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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
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第117話 クロノスの謎

 王国軍の一部隊をセラフィー公爵から任され、帝国軍から王都北部の防衛を行っていた。

 そこに六大帝将の一人である、闇のクロノスが現れた。

 クロノスは僕たちの前で馬を降りた。


「久しぶりだな、諸君」

「お前はクロノス!」

「私は今一度、お前たち二人に勝負を挑みたい。あの時の屈辱を晴らさせてもらう!」

「いいだろう。ヒューイ、セレーネ。ここは僕とルナに任せて、二人は周囲の敵を掃討してくれ」

「本当に二人だけで大丈夫なのか?」

「まだ敵の数は多い。4人全員で挑むよりも、分散して敵を倒した方が効率的だ」

「おう!」

「わかりました」


 一般兵はヒューイ達に任せて、僕とルナは闇のクロノスの相手をすることにした。


■■■■■


 クロノスは両手に、合計二本の剣を構えている。

 ヤツの本領は『二刀流』のようだ。


「さあ、行くぞ」


 クロノスはそう言うと、ダッシュで向かって来た。

 僕とルナは、クロノスの剣戟を受け止める。

 やはりクロノスの一撃は重い。


 その後、すぐに激しい戦闘になった。

 クロノスは二本の剣を巧みに操る。

 その剣戟に、僕とルナは押され気味だった。

 二人がかりで挑んでもこれか。


 僕は正面からクロノスの攻撃を受け止めた。

 その直後、ルナが素早くクロノスの背後に回り込み、剣で攻撃した。

 しかし、クロノスは重厚な防具をものともせずに、ジャンプでかわした。


「背後からの攻撃など、私には通用せんぞ」


 やはり、一筋縄では行かないようだ。

 僕とルナは、クロノスに立ち向かう。

 クロノスの二刀流は、まるで隙がない。

 攻撃を防ぐのがやっとだった。

 クロノスは横に斬撃を放つ。

 それを僕たちは躱し、一旦距離を取った。

 クロノスは両手の剣をそれぞれ横に振った。


暗黒刃ダークカッター!」


 二本の剣からは、闇の刃が高速で飛んで来た。

 僕は横に躱し、ルナはジャンプで攻撃を回避した。

 ジャンプと同時に、ルナは再びクロノスへ距離を詰めた。

 降下と同時にルナは斬撃を放つ。

 クロノスは左手の剣で、ルナの一撃を受け止める。

 そして、右手の剣で反撃を行う。

 ルナはその攻撃を躱すが、クロノスはすかさず連撃を入れる。

 ルナは今、押されている。


「離れろルナ! 火球(ファイアボール)!」


 僕は後方より、クロノスめがけて火球(ファイアボール)を放った。

 クロノスは最低限の動きで回避した。

 その直後、ルナがすぐに追撃を入れた。

 クロノスは躱しきれずに、ルナの一撃を受けてしまう。

 傷口からは血が出てきた。しかし、血はすぐに止まった。


「なかなかの連携力だな。だが、その程度で俺は倒せぬぞ」


 あの時と同じだ。

 傷は深かったはずなのに、すぐに治ってしまう。


 一体、ヤツは何者なんだ?


