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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
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第108話 勇敢なる侵入者たち

 闇のクロノス率いる暗黒騎士団(シュヴァルツリッター)を退けた後、僕たちは再び山道を進む。

 それから、険しい山道をさらに登った。

 先程の戦闘も相まって、相当な疲労がたまっている。

 そして、ついに山頂に辿り着いた。


「見て! いい景色ね!」

「そうですね」

「おお、スゲー!」


 目の前には、絶景が広がっていた。

 山頂の天気は晴れだが、下の方は雲海に覆われており、地上は見えない。

 既に国境を越え、帝国側に入ったようだ。

 しかし、ゆっくり絶景を楽しんでいる暇はない。

 一刻も早く下山し、帝国を目指さなければいけない。


 下山を開始してから数時間が経った。

 帝国側の中腹まで着いた頃には、日も暮れていた。

 そのため、今夜はここで夜営することにした。


 翌朝、帝国に向けて下山を再開する。

 今度は下り坂なので、山道を登るよりは楽である。

 やがて、坂はゆるやかになり、平地へと降りたようだ。

 登山を始めてから、ここまで辿り着くのに約5日かかった。


 ここから先は帝国の領土……即ち、敵地である。

 そのため、油断することはできない。

 とは言え、周囲は木々に覆われた森林で、人の気配もない。

 当分は人に見つからずに済みそうだ。

 やはり、この険しい山道を通って王国に侵攻するのも、闇のクロノスなど限られた猛者だけなのだろう。


 登山前に王都エストに返却した馬を、再度転移門(ゲート)で呼び寄せる。

 帝国の国土は非常に広いため、馬で移動した方が早い。


 帝国に入ってから数時間が経過した。

 日が傾いてきて、もうじき夕方になる。

 それに、お腹が空いてきたので、何か食料を調達したいところだ。


 前方からワイルドボアが2体走ってきた。

 丁度いい。

 アイツらを狩って今日の食料にするか。

 すると、ルナが剣を抜いて先行し始めた。

 そして、すれ違いざまにワイルドボア達の首を切断した。


「これを今夜の食料にしましょう」


 ルナも僕と同じ考えを持っていたようだ。

 そして、日が暮れて夜を迎えた。

 火を焚き、ワイルドボアの肉を焼きながら、僕は今後についての話を始めた。


「それで、これからの予定だが、とりあえずこのまま帝都を目指して北に進もうと思う」

「うん」

「しかし、帝都には大勢の帝国軍が待ち構えているはずだ。この人数で帝都を攻略するのは無理だろう。そこで、セラフィー公爵率いる王国軍本隊の帝都侵攻に合わせて内部にこっそり侵入し、皇帝に奇襲を仕掛けようと思う。本隊もそろそろ帝国に侵攻する頃だろう」

「わかったわ」

「奇襲か。オレの性に合わねぇが、この人数じゃあしゃーねぇな。だが、今回ばかりはお前の意見に賛成するぜ、ファイン」


 あの好戦的なヒューイも、帝都へ奇襲を仕掛けることに了承した。

 それから、十数分経過してワイルドボアの肉が焼けたので、肉を食べることにした。

 相変わらず、あまり美味しくはない肉だ。

 仲間たちの了承を得ることができたので、翌朝に旅を再開した。


■■■■■


 そして翌朝、再び森林地帯を進んでいると、森の中に突如建物が現れた。


「『闇の神殿、闇の精霊シェイドが祀られている』……そうだ、丁度いい。ここで闇の精霊と契約しよう」

「急ぐのなら、ここで道草食っている場合じゃないんじゃ?」

「大丈夫。精霊と契約するだけだから、すぐに終わるよ」

「そう。ならいいけど」


 僕たちは闇の精霊シェイドと契約するために、闇の神殿に入ることにした。

 通路は壁に青い篝が灯されているが、窓がないため薄暗い。

 長い通路を進むと、見慣れたいつもの神殿に到着した。


『何者だ?』


 神殿に入ると低い男の声が聞こえた。

 現れたのは、闇の精霊シェイドである。

 シェイドは黒い長髪に、全身は黒みがかかったグレーである。

 また、仮面を着けており、顔は見えない。

 そして、全身から黒いオーラを発しており、他の精霊と比べても禍々しい雰囲気に覆われている。


 太古の時代、シェイドと契約した魔術師がいたそうだ。

 その魔術師はシェイドの力を奮い、世を混沌へと陥れたこともあったらしい。

 それ以来、シェイドは神によって力を制限されているのだとか。

 ちなみに、暴虐の限りを尽くした魔術師は、後年に闇魔法の呪いか何かで命を落としたという。


「闇の精霊シェイド……あなたの力を借りたい」

「我が力を求むるか、人の子らよ。だが、無条件で力を貸すことは出来ぬ。我は闇の精霊なり。我が力を欲するならば、汝が力を示せ」


 シェイドはそう言うと、何かを召喚した。

 現れたのは3体の騎士だった。


「我が召喚した3体の【シャドウナイト】を倒せ。さすれば、我と契約させてやろう。だが、こやつらは強力だ。そう簡単には倒せんぞ」

「なるほど、そう簡単に力を貸してはくれないみたいね」

「ヘッ、面白れぇ! そう来なくっちゃあな!」


 シェイドは、3体のシャドウナイトを倒すことを条件として、僕たちに力を貸すという。

 闇の精霊なだけあって、そう簡単に契約はさせてくれないようだ。

 一方、ヒューイは相変わらず好戦的で、戦うことにはかなり乗り気である。

 しかし、今は時間が惜しい。

 少しでも早く帝都に向かい、皇帝を倒さなければいけない。


「いや、真っ向から戦う必要はない」

「はあ?」

「あくまでも力を見せればいいのだろう。それに、今は少しでも急ぎたい。あと数日のうちに本隊が帝都に到着するはずだ。だから、すぐに終わらせて合流に向かう」

「ちぇっ! オレ様の出番かと思ったのに、つまんねぇの」


 ヒューイはそう言うが、渋々僕の考えに了承する。

 僕は、生命創成ライフクリエイトでシャドウナイトたちの動きを封じた。

 蔦に絡まれたシャドウナイトたちは、抜け出そうともがき出す。

 動きを止められるのは、せいぜい数秒程度だろう。

 しかし、それでいい。

 僕は手を上にかざし、稲妻斬撃サンダースラッシュを発動する準備を始めた。

 神殿の天井付近に、黒い雷雲が発生した。

 そして、シャドウナイトたちも蔦から抜け出した。

 しかし、時すでに遅し。


稲妻斬撃サンダースラッシュ!」


 雲からシャドウナイトたちに向けて、凄まじい稲妻が何度も襲った。

 シャドウナイトたちはバラバラになり、鎧の残骸だけが残った。


「ほう。まさか、我がシャドウナイトたちをたった一撃で簡単に倒すとはな。恐れ入ったぞ。それに汝、かの古の魔法【稲妻斬撃サンダースラッシュ】が使えるのか。それもこのような屋内で。汝、相当強力な魔力を持っているようだな。それに、他の者たちからも強い魔力を感じる。気に入った。汝らならば、我が力を最大限に発揮できよう。汝の名は?」

「ファイン・セヴェンス」

「よかろう、ファイン・セヴェンス。汝らに我が力を授けよう……」


 僕たちは【闇の精霊シェイド】と契約することに成功した。

 シェイドと契約したことで、僕たちは六大精霊全ての力を手に入れることが出来た。

 これは、今後の旅において非常に頼りになるはずだ。

 その後、すぐに闇の神殿を出て、馬で帝都を目指すことにした。

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