。
「ジャズナ王国軍とカグラ公国軍は西へ行ってください」
「おう!」
「了解した」
ジャズナ王国軍とカグラ公国軍も、王都西への移動を開始した。
しかし、まだ残っているメンバーもいる。
「ミネルバの皆さんも早く……」
「いいえ、私たちはこのままファインさん達に加勢します」
「アンタ一人で、頑張る必要もないんじゃない? あたし達もアンタに協力するわよ」
「エリシアの言う通りだよ。ボクたちもいるから、ファイン君にばかり無理はさせないよ!」
「それに、あの時オークから助けてもらった“借り”をアンタに返すの」
「えっ、借りって……?」
「……か、勘違いしないでよね!? あくまでも借りを返すだけよ! 決して、恩返しじゃないんだからね!!」
エリシアさんは頬を赤らめながらそう言う。
恩返しではなく、あくまでも借りを返すのだと主張した。
相変わらずのツンデレぶりである。
「相変わらず素直じゃないな~、エリシアは」
「素直じゃないニャ」
「うるさい!」
エリシアさんは顔を膨らませながらそっぽを向く。
「お喋りはそこまでです。みんなで協力して、帝国軍を追い払いましょう!」
「ええ、お姉ちゃん!」
「任せてよ!」
「了解ニャ!」
アリシアさんが指示を出すと、ミネルバは戦闘を開始する。
アリシアさんは一度に三本の矢を飛ばして攻撃する。
三本の矢は、精確に帝国兵の眉間を撃ち抜く。
エリシアさんは魔導弓を撃ち、華麗にヘッドショットを決める。
フランとミーナは素早い身のこなしで、帝国兵の攻撃を躱しつつ、逆に自分たちの攻撃は的確にヒットさせる。
特に、フランはあれから随分と成長したようだ。
動きのキレが良くなり、未熟さがなかった。まるで別人のようだ。
「こいつら数だけで、実力は大したことはないようね!」
「エリシア、油断しないように。まだ敵の数は多いわ」
「わかってるわよ、お姉ちゃん!」
ミネルバは帝国兵たちを次々と蹂躙していった。
そして、同盟国からの援軍により、次第にこちらが優勢となった。