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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
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第105話 険しい山道

 僕たちは、【ヴァルティス山脈】という王国と帝国の国境付近に近づいていた。

 王都エストを出発してから、既に約1週間が経過していた。

 帝国軍や魔物たちの襲撃もあり、予定よりも時間がかかってしまった。

 しかし、グロリア率いる竜騎士部隊との戦闘を境に、敵の襲撃はなぜか止んだ。

 そのお陰で、それ以降は順調に旅路を進められた。


 これから、この山脈地帯にある険しい山道を通り、国境を越えて帝国へと足を踏み入れる。

 目の前に高い山が立っており、見ただけでも険しいというのがわかる。

 しかし、頂上は標高4,000メートルを超えるという。

 加えて、強力な魔物の棲息地でもあるとされる。

 今まで、誰もこの山道を通って越境しなかったことも頷ける。

 今一度、気を引き締めて行かなければならない。


 ここから先は馬が使えなくなるため、転移門ゲートで王都エストに馬を送り返す。


「みんな、ここからがある意味で今まで以上の困難が待ち受けているが、心の準備はいいか?」

「臨むところだぜ!」

「いつでもいいわよ!」

「覚悟はできています」

「では行くぞ。ヒューイは最後尾を頼む」

「おう!」


 僕たちは、山道に足を踏み入れることにした。

 ちなみに、ヒューイを最後尾にした理由は、後衛のセレーネが敵に襲われにくくするためである。


 この山道は、昔の人が切り開いた山道のようで、比較的歩きやすい。

 とは言え、それは山麓付近での話だ。

 これから先、道はどんどん険しくなるであろう。


 しばらく進むと、前方から何かがやってきた。

 3体のウェアウルフだ。

 ウェアウルフは二足歩行の狼型モンスターで、主に格闘戦を得意とする。

 ウェアウルフたちは突然僕たちに襲いかかってきた。

 しかし、ルナが鮮やかな動きで、ウェアウルフたちの首をはねた。


「やるな、ルナ」

「ま、こんなもんよ」


 その後も山道を先へ進んで行く。

 山道は急斜面を避けるために、ジグザグに作られていることが多い。

 それは、この国境付近の山道も例外ではない。

 その代わり、登山するのに時間がかかる。

 そして、周囲は木々が生い茂っており、視界が悪い。

 山道自体はそこまで急ではないが、山の斜面そのものは急だ。

 そのため、道を外れて転落しないように気を付けなければいけない。

 ルナとヒューイは体力が多いからいいが、セレーネは体力的に不安が残る。

 仲間がちゃんとついて来られているか確かめようと、後ろを振り替えった。

 みんな今のところ問題なく付いてきている。

 すると、前方からなにか接近してきた。

 3体のワイルドボアが猛スピードで走ってきた。


「ここはオレに任せな!」


 ヒューイが前に出てきた。

 ヒューイは走って来るワイルドボア1体に対し、斧を投げた。

 斧は頭部に刺さった。

 次に、先頭を走ってきたワイルドボアを受け止めた。


「おらああああッ!!」


 そのままワイルドボアを斜面の下に放り投げた。

 さすがは獣人の血を引いているだけはあって、凄まじいパワーだ。

 手数こそ少ないが、腕力ならパーティー1番だ。

 ……と、感心している場合ではないな。

 残りの1体がヒューイに接近していたので、僕が氷の槍(アイス・ジャベリン)で眉間を貫いた。


「敵は一体だけじゃないんだぞ」

「おう、サンキュー、ファイン」

「倒したワイルドボアは魔法鞄(マジックバッグ)に収納しよう。後で食料にする」


 ワイルドボアは魔法鞄(マジックバッグ)に吸い込まれた。

 その後、山道をさらに先へ進む。

