第110話 帝国の老将軍
帝国の将軍【炎のヴォルト】に再び会ったが、ヒューイが再戦を挑み、これを倒した。
ヴォルトは戦死した。
これで、敵の戦力は減少するであろう。
それと同時に、光のレオナルドを助けることに成功した。
「お主らは?」
「はじめまして、レオナルド将軍。僕はファイン・セヴェンス。星の英雄たちのリーダーです」
「そうか、お主らが噂の……。しかし、お主らにとって敵であるはずのワシをなぜ助けた?」
「目の前の人を見殺しにすることはできなかった。ただそれだけです」
「そうか。だが、助けてくれたことを感謝する。軍の追っ手がまた来るやもしれん。それに、もうじき日も暮れる。この近くにワシの領地がある。ワシはそこに帰ろうとしていたところだったのだ。お主らさえ良ければ、付いて来るがよい」
僕たちは、レオナルド将軍の領地に招かれることになった。
その道中、レオナルド将軍は僕たちに質問してきた。
「お主らは何故この地を旅している?」
「皇帝を倒し、王国の平和を取り戻すために旅をしています。帝国軍人のあなたに言うのも変な話ですが。その道中、ヴォルトに襲撃されようとしていたあなたに出会ったという訳です」
「なるほど。ところで、どうやって帝国に侵入してきた? 国境は警備が厳重で突破は困難なハズだが?」
「それは言えません」
「そうか。あくまでも敵であるワシには言えぬか」
レオナルド将軍は深く質問しようとはしなかった。
「ところで、将軍はなぜ国家反逆罪で命を狙われたのですか?」
「実は詳しいことはワシにも分からんのだよ。ワシが皇帝陛下に、戦争に対する異を唱えたことが理由かと思ったが、そうではないようだ」
「どういうことですか?」
「……実は先日、皇女殿下が行方不明になったのだ」
そういえば、先程のヴォルトとの会話でもそんな話が出てきたな。
「だが、ワシは皇女殿下が何者かによって攫われたのだと思う。恐らく、親皇帝派の者の手引きであろう。それはヴォルトか、もしくは別の者の仕業か」
「なぜ皇女を攫うなどと……」
「わからん。だが、皇女殿下も兄である皇帝陛下に戦争に対する異を唱えた。それを口実に、ワシに無実の罪を着せようとしたようだ。ワシは行方不明になった皇女殿下を探していた。その帰路、ヴォルトに命を狙われたという訳だ」
「なるほど、つまり皇帝は自身にとっての邪魔者を始末しようという魂胆ですか」
「真相は定かではないが、その可能性は高いだろう」
そして、馬で移動すること2時間が経った。
すでに日は暮れていた。
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「着いたぞ、ここがワシの領地だ」
僕たちはレオナルド将軍の領地だという、小さな街に到着した。
ちなみに、僕たちはフード付きコートを着用している。
ここは敵地だ。帝国軍から民にも僕たちのことが知らされている可能性が高い。
街に入ると、一人の男性がレオナルド将軍を出迎えた。
「おかえりなさいませ、ガイウス伯爵!」
「うむ」
「そちらの方々は?」
「先程知り合ったのだ。何でも世界を旅する旅人だと言う。ワシが賊どもに襲われているところを、偶然助けてもらったのだ。そこで恩返しとして、今夜はワシの屋敷に泊めようと思っているのだ」
賊どもねぇ……。
レオナルド将軍は上手く誤魔化した。
そして、将軍の屋敷に案内された。
将軍の家は、領主の屋敷なだけあって、なかなかの大きさだ。
「大したもてなしはできないが、寛いでくれ」
「ありがとうございます」
レオナルド将軍は着ていた鎧を脱いだ。
しかし、右腕の防具だけはなぜか外さなかった。
「その腕……」
「これか。これは帝国の優秀な【魔導具】でな、自分の思う通りに動く物だよ」
「なるほど、義手ですか」
「ああ、第一次王帝戦争で失った右腕だ。確か、名をランスロットと言ったか、ローランドで凄腕の剣士と戦った。だが、ワシはその男に全く歯が立たずに敗北し、右腕を失った。ワシは九死に一生を得ることが出来た。だが、代わりに当時の部下がワシを庇い戦死してしまったのだ。結果、老いぼれであるワシが生き延びてしまったという訳だ」
レオナルド将軍は、ランスロットの名を出した。
S級冒険者である剣士ランスロットと戦ったこともあるらしい。
そして話を伺うに、ランスロットはやはり相当な強さを誇っていたようだ。
「そうだったんですか。ところで、ご家族の方は? 見たところ、将軍一人のようですが」
「妻がいた。しかし、昨年の暮れに亡くなった。末期の癌だったそうだ」
「そうですか。それは残念でしたね」
「ああ、穏やかな性格の女性だった。後は成人した息子と娘が一人ずついる。二人とも他国へと行ってしまったが、立派にやっていると聞く」
レオナルド将軍はそのように話す。
「丁度良い機会だ。お主らに18年前の王帝戦争でのワシの話をしてやろう。つまらん話になると思うが、お主らにとっても無関係な話でもあるまい。構わんかね?」
「はい。お願いします」
レオナルド将軍こと、光のレオナルドは王帝戦争の話を始めた。




