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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
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第118話 復活の天

 王都の西部では、アルベルト将軍が率いる部隊が奮闘していた。

 その傘下には、レオナルド将軍やグロリアの竜騎士団も加わっている。

 そんな彼らのもとに、凶報が入る。


「報告します! 敵の増援が現れました!!」

「やはり現れたか……」


 しかし、そこに現れたのは、よりにもよって【天のジェノス】だった。


「ほう、貴様らは……レオナルド、それにグロリアか」

「お前は、ジェノス! ジャズナ王国で戦死した筈のお前が、なぜ生きている!?」

「違うな、俺は辛うじて生きていたのだ。ファイン・セヴェンスの攻撃で瀕死の重傷を負った俺は、協力者に助けられ、一命を取りとめたという訳だよ。そういう貴様らは、なぜ王国側に就いている? まさか帝国を裏切り、皇帝陛下に反旗を翻したというのか?」

「これ以上、ワシらは皇帝陛下の暴挙を許すワケにはいかん。皇帝陛下を打ち倒し、エノウ大陸に真の平和をもたらして見せよう」

「そうか。ならば、裏切り者どもよ、この俺が裁きの鉄槌を下してやろう!!」


 天のジェノスは、光のレオナルドとグロリアと戦闘を開始した。


「行くぞ!」


 ジェノスは先制攻撃を仕掛けた。


「ぬうっ!?」


 ジェノスの義手の力に圧倒されるレオナルド。

 レオナルドの右腕も同じく義手である。

 しかし、ジェノスの義手は最新型の魔導具である。

 よって、その力の差は歴然であった。


「この力はっ!?」

「老いぼれが。腕が衰えたようだな」

「ちっ……!」

「レオナルド将軍!」


 グロリアは光のレオナルドの援護に回る。

 しかし、グロリアの攻撃をジェノスは難なく防いだ。

 グロリアではジェノスを倒すどころか、互角に戦うことすら容易ではなかった。

 次第に、ジェノスに押されるグロリア。防御するのがやっとであった。


「未熟者め、その程度の腕では俺を倒せん!」

「くっ……!」


 元々強かった天のジェノスだったが、復活してからは更に手に負えなくなっていた。


「フン、歯ごたえのない連中だ」

「どこへ行く!?」

「俺の本命は、貴様ら裏切り者どもではない。俺に深手を負わせたファイン・セヴェンスだ。ヤツは必ず、俺の手で殺してやる!!」


 ジェノスはそう言うと、迅速にその場を去っていった。


「逃がすか!」


 レオナルドはジェノスを追おうとする。


「どこへ行こうとしている? 裏切り者のレオナルド。貴様の相手は我々だ!」

「くっ!」


 しかし、ジェノスの部下の竜騎士たちがレオナルドの行く手を阻む。


「やああああああっ!!」


 突然、そこへグロリアが突撃してきた。

 そこにはグロリアと共に、フィリップ以下親皇女派の竜騎士たちも加わっていた。


「行ってください、レオナルド将軍!」

「しかし……」

「私たちは大丈夫です。それよりも早くジェノスを追ってください!」

「すまない、グロリア!」


 レオナルドはジェノスを追撃するために馬を走らせた。


■■■■■


 引き続き、僕たちは帝国の大軍と戦っていた。


「おりゃああああっ!!」


 ヒューイは斧で敵を薙ぎ倒し、セレーネは精霊を召喚して攻撃する。

 僕も剣や魔法を駆使して戦う。

 しかし、すでにかなりの敵を倒したはずだが、まだまだ敵の数は多い。

 増援が送られて来たか、あるいはもともと敵の数が多かったか。


「ヒューイ、無茶はするなよ。敵の数はまだまだ多い」

「おう!」

「セレーネも攻撃は僕たちに任せて、魔力はできるだけ温存するんだ」

「はい」

「!?」


 何だ? この気配は……。

 向こうから殺気と感じる。

 それと共に、禍々しい魔力の波動を感じる。 

 背筋を凍らされるようなゾッとした感覚だった。

 嫌な予感がする……。


 気配がしてからしばらくすると、西の方角から竜騎士団が向かってきた。

 そして、その正体が徐々に明らかになった。


「お、お前は……!!」