 しばらく進んでいると、山の斜面からワイルドエイプという大型の猿が3体現れた。

 ワイルドエイプは岩石を投げて攻撃してきた。

 しかし、セレーネが結界を張っていたので、岩石を喰らわずに済んだ。


「なかなか強そうなモンスターが現れたな! かかって来い!」


 ヒューイが挑発すると、ワイルドエイプたちは近づいてきた。

 こいつらは他のモンスターと比べると、知能が高い。

 そのため、挑発すると接近戦を仕掛けてくるのだ。

 ワイルドエイプの一体に対し、ヒューイは接近戦を挑んだ。

 ヒューイはワイルドエイプの攻撃を正面から受け止めた。


「ハッ! なかなかやるじゃねぇか! だがッ!」


 そして、ヒューイは反撃でワイルドエイプを倒した。

 ヒューイの圧倒的パワーにワイルドエイプは敵わなかった。


氷結剣アイスブランド!」


 ルナがそう言って剣を振り下ろすと、2体目のワイルドエイプもあっさり倒れた。

 そして、僕が最後のワイルドエイプの首をすれ違いざまに切断して、この戦闘は終了した。

 まあ、戦闘と言うよりは、ほとんど一方的に攻撃しただけだが。


 登山を開始してから、かなりの時間が経った。

 恐らく、3時間位は経過している。

 山道の斜面が先程よりも急になった。

 体力に自信のある僕でも、さすがに少しきついと思った。

 時間は既に夕方だ。

 そろそろ夜営する場所を決めなくてはいけない。


 仲間たちが付いてきているかどうか、後ろを振り替えって見る。

 ルナは僕のすぐ後ろを付いて来ているが、セレーネとヒューイのペースが明らかに遅れている。


「大丈夫か? セレーネ」

「はい。私に構わず進んでください」

「もうすぐ湖があるはずだから、そこで休憩しよう」


 しばらく進んでいると、木の陰から目的の湖が見えて来た。

 これはカルデラ湖と言って、火山の火口にできた湖である。

 到着と同時に日没を迎えた。


「よし、今夜はここで夜営しよう」


 僕たちは、カルデラ湖の畔で一晩過ごすことにした。

 先程捕まえた、ワイルドボアを焼いて食べることにする。

 本当は血抜きをしなければいけないのだが、時間がないので省略する。

 ワイルドボアの肉をナイフで解体し、木の棒に刺す。

 薪代わりの木を集め、火球(ファイアボール)で火を起こすことにする。

 そして、ワイルドボアの肉を焼く。

 約10分後、肉が焼けたので食べることにする。

 あまり美味しくはない。

 ソースや塩といった調味料の有り難みがよくわかる。

 ちなみに、モンスターの肉は旅で何度も食べたので、この味にはもう慣れた。

 その夜、湖畔にテントを張って、一晩過ごした。


■■■■■


 翌日。

 道はどんどん険しくなる。

 斜面は先程よりも急になり、体力消耗もより大きくなる。

 向こうからモンスターが近づいてきた。

 やってきた魔物はミノタウロスであった。

 大型の牛型モンスターで、全身を筋肉で覆われている。

 そして、手にはヒューイと同様に斧を持っている。


 ヒューイが前に出た。

 そして、ミノタウロスの斧とぶつかり合う。

 ヒューイはミノタウロスのバランスを崩し、その隙にミノタウロスを切り刻んだ。


 岩肌が剥き出しの崖に突き当たった。

 崖にはロープ製の梯子がかけられていた。


「ここを登るのですか?」

「そうだ。ここを越えれば、もうすぐ国境だ」

「私、ミニスカートだから、先に行って」

「わかった」


 ルナを最後尾に崖を登ることにした。

 しばらく登ってから下を見ると、地上まで相当な高さがあった。


「きゃっ!」


 ルナが滑って足を踏み外した。

 しかし、何とか踏ん張って落ちずに済んだ。

 今のはさすがにヒヤッとした。

 そして、何とか崖を登りきった。


 もうすぐ越境だ。

 これから先は、いよいよグランヴァル帝国に入る。

 より一層気を引き締めなくてはいけない。

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