 クロノスはすぐに僕たちに向かって走って来た。

 そして、僕たちに対して激しく攻撃する。

 クロノスの二刀流を駆使した激しい剣戟に防戦一方になる。

 そして剣で弾かれ、距離を取られてしまう。

 クロノスは間髪入れずに、次の攻撃に移った。


闇の衝撃波(ダーク・ウェイブ)!」

「ぐわああああっ!!」

「きゃああああっ!!」


 クロノスは剣を振り下ろし、闇の衝撃波を放ってきた。

 ギリギリで回避したため直撃は免れたが、衝撃で吹き飛ばされてしまった。

 やはり、クロノスは他のどの帝将よりも強い。


「この程度か。他愛ない」

「まだだ……まだ終わりじゃない!」


 ここは、反撃の隙を与えないように、連続で攻撃するしかないか。

 僕はクロノスに向かってダッシュで向かった。

 そして、クロノスに対して剣戟を行う。

 クロノスも反撃するが、僕はそれを上手くかわす。

 そこにルナも加勢し、二人がかりでクロノスを攻撃する。

 次第に、クロノスは防戦一方になっていく。

 クロノスがいくら強くても、人数差で押せばどうにかなるようだ。

 そして、僕は一瞬の隙を突いてクロノスの腹部を刺した。

 ところが、クロノスは力強く剣で反撃してきた。

 僕とルナはすぐに回避した。

 クロノスの傷口からは大量の血が出るが、それはすぐに収まった。

 回復魔法をかけた素振りは見せていない。


「フッ、少しはやるようだな」

「胴体を刺したと言うのに、すぐに血が止まる。やはりお前には何か“謎”があるな」


 クロノスは再び僕たちに向かって来た。

 僕とルナは、もう一度コンビネーションでクロノスに挑む。

 二人がかりならば、クロノスと互角以上に戦うことができる。


「さすがだな。だが、それだけ激しく動いていては、果たして体力は持つかな?」

「そうかな?」

「何?」


 確かに、クロノスの言う通り激しく動くと体力の消耗は著しい。

 しかも、今回は帝国が大軍で攻めてきているため、長期戦は必至だ。

 だが、僕とて生半可に体力を鍛えてきた訳ではない。

 それに、僕はただ闇雲にクロノスと戦っている訳ではないのだ。


「何だ? 体の動きが鈍いぞ……!?」

「ようやく気がついたか」

低速化(スロウ)か!」

「そうだ。同時に僕たちには高速化ファストもかけておいた。まともにお前とやりあっても、消耗するだけだからな」


 僕はもう一度、クロノスとぶつかり合う。

 隙を突いて生命創成(ライフクリエイト)を使い、蔦でクロノスの動きを封じた。


「何? これは……【生命創成(ライフクリエイト)】かっ!」

「今だ、ルナ! やれっ!!」

「ええ!」


 僕が指示を出すと、ルナは剣を天高く掲げた。

 すると、雷雲が空を覆った。

 僕はクロノスから距離を取った。


「あれは!? まずいッ!」


 クロノスは何とか蔦から抜け出そうともがく。

 しばらくして、ようやくクロノスは蔦から抜け出すことができた。

 だが、時すでに遅し。


稲妻斬撃(サンダースラッシュ)ーー!!」

「ぐわあああああああッ!!」


 クロノスに稲妻の剣が直撃した。

 断末魔の悲鳴をあげるクロノス。

 あまりの破壊力で、周囲に土煙が発生した。

 そして、土煙が晴れた。

 そこには、瀕死ながらもクロノスはまだ生きていた。


「これだけの攻撃を受けながら……まだ生きていられるのか……!!」

「どうやら、またしても貴様たちにしてやられたようだ……」

「やはり、お前には謎があるようだ」

「ファイン・セヴェンス、それにルナ・セラフィー……この私をここまで追い詰めるとは……やはり貴様たち【星の英雄たち(スター・ヒーローズ)】の存在は危険だ。これ以上、戦闘の継続は不可能だ。悪いが撤退させてもらうぞ。……諸君、また会おう」


 クロノスはそう言うと、転移石を使って撤退した。

 とりあえず、強敵を一人撃退することに成功したか。

 しかし、危機はまだ去ったわけではない。

 帝国軍はまだかなりの戦力を残している。

 それに他の帝将たちもいるはずだ。

 敵の戦力を削ぎ、一刻も早くこの戦いを終わらせなくては。


「報告いたします! 東側で戦っているセラフィー将軍の部隊が、水のエキドナの軍勢によって劣勢に立たされています!!」


 一人の兵士が馬に乗って駆けつけてきた。

 それは、セラフィー公爵たちが苦戦しているとの悪い知らせだった。


「その為、他の部隊に対する援軍要請が出されています!! 至急、援軍を!!」

「行くんだ、ルナ」

「でも……!」

「ここは任せろ。僕たちだけでも大丈夫だ! さあ、お父様を助けに行くんだ!」

「わかったわ!」

「一個小隊、ルナを援護するんだ!」

「はっ!」


 ルナは数名の騎士たちと共に、馬で東のセラフィー公爵のもとへ急いだ。


■■■■■


 その頃、とある帝将が援軍を率いて王都に向かおうとしていた。

 そう、【天のジェノス】である。


「ファイン・セヴェンス……ヤツはこの俺が必ず殺す!!」


 ジェノスは、自分をこんな目に遭わせたファインに対し、復讐心を募らせていた。

 当初、周囲の帝国兵たちは復活したジェノスを前に驚いていた。

 しかし、皇帝の命でジェノスの部隊に加わることになった。


「クックックッ……さあ遊ぼう、ファイン・セヴェンス! 貴様はこの天のジェノスが相手をしてやろう!」

「準備はいいですか、ジェノス将軍」

「ああ、もちろんだ。さっさと転移門ゲートを開け!」


 協力者は転移門ゲートを開いた。

 ジェノスはいよいよ行動を開始する。

 すべては、ローランド王国を滅ぼす為に。

 そして、今度こそファインを倒すために。

 しかし、それはとある人物の思惑に過ぎなかった。

 そのことを、ジェノスが知る由もない。

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