 それは、ジャズナ王国の王都マシャクで、僕が倒したはずの【天のジェノス】だった。

 右目の周囲は金属の板に覆われており、右目が赤く光っている。

 右目は義眼か。

 そして先程感じた邪悪な魔力は、ジェノスから感じ取れる。


「お前は、ジェノス!!」

「久しぶりだな、ファイン・セヴェンス。また会えて嬉しいぞ!」

「バカな、お前は僕が倒し、そして死んだはずだ!」

「違うな、俺はまだ辛うじて生きていたのだ。とは言え、あれはさすがに俺も終わったと思ったよ。ほぼ死にかけだった俺は【協力者】に助けられ、何とか助かったのだよ」

「アイツか……!」


 ジェノスは協力者に命を救われたと言う。

 ヒューイとセレーネも加わった。


「なかなか強そうなヤツが出てきたじゃねぇか! オレ様が相手してやるぜ!!」

「ファイン様、私も協力いたしますわ」

「下がれ、ヒューイ、セレーネ!!」

「何ィ!?」

「こいつは危険だ。ここは僕が戦う!」

「だったら、尚更みんなで戦ったほうがいいんじゃねぇか?」

「こいつは二人の手に負えるような相手じゃない。普通じゃない、何かヤバい感じがする」

「ちっ、わかったよ」


 ヒューイとセレーネは大人しく引き下がり、帝国の一般兵との戦闘を再開した。


「一人で挑むとは愚かな判断だな。だが、その方が復讐のしがいがあると言うもの。まずは貴様を殺し、俺の復讐を達成する! その後は王国軍を殲滅したのち、ローランドの民を一人残らず血祭りにあげてやろう!」

「冗談じゃない! ローランド王国の民には指一本触れさせないぞ! 復讐なら僕だけにしろ!」

「さあ行くぞ、ファイン・セヴェンス!」


 ジェノスは先制攻撃を仕掛けてきた。

 竜を巧みに操り、槍による強烈な刺突攻撃をする。

 僕はジェノスの攻撃を剣で受け止めた。


「な、なんだ!? このパワーはッ!?」


 想像以上の圧倒的パワーにより、僕は押され始める。

 以前戦った時、ジェノスはこれ程強くはなかった。

 右手は義手か。

 僕はジェノスから一旦離れ、すぐにもう一度接近する。

 そして、剣で攻撃する。

 ジェノスは槍で僕の攻撃をガードした。


「甘いな!」


 ジェノスはすぐに反撃に移る。

 槍による連撃。

 パワーのみならず、スピードまで強化されているようだ。

 これをガードしても、こちらが押される。


「フハハハハ!! 貴様の力はその程度かッ!!」


 ジェノスの攻撃に対して、僕は防戦一方にになっていた。

 反撃すらままならない。躱すのがやっとだ。

 まともにやりあっていては、こちらが消耗する。

 僕はジェノスから一旦距離を取った。


 すると、竜はすかさず口から火炎を吐いて攻撃してきた。

 それを僕は躱す。

 あまりの高威力により、地面が抉れてしまった。

 あれをまともに喰らったら、タダでは済まないだろう。


 そして、ジェノスは竜を操り素早く距離を詰めて来た。

 ジェノスは、再び槍で連続攻撃を仕掛けてくる。

 ヤツは疲れという言葉を知らないのか、という程に攻撃を続ける。

 僕は一瞬の隙を突き、剣でジェノスの胴体を刺した。


「バカめ、その程度の攻撃で俺を倒せると思っていたのか!」

「なにッ!?」


 ジェノスはすかさず反撃してきたので、僕は咄嗟に回避した。

 手応えはあった。

 しかし、ジェノスは何事もなかったかのように、攻撃を続けた。

 クロノスと同じだ。

 しかし違うのは、ジェノスからは禍々しい邪悪な魔力の波動を感じることだ。

 それは、ゲルマ湿地帯で遭遇したドラゴンゾンビとよく似た感覚だった。

 クロノスも確かに強かったが、強い魔力は感じなかった。

 待てよ、だとすればジェノスは……!


「もうやめろ、ジェノス。お前はとっくに死んでいるんだ」

「血迷ったか、何を愚かなことを言う? 俺は死んでなどいないぞ」

「ならば、なぜ胴体を貫かれて生きている? 普通は致命傷だぞ。お前はあの時……ジャズナで僕に討たれて死んだんだ。お前は【アンデッド】……つまり、死者として協力者に甦らされたんだ。お前は協力者に利用されているんだ!」

「フン! ならば、せいぜいこの“体質”を利用するまでだ! それに、貴様に対する復讐の価値はさらに上がった! 全身全霊の恨みを込めて、貴様を血祭りに上げてくれよう!! おい、貴様たち! ファイン・セヴェンスを攻撃しろ! ヤツを倒せば、勝利は目前だぞ!」

