表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
112/158

第111話 光のレオナルド

【レオナルドの過去回想~18年前】


 英暦285年。

 ワシは18年前の第一次王帝戦争時から、六大帝将として帝国軍を率いていた。

 20年以上前に当時の皇帝陛下より、光の地位を授かって以来、皇帝陛下に忠誠を誓ったのだ。


 18年前のある日、ワシはローランド王国に侵攻しようとしていた。

 グランヴァル帝国は世界最強の国。

 技術力においても、軍事力においても、帝国に敵う国はいなかった。

 今回の侵攻作戦も帝国が勝つであろう。

 【あの男】が現れるまでは、そう思っていた。


 開戦から早2年。

 帝国軍は順調にローランドを侵攻しつつあった。

 ところが、帝国の優勢は徐々に崩されて行った。

 ローランド側には、剣士ランスロットと大魔道士ユグドラという、二人組のS級冒険者が現れたというのだ。

 二人の存在は帝国軍内部でも囁かれていた。

 この二人の活躍により、帝国に占領されていた各国は次第に奪還されて行ったという。

 そんな話は、にわかには信じがたいと思っていた。

 だが、ランスロットと戦うことで、次第にその話を信じざるを得なくなった。

 そして、ワシはランスロットと実際に対峙することになる。


「帝国の将軍とお見受けした」

「私は六大帝将の一人、レオナルド・フォン・ガイウス。皇帝陛下より光の地位を授かった。【光のレオナルド】とも呼ばれている」

「俺はランスロット。S級冒険者だが、今は戦時中ゆえに王国軍に協力している」


 ランスロットは剣士の名の通り、剣を装備している。

 そして、鎧兜を纏っており、素顔は見えない。

 ランスロットは信じがたい提案をしてきた。


「将軍レオナルド、悪いことは言わない。戦いを辞め、軍を撤退させてはくれないか? 今ならまだ間に合う。命だけは助けてやろう」


 ランスロットは敵であるワシに対し、逃げろと言って来たのだ。

 しかし、ランスロットに対するワシの答えはこうだ。


「残念ながら、その提案は呑めぬ」

「戦争は愚かだと理解しておきながら、なぜ戦う? なぜ大勢の死人がでるとわかっていながら……」

「私は皇帝陛下に忠誠を誓った身だ。例え、如何なる犠牲が出ようとも、退くことは出来ぬ」

「そうか、ならば仕方がない。敵が攻めてくる以上、こちらも戦わねばならぬ。許せ、ここから先は容赦はしない!」


 そう言うと、ランスロットはワシに接近してきた。

 そして、剣による斬撃を放った。

 ワシは自身の剣で斬撃を受け止めた。


「ぬう!? このパワーはッ!?」


 ランスロットの力は想像以上だった。

 これ程の力を持った人間がいるのかと、当時ワシは思った。

 ワシは一旦、ランスロットから距離を取ることにした。

 しかし、ランスロットは猛スピードで再びワシに迫って来た。

 まるで、鎧など装備していないかのような、非常に俊敏な動きであった。

 そして、ワシに対して激しい剣戟を浴びせる。

 ワシはランスロットに対して防戦一方になっていた。

 ワシとて六大帝将の一人。生半可な訓練はして来なかったつもりだ。

 何とか隙を見て反撃に出ようと、剣を振るった。


「ぐおおおおおっ!?」


 ところが、ワシはランスロットに右腕を斬られてしまった。

 そして、ランスロットはワシにとどめを刺そうと右腕を上げた。


「覚悟」


 その直後、誰かが馬でランスロットに突撃した。


「うおおおおおおっ!!」

「ぬう!?」

「ご無事ですか、レオナルド将軍!!」

「アイザック!?」


 現れたのは、当時部下だったアイザックであった。

 アイザックは果敢にランスロットに挑んだ。

 アイザックは当時22歳。

 まだワシの部隊の副隊長に任命されたばかりであった。


「衛生兵! レオナルド将軍をお連れしろ! こいつは私が引き受ける!!」

「はっ、副隊長殿!」

「よせ、アイザック!! お前ではヤツに到底敵わん!!」

「大丈夫です、レオナルド将軍! 時間くらいは稼いで見せます!!」


 ワシは衛生兵たちに連れていかれた。

 その直後、ランスロットに挑んだアイザックは、馬ごと無残に切り刻まれた。

 アイザックは呆気なく戦死してしまった。


「アイザーーック!!」


 その後、アイザックや衛生兵に助けられたワシは一命を取り留めた。

 しかし、ワシは今でも後悔している。

 右腕を失ったからではない。

 多くの部下たちの命を失ったからだ。

 ランスロットの提案通り、軍を撤退させれば多くの部下を死なせずに済んだのではないかと、今でも後悔している。

 この出来事がきっかけで、ワシは戦争の愚かしさを改めて学んだ。


■■■■■


 レオナルド将軍の話は終わった。

 ルナとセレーネは終始真剣に話を聞いていた。

 しかし、ヒューイは居眠りをしていた。


「ヒューイ……!」

「ん……」


 僕はヒューイを叩き起こした。

 人が真剣な話をしているというのに、よく眠れるな。


「ホッホッホッ、若者には些かつまらぬ話であったかな?」


 そんなヒューイを、レオナルド将軍は怒りもせずに笑った。

 その直後、レオナルド将軍は少し険しい表情に戻った。


「戦争というのは、実に愚かしい行為だ。あの時の悲劇を繰り返さない為にも、一刻も早く終わらせねばならん」

「そうですね」

「ところでワシは、明日からまた皇女殿下の行方を捜索しようと思う」

「僕たちに何かお手伝いできることはありますか?」

「ありがとう。だが、お主らのその気持ちだけで十分じゃよ」

「そうですか。宛てはあるのですか?」

「軍には多くの親皇女派の者がいる。大丈夫、必ず見つかるよ」


 レオナルド将軍は明日、再び皇女の捜索を再開するという。


「ところで、お主らは今後どうするのだ?」

「帝都へ行き、皇帝の野望を打ち砕こうと思います」

「そうか。今の皇帝陛下は世界を支配しようとしている。お主らならあるいは……。帝国の民も心から平和を願っている。ワシからも頼む。どうか皇帝陛下の野望を止めてくれ」


 レオナルド将軍は頭を下げた。


「顔を上げてください、レオナルド将軍。僕たちは明日にでも出発し、帝都を目指そうと思います」

「ああ。だが、今夜はワシの家に泊まっていくが良い」

「ありがとうございます」


 夜も更けて来た。

 レオナルド将軍は、今夜は僕たちを泊めてくれるという。

 そのため、僕たちはレオナルド将軍のご厚意に甘え、屋敷で休ませてもらうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