第101話 男たちの戦い
オレは何とか立ち上がった。
致命傷でないのが、不幸中の幸いだ。
痛みはあるが、まだどうにか戦えそうだ。
目の前には、オレをも超える強敵が立ちはだかっている。
しかし、だからこそ戦いは燃えるってもんよッ!
オレは立ち上がると、斧を構え直した。
「ほう、立ち上がるか。いいぞ、それでこそ男! それでこそ俺と戦うに値する存在だ!!」
ヴォルトは何やら感激していた。
だが、一方でオレのほうも感激している。
「オレも負けてはいられねえからな。何せ、目の前にこんなに強えヤツがいるんだ! アンタこそがオレの求めていた強者だ!! 行くぜ! おりゃああああッ!!!」
オレはそう言って、再びヴォルトに立ち向かった。
オレは斧でヴォルトを攻撃する。
ヴォルトは大剣でオレの攻撃を受け止める。
互いににらみ合う二人。
そして、また距離を取る。
「ぬうう、我が軍の兵士たちが……!?」
オレたちがタイマンしているのと同じ頃、ファイン達が帝国兵たちを壊滅状態にしていた。
ヴォルトはそのことに気を取られていた。
「よそ見は禁物だぜ!!」
オレはここぞとばかりにヴォルトに突撃した。
しかし、オレの一撃はヴォルトに防がれてしまった。
「なにッ!?」
「甘いな!」
ヴォルトは隙をついて反撃してきた。
しかし、オレは間一髪で避けた。
「やはりアンタは一筋縄では行かないようだな。こうなったら、これを使わせてもらうぜ。身体強化!」
オレは身体強化してヴォルトに対抗することにした。
そして、そのままオレは突撃し、斧を振り下ろした。
ヴォルトは大剣で防御するが、ここでオレは初めてヴォルトを押した。
行ける、この調子なら!
「ぬうう、身体強化まで使えたとはな。だが!」
オレは突然、ヴォルトに弾きとばされた。
一瞬、何が起こったのかと思った。
「実は俺も身体強化が使えるのだよ」
「マジかよ、初耳だぜ! だが、そのほうが勝負は燃えるぜ!!」
「さあ、お互い全力でぶつかり合おう!」
そう言うと、ヴォルトは突撃してきた。
オレもヴォルトに向かってダッシュした。
お互いの武器が戦場でぶつかり合う。
パワーは完全に互角だ。一進一退の攻防が続く。
そう思っていた。
ところが、次第にオレは押されはじめる。
パワーこそ互角ではあったが、それ以外の戦闘技術を含めた総合力ではヴォルトのほうが上だった。
一瞬の隙を突かれ、オレは腹に蹴りを入れられ、吹き飛ばされた。
「貴様との戦いは楽しませてもらったぞ。しかし、悪いがトドメを刺させてもらうぞ」
そう言うと、ヴォルトは再び大剣に炎を纏わせた。
「灼熱爆炎斬!!」
ヴォルトが大剣を振り下ろすと、凄まじい爆炎がオレに向かってきた。
これはかわせない。
やっぱり炎のヴォルトはすげえや。到底敵いそうもない。
悔しいが、この戦いはオレの負けだ。
あばよ、ファイン、ルナ、そしてセレーネ。
これからの旅の健闘を祈るぜ。
しかし、次の瞬間炎はオレに届くことなく消えた。
「なにッ!?」
一瞬、何が起きたのかとオレは思った。
しかし、オレはすぐに理解した。
「大丈夫か? ヒューイ」
声をかけてきたのは、ファインだった。
どうやら、ファインが結界でオレを守ってくれたらしい。
「大丈夫ですか? ヒューイさん。今のうちに回復します」
「あ、ああ。助かったぜ」
セレーネが治癒をかけた。
オレの傷はたちまち回復した。
「よくも、勝負に水を差すような真似を……!! ッ!? な、なんだ……身体が痺れて動けん……!?」
「お前の足元に麻痺罠を仕掛けておいた。お前が攻撃の時に一歩足を前に出すだろうと予測してな」
ファインがいつの間にかトラップを仕掛けておいたという。
一瞬の隙を突くとか、本当に抜け目のないヤツだな。
「貴様ら! 卑怯だぞ!!」
「卑怯? これは戦争なんだ。卑怯も何もないだろう?」
「おいおい、ファイン、邪魔するなよ! これはオレたちのタイマンなんだぜ!?」
「そんなこと言っている場合か? これは戦争なんだぞ! 重要なのはチームワークだ! それに僕だけじゃないぞ。戦闘開始前に、セレーネがこっそり防御力アップのバフをかけていたんだ」
「セレーネが?」
マジかよ、全然気づかなかったぜ。
「そのおかげで君の被ダメージは軽減されていた。でなきゃ、君はとっくに炎のヴォルトにやられていた」
悔しいが、確かにファインの言う通りだ。
オレ一人ではヴォルトに勝てそうにない。
オレはファインに同意することにした。
「やれやれ、しゃーないな。そういうワケだからよぉ、悪いがトドメを刺させてもらうぜ。ヴォルトさんよぉ!!」
オレは動けなくなったヴォルトに、思いっきり斧を振り下ろした。
「破断岩斧!!」
よし、手応えはバッチリだ。
あまりの威力に、周囲には土煙があがっていた。
そして、土煙が晴れた。
そこには、全身血だらけになりがらも、ヴォルトは生きていた。
「おいおい、マジかよ。これだけの攻撃を喰らってまだ生きてられるのかよ!?」
「防御鎧を使ったのだ。念のために覚えておいて正解だったよ」
ヴォルトはオレの攻撃を受ける前に、防御鎧を使ってダメージを軽減していたらしい。
「とは言え、今のお前の最後の一撃……さすがに堪えたぞ。そして何より、これ以上の戦闘は不可能なようだ」
ヴォルトはそう言うと、ポケットから石のような物を取り出した。
「今回の戦いは、お前たちの勝ちだ。さらばだ、また会おう、星の英雄たちよ!」
ヴォルトはそう言い残して消え去った。
何とか炎のヴォルト率いる帝国軍の精鋭部隊を退けたオレたち。
その後、すぐに帝国に向けて旅を再開するのであった。