「「「おおおおおおおッ!!!」」」


 ジェノスの号令で、帝国の竜騎士たちが一斉に僕に狙いを定めて来た。

 一体一体の強さはそれ程でもないが、敵の数が多い。

 これだけの数で攻め込まれたら、さすがの僕でもひとたまりもない。

 次第に追い詰められていく僕だったが、何とか竜騎士たちを捌くことに成功した。

 しかし次の瞬間、背後の方から気配を感じた。


「もらったぞ、ファイン・セヴェンス!!」


 背後からジェノスが僕を狙って来た。


「しまった!」


 ヤツの狙いは最初からこれだったのか。

 ジェノスは自分の配下を上手く囮に利用することで、自分は安全に僕を攻撃することが狙いだった。

 絶体絶命のピンチ。


 しかし、そこへ突然誰かが乱入してきた。

 現れたのは、レオナルド将軍だった。

 レオナルド将軍は僕を庇い、胴体を槍で貫かれてしまった。


「なにぃ!?」

「レオナルド将軍!!」


 レオナルド将軍はその場に倒れてしまった。


「レオナルド将軍……なぜ!?」

「チッ、邪魔を……!!」


 僕はレオナルド将軍を治療しようとした。

 しかし、無慈悲にもジェノスはとどめを刺そうと槍を構えた。

 そこへ、ヒューイとセレーネが駆けつけてきた。

 ヒューイは斧でジェノスの攻撃を受け止めた。


「よくもやってくれたな!! おりゃあっ!!」

「ムシケラが、貴様程度の力では到底俺は倒せん!」

「くッ……!」


 ヒューイはジェノスと戦闘を開始した。

 しかし、ジェノスの言葉通り、ヒューイは押され始める。


「セレーネ、レオナルド将軍は僕が治療する。君はヒューイの援護を!」

「はい!」

「レオナルド将軍、しっかり! 今、治療します」


 僕は特級治癒エクストラヒールで、レオナルド将軍を治療しようと試みる。

 しかし、レオナルド将軍の傷は良くならなかった。


「もうよせ……この傷では、もう助からん……」

「しかし……!」

「気にするな、ワシはもう十分に生きた。ワシは今までに多くの若者が命を落とす瞬間を何度も見て来た。もうこれ以上、若者が死んでいく瞬間を見るのは辛い。戦場で死ぬことこそが、死んでいった若者たちに対するワシの唯一の贖罪。そして、ワシの本望……! お主はまだ若い。お主の命と比べたら、老いぼれのワシの命など安かろう」

「そんな事は……!」

「ファインよ、これからのエノウ大陸の未来をお前たちに託すぞ。皇帝陛下の野望を、お前たちが打ち砕くのだ。そして、お前たち自身の手で平和を取り戻すのだぞ……」

「はい……!」

「ワシにはわかる……お前たち【星の英雄たち(スター・ヒーローズ)】は、途轍もない力を秘めている。期待しているぞ……」


 レオナルド将軍はそう言うと、静かに眠った。

 一方でヒューイとセレーネは、ジェノスとの戦闘を続けている。

 二人は何とか善戦しているものの、ジェノスにはいまだ傷一つ付けられていない。

 そして、ヒューイは竜の火炎で吹き飛ばれてしまった。


「ぐおおおおおおッ!?」

「別れの挨拶は済んだか!? ならば、今度こそ終わりにしてやろう!!」


 ジェノスが標的をヒューイから僕に変えて来た。


「出でよ、光の精霊【ウィル・オ・ウィスプ】」


 僕は光の精霊ウィル・オ・ウィスプを召喚した。

 ジェノスがアンデッドならば、光魔法が有効なはずだ。

 精霊が見えているはずだが、憎しみのあまりかジェノスは構わず突っ込んで来る。


「聖なる光よ、邪なる者を浄化せよ……【ホーリーライト】!」


 眩い光がジェノスを包み込む。


「ギャアアアアアアアアア!!!」


 光に包み込まれたジェノスの身体は、火に焼かれたように崩壊していく。

 やはりジェノスはアンデッドになっていたようだ。

 ジェノスは断末魔の叫び声をあげた。

 そして、ジェノスと彼の竜は完全に消滅した。


 しかし、まだ不利な戦況は続いている。

 帝国軍は次々と援軍を送って来たようだ。

 東ではセラフィー公爵の部隊が、水のエキドナの軍勢と戦っている。

 それに、【地のディーン】ことディオーランもいるはずだ。

 彼を倒さない限り、王国軍に勝利はないだろう。